第9話 ハマチのヅケ 4/7
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「あれから山本課長と、あんまり進展ないんですか?」
昼休み、お弁当を食べながらここみちゃんが言う。
最近は寒いのでお弁当を会社の外の公園やベンチで食べることはなくなった。
休憩スペースとして使える会議室では、女性社員が2、3人でいくつかのグループを作って昼食をとっている。
「あれからって?」
「いや、映画、観に行ったんですよね? 結構前だけど」
「あれは……たまたま休みで一緒になっただけで……それに、実際に一緒に映画見たのは、勝村課長だから」
「あ、そっか」
映画か……
映画デートもいいな。
「でも、さっきの感じなら、一緒に飲みにいけそうじゃないですか」
「ま、待って、なんか、山本課長のこと……」
「強く推してます!」
「なんでよ!」
「え、だって、いい感じなので。須藤さん、彼氏いましたっけ?」
「いや、いないけど」
「どうですか? 山本課長」
「いや、どうって……」
「……いいと思うんだけどなー」
『いいぞーもっとやれ』
なぜか2対1になっている。
「いや、そりゃ、悪いとは言わないけど……」
「須藤さん……あの新しい主任に取られてもいいんですか?」
『ほら! そうでしょ?! そうなのよ!』
「取られるって……」
「須藤さんが悪くないって思うなら、ほかの人から見ても悪くないんですよ?」
『ほらね! だから言ったでしょうが!』
「……まぁ、そうなのかな」
「そうですよー! こうなったら今度の歓迎会で急接近するしかないですね!」
「こうなったらって……どうなったのよ」
「けっこう人気なんですよー? 山本課長」
そういえばこないだ、やたらベタベタ絡んでた女性社員もいたな。
ボタン取れただの付けるだの。
「そういう情報はあるのね」
「まぁ、なんとなく耳に入ったり、雰囲気で」
そういうのに敏感じゃないから私は男逃してるのよね、きっと。
ここみちゃんにいろいろ教えてもらおうかな。
いやダメだ。ここにそういう話題というか、関係を持ち込んだら、楽しくできない気がする。上下関係ができちゃう! 経験者と未経験者の。
「でも、絶対今度の歓迎会がチャンスになりますよ!」
お弁当箱に視線を落として黙っている私を励まそうとするような元気な声だった。
「決戦は金曜日ですよ!」
「そ、そうねぇ」
今一つ現実味のない想定に、味付け煮卵を口に運びながら、うわの空で応えてしまった。
チハルさんが口を挟んだ。
『悠長に構えてんじゃないわよ。いざチャンスが来たときに「下着可愛いの着けてたかな?」とか不安になってチャンスを棒に振ることになったらどうすんのよ!』
……!?
「ど、どうしたんですか?」
ここみちゃんが私を心配そうに見て言う。
チハルさんの言葉に、私が卵焼きを口に迎える動きを止めてしまったからだ。
「な、なんでもないよ。大丈夫」
『棒に振るんじゃなくて棒を振るのよ。肉棒を』
肉棒うんぬんはともかく、下着については聞き逃せない内容だった。
そうよ!
いざっていうときの備えを、今からしておかなくてどうすんのよ!
……可愛い下着か。
今日あたり、仕事終わりに買いに行くか。
『あんまり強くすると痛いらしいわよ。男でも』
いいってもう肉棒は。
ガチャ




