第6話 まぐろの山かけ 2/7
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最寄り駅ではない駅直結のショッピングモールは、施設全体だけでなく、駅にある看板からすでにクリスマスムードになっていた。
毎年この季節はなんとなく嫌な気持ちになる。
クリスマスそのものを否定したいわけではないが、そのムードに入るのが、年々早くなっている気がする。
なんで11月から始めるのよ。
ショッピングモールのエントランスには大きなツリーがあり、モール内のBGMはクリスマス色の強い曲が流れている。
白と金を基調にしたツリーは、エントランスの吹き抜けをめいっぱい使うようにそびえ立っていた。
毎年デザインが変わっているはずだが、私には同じようにしか見えない。
キラキラ輝くツリーの前で、カップルや仲良し女の子が写真を撮っている。
……まぁ、キレイであることは否定できないけどね。
歩調をできるだけ変えず、ツリーの横を通り抜けた。
『ほんと、この季節は嫌になるわね』
「そうねー」
チハルさんのこぼした言葉に、小さな声で同意した。
子どものときはもちろんこの季節が大好きだった。
クリスマスは普段食べないようなステキなご飯が食べられて、親や祖父母からプレゼントを貰える、良いことしかないイベントだった。
今は、というより、数年前からは、自分自身がクリスマスを楽しむことに没頭できないでいる。
プレゼントが貰える云々ではない。
クリスマスの本質が見えてしまったのだ。
カップルで過ごそうが、家族で過ごそうが、結局さ、性なる夜なわけよね。
一緒に過ごすのがセックスの相手か、セックスの産物かの違いよ。
『このまま映画館行くの?』
「そうねー。観るもののスタートの時間もあるから、それ確認しないとね」
『そうね』
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小さい時、父に連れて行ってもらって観たドラえもんの映画を覚えている。
小学校の高学年になったころから、父のことを徐々に避けていき、そのままスムーズに反抗期に入っていった。
高学年になってすぐに父を疎ましく思っていたわけではない。
最初は、なんとなく、本当にただなんとなく、苦手になっていった。
それが「成長する」ということなのだろうと、今ならわかる。
だから余計に、とても小さかった私を父が連れて行ってくれた映画の思い出は、とてもステキに思える。
あ、そっか。
毎年こうすればいいんだ。
クリスマスムードに耐えられなくなったら、自分の持っているステキな思い出に目を向ける。
そうすれば、クリスマスをやり過ごせる。
『映画館ってさ、なんかいいよね』
ショッピングモールの中の最上階。
唐突に薄暗くなっているエリアに、映画館があった。
そこに入ると、チハルさんは私の肩から飛んでいった。
『映画館ってさー、なんか、いいよねー』
さっきと同じこと言ってるじゃん。
私が返事をしないことを気にせず、チハルさんはご機嫌で宙を舞っている。
気持ちはわかるんだけどねー。
実際に私も、もし妖精だったらあんなふうに、文字通り舞い上がっちゃうわ。
映画館にはそんな魅力があるのよね。
映画館の売店でしか売られていない最新映画のグッズ。中でも普段遣いにはとても適さないクリアファイルは映画館ならではだ。
そしてメジャーマイナー入り乱れる映画パンフレットの置き場。
キャラメルポップコーンの甘い匂い。
「あれ? 須藤さん?」




