第6話 まぐろの山かけ 1/7
29歳OLの須藤珠美は「30歳になるまで処女のままだと妖精になる」という運命の元、妖精チハルとともに、1年間を過ごすことになった。
この1年は出会いの運が劇的に向上するとのことだが、すでに珠美はその運に振り回されている。
果たして珠美は妖精になってしまう前に処女喪失をすることができるのか。
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11月14日 土曜日
チハルさんを連れての出勤を、とりあえず金曜日まで終えることができた。
朝8時。いつもよりは当然遅く起きる。
ベッドから出て、顔を洗い、着替える。
この一連の動きをチハルさんと一緒に終えた。
着替えると言ってもチハルさんは服を着るだけだ。
100均で買った人形用のパジャマをチハルさんは「チクチクする」と言って使わず、全裸で寝ている。
チハルさんが毎日着ているミニのワンピースは、絵本で見る妖精が着ているような露出の高いものだ。
処女のまま30歳を迎えたとは思えないセクシーなスタイルをしているチハルさんにはよく似合っている。
「どうすんの? 今日は」
私はローテーブルのそばに座り、チハルさんはテーブルの上の人形用のテーブルと椅子につき、ふたりでヨーグルトをかけたフルーツグラノーラを朝食に食べている。
「んー」
今日、どうするか。
聞いてきたチハルさんを責めるわけではないが、なぜこんなことを休みのたびに考えなければいけないのか。
考えながらスプーンに多めに取り、口に運んだ。
「なにかした方がいい」
「なにかしないと無駄になる」
「なにもしなくても、『なにもしないこと』に充実感を得なければダメ」
そんなスタンスで過ごす1日を休日とは呼べないでしょうが。
生きにくい世の中だ。
考え込んでいる間、何も言わないチハルさん。
こういうのが心地良い。ありがたい。
そう言えば、最初にチハルさんと部屋で過ごしたときも、一緒にアマプラで楽しめたな。
口の中のフルグラとヨーグルトをごくんと飲み込んだ。
「映画かなー」
答えて、さらに一口食べる。
「お、そういうタイプ?」
「タイプ?」
「休みの日にひとりで映画見るのを楽しむタイプなのかな?って」
「タイプではないかな。わざわざ映画館で観るなんてこと、ほとんどないから」
「そうなんだ?」
「ま、今なら1人分の料金で、チハルさんとふたりで観れるじゃん」
「おおー! 策士!」
ブーッブブッ
チハルさんから珍しく褒められたとき、スマホが鳴った。
野沢からメッセージだった。
チハルさんに出会う前、野沢が送ってきたワインで誕生日の晩酌をしていたのを思い出した。
そうだ。誕生日が来たらお返ししないと。
もう一口食べて、メッセージを開いた。
『須藤って土日休みだっけ?』
なんだ? 急に。
「映画なに観るの?」
先に食べ終わったチハルさんが肩に乗って聞いてきた。
別に見られてもかまわないので、そのまま返信を送った。
『そうだよーどうして?』
えっと、映画の話だよね。
「んー……観るのは……行ってから決める!」
「おぉー! いいねー!」
野沢からすぐに返信があった。
『遊びに誘うときの参考に』
『おけ。いつでもどうぞ』
送信してすぐにスマホをバッグに入れた。
「じゃあ行こっか、チハルさん」
「ポップコーンは、L?」
「もちろん。しかもミックス」
朝食の最後の一口を飲み込んだ。
家からだと30分で着くショッピングモールを目指す。
まずはメイクからだ。




