第4話 長芋短冊 4/6
『うわー! またつまんないオフィスだー!』
昼休みを終えてデスクに戻るなり、チハルさんが不満を垂れ流した。
すぐさまテキストエディタを開き、打ち込むとすぐにデスクを人差し指の爪でカッカッと叩いた。
(どっか行けばよかったでしょ! お昼休みの間に!)
『だって、あんたがここみちゃんとずっと喋ってご飯食べてるんだもん』
カッカッ
(喋りながらほのめかしてたのよ! どっか行ってリフレッシュしてきてー!って)
『はぁ? そうなの? それならもうちょっとわかりやすく言ってよー』
カッカッ
(めっちゃわかりやすかったでしょ!)
『わかんないわよ、だいたいこの辺に何があるのかもわかんないし』
カッカッ
(だからそれを見てきたらいいでしょ! お散歩よ!)
「あ、あのぉ、須藤さん?」
後ろから男の声がした。
「はい」
椅子に座ったまま振り返り、平静を装って笑顔で応じたが、視線の先の男は戸惑っていた。
「い、いや、なんか、イライラしてる?」
「え、そんなことないですけど、なんでですか?」
「いや、めっちゃ指でカツカツ机叩いてたから……」
しまった。音が大きすぎた。
『何やってんのよ、ざまぁないわね』
くそ
『……ってそうじゃないわ! チャンスよ! 男来たわよ! 珠美行け!』
くっそぉ
「ご、ごめんなさい、ちょっと、思い出そうとして思い出せないことあって……」
『さわれ!』
チハルさんがけしかけるせいで、作り笑顔が余計にこわばる。
この人、苦手なのよ。
勝村課長
隣の課の課長なのだが同じフロアにいるので、顔も合わせるし、よく話もする。
ノリがいいと言えば聞こえはいいが、単純に軽薄そうに見える男だ。
ノリと同じくらい顔もよく、仕事もテキパキとこなすので、女子社員からはそれなりの人気を得ている。
「そっかぁ、まぁそれならよかった」
よくないわよ。イライラしてそうな女に声かけて「イライラしてる?」なんて聞くんじゃないわよ。
「えっと、それはすみませんでした。で、それだけでした? なにかあります?」
何か用があったであろう勝村課長にきいた。
「いや、出張のホテルの確認に来たんだ」
このフロアには営業部、広報部の2部署が入っおり、それぞれに1課、2課、企画課がある。
私とここみちゃんは営業部2課に所属しているが、事務作業は3つの課を横断して関わっている。
主な業務は、データ入力、出張の宿泊や交通手段の手配などだ。会社で関わる人の中には面倒な人もいるが、慣れてしまえば、どうということはない。
私がしていることは、この会社で行われていることのうちの、雑用なのだから。
「あぁ、そうなんですね。データ見ます? 印刷しましょうか?」
雑用だと割り切りたいのに、営業部1課の勝村課長のようなタイプは頼んでもいないのに距離を詰めてくる。
「仲良くしたい」というより、「仲良くしていることが良いこと。その取りまとめは俺ができる」と周りにアピールしている。
『あー、あんた嫌いなのね』
チハルさんが嬉しそうに口を挟んだので思わず小さくうなずいてしまった。
嫌いというほどではないけど、苦手ではある。
「勝村、これもらっといたよ。要るだろ?」
もう一人男が加わってきた。




