第4話 長芋短冊 2/6
自分のデスクについた。
デスク周りは自分の好きにしてよいことになっているし、毎日使うものは会社に置かせてもらえた。
卓上の加湿器、自前のマグカップ、おやつ。
ほかの会社はここまでゆるくないかもしれない。
『へー! 結構おっきな会社じゃん』
チハルさんは私の右肩に腰掛けたまま、オフィスを見渡して言った。
『いい感じに男もいるわね。おっさんが多いかな? 既婚者じゃなきゃいいか。あれ? 珠美は既婚者でもよかったんだっけ?』
今さらだったが、彼女に大事なことを伝えていないことを思い出した。
伝えたくて、試しに右足のつま先をつまんでみた。
『な、なに?! いきなり触らないでよ!』
あ、よかった……
周りに姿を消してても、私はチハルさんに触れるのね。
PCを立ち上げ、画面の隅にテキストエディタを開く。
(チハルさん、これ見て)
打ち込んでから、肩に乗るチハルさんをおもむろに掴み、PCの画面の前に強引に持ってきた。
『ちょっと! なにすんのよ!……って、なに?』
チハルさんは抗議もそこそこに、すぐに画面のメッセージに気づいてくれた。
そして私は、続けて打ち込む。
(職場で伝えたいことがあるときは、こうやって文字で伝えるね)
『……うん、まぁ、そうするしかないわよね』
彼女は読み終えて、つぶやいた。
(あと、人が近くにいるとこういうこともできないけど、無視してるとかじゃないから、できるだけ静かにしててね)
『……うん、わかった』
(ありがとう)
読み終えたのを見計らって、エディタを閉じた。
とりあえず、男との出会い云々は今は横に置いておきたい。
普段通りの業務ができればそれでいい。




