第3話 2種のハーブソーセージ 3/6
マンションから外に出た。
晴れていた。
外出にはちょうどいい。
『どうする? 飲み行く?』
「行かないわよ。そんなお金あったら家で飲まないし」
『それもそうね』
「とりあえず、駅行くから」
『通勤範囲で遊ぶわけね』
「うん。お散歩しながらカフェとか探そうかな」
『いいわねー。出会い探すのにもちょうどいいかも』
確かに。
「あ、そうだ」
歩きながら小さめの声で話す。
「今年1年は、男運がめっちゃ上がってるんだよね?」
『あー、確変ね』
「いやそれよくわかんないけど」
『確率変動って言ってね、通常時の当たり確率よりも大幅に確率が上がるのよ』
「……」
パチンコしてたのね、この人は。
『確率変動って言ってね! 通常時の当たり確率よりも!』
「聞こえてるわよ!」
危うく通行人に聞こえそうな声が出てしまった。
「あのね、人もいるし、声出さないこともあるから」
『やだ。ちょっとは反応して』
「……はい」
当たり確率ねぇ……
とりあえず、その確率とやらがどれくらい変わるのか、様子見ね。
**********
自宅からひと駅離れたところで電車を降りた。
駅前のチェーンカフェに入り、コーヒーを頼み席についた。
『ねぇ、私も飲める?』
「えっと、スプーンでいい?」
『うん』
コーヒーをスプーンですくい上げ、手元でじっと動かさずにいると、チハルさんが近づいて飲みに来た。
なんか、ペット飼ってるような気になるわね。
彼女がひと口目を飲み終わったので、スプーンを置いてスマホを取り出した。
「あ、ブラックでよかった?」
『うん』
スマホを取り出したついでに野沢にメッセージをおくっておいた。
『ワインありがとね 全部のんだ』
送信ボタンを押すとチハルさんが話しかけてきた。
『でもさー』
「なに?」
『そうやってスマホばっか見てたら、周りの男の人なんか見えないわよ』
なにか、核心を突かれた気がした。
そうか……確率が上がってるとは言え、それを取りに行かなきゃ意味ないわよね。
スマホを鞄に入れ、視線を上げた。
どうということはない、チェーンのカフェの店内だ。
個人経営の味がある喫茶店も好きだが、こういったチェーンの、味の無さもまた落ち着く。
『どう?』
「……なにが?」
『いつもとは違って見えない?』
「わかんないわよ、そんなの」
『そっかぁ』
確変突入って言っても、そんな急に、劇的に変わるわけじゃないわよね。
5分後、店内のすべての席が男で埋め尽くされた。




