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第2話 粗大ごみシール 8/8

 スーパーを出た。

 エコバッグの中には春菊、カブ(半額)、ジャガイモ、鶏の手羽元(2割引き)、砂肝が入っている。


『あんまり買わないのね』

「どうしても食べたいものがあるわけじゃないからね。その日安いもの買っててきとうに作るのになれちゃったし、その方がおもしろいじゃん。どうしても食べたいものがあるときは、多少高くてもちゃんと買うわよ」

『ふーん、そういうもんなのね』


 晴れた休日の昼間。風が穏やかなのが今の季節は嬉しい。もう少しすると、本格的に寒くなってしまう。

 青い空に、まばらに浮かぶ雲。

 その下で、アラサー女子とアラサー妖精が話している。


「チハルさんは料理しないの?」

『するけどねー、飲むときは外で飲むかな。一人でも全然飲みに行けるしね』

「そうなんだね。あ、ちょっと待って」


 コンビニが見えたので思い出した。


『なに? コンビニ寄るの? お酒?』

「ううん。粗大ごみシール買うの忘れてた」


 スーパーと自宅の、ちょうど中間にあるコンビニ。

 普段ここで買うものと言えば、アイスクリームくらいだ。

 レジに並び、店員に伝えた。


「粗大ごみシール、1枚ください」


 このシールは、一人暮らしを始めたときから使っていたカラーボックスに貼られる。

 ひと部屋をベッドスペースとリビングスペースに分けるための、腰の高さほどの白い、横に長い棚を買ったために、不要になったのだ。

 男の店員がレジ下の棚からシールを取り出し、バーコードを読み取った。


「300円です」

『なんでこれ、現金払いしかダメなのよ。ね?』


 まったく同感だ。

 財布から500円を取り出し、コイントレイの上に置いた。

 店員がレシートとお釣りの200円を一緒に、私が差し出した手のひらの上に置いた。

 そのとき、店員の指が手のひらに触れた。

 その瞬間、体中に桃色の電流が走った。


 **********


 コンビニを出ると、肩の上に座っていたチハルさんが、すぐに話しかけてくる。


『あんた今、ドキッとしたでしょ?』

「え!? なにが?」

『もう少しうまくごまかしなさい』

「ま、待って! え! なんか出てました? そんな雰囲気」

『うん。なんか、急に体こわばったし、店出た瞬間、「ふぅ」って、息止めてたみたいだったよ』


 そっか、自然と、体に力入ってたのかな……


「いや、ドキッとしたっていうかさ」

『ムラッとしたわけね』

「……あんまり言わないで」

『いやいや、私も気持ちはわかるわよ。一緒に帰るのやめといてあげようか? しばらく外で時間つぶしといてもいいわよ』

「え? ほんと?」

『うん。15分くらいでいい?』

「えーっと、うん。それくらいでお願いします」

『……私から言っといてなんだけど、終わるの早くない?』

「い、いいでしょ別に! じゃあ、終わって部屋に入ってもよくなったら、窓開けたらいい?」

『うん、そうね。そうして。とりあえず15分くらいはてきとうに遊んどくから』

「ありがとう。あ、そこのちっちゃい公園に、時計あるよ」

『サンキュー』


 言って妖精は肩の上から飛んだ。

 

 うーん、あのレジのお兄さんに声かけといたらよかったのかな……

 いや無理だ。そんな勇気ないわ。


 公園めがけて飛んでいく妖精の後姿を、ほんの少しの間だけ見送り、足早に自宅へ向かった。



 第2話 おわり

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