第2話 粗大ごみシール 7/8
動画の再生が終わった。
「……うん。確かに、大丈夫っぽい」
私の語尾にチハルさんが声を重ねる。
『納得できたみたいね』
言いながらエコバッグから飛んで出てきた。
「いや、納得はできるんだけどさ。わかりやすく目印とかないの?」
『目印って?』
チハルさんが聞き返しながら再び肩に腰かけてきたので、私も元のルート、スーパーまでの道のりに戻った。
「いや、ステルスモードのオンオフがわかるようなエフェクトというか、姿消してる間はちょっと肌の色変わるとか」
『神経質ねー、私が信用できないの?』
できない。
「信用とかじゃなくてさ……」
言いたいことの途中だが、言葉を切った。
私の声はチハルさんの声と違い、誰にでも聞こえるのだから、人が近くを歩いているときだけは、声を抑える必要がある。
「わかんないと不安なのよ」
『ま、気持ちはわかるけど、無理よ。多分。諦めて』
ひとごとだと思って気楽に言うわね……
『あ、きたきた、ライフ。懐かしいわねー』
「ほんの5か月でしょ? あの世にいたの」
『死んでないわよ、失礼ね』
「あ、そうね。神様がいたってだけよね」
言いながら入口のカートとカゴを取る。
……そういえば、誰かとスーパー来るのなんて、何年ぶりだろう……
店内は土曜日の昼前の賑わいを見せていた。
……こんな混んでる店で、ひとりで話してたら目立つかな……いや、大丈夫か、ワイヤレスイヤフォンとかで話してる人いるし。
あ、そうだよ、ワイヤレスイヤフォンつけとけばいいじゃん。これからはいつも持ち歩くようにしよう。それならチハルさんと話してても違和感ないわ。
『いやー、休みの昼前はやっぱいいわねー。良い感じに活気があって、昼から飲むお酒なんか最高よねー』
「え、チハルさん、飲むの?」
『年確?』
「違うわよ!」
声量が大きくなったので、慌てて周りを見渡してしまう。
少しだけ声をひそめる。
「その、妖精になっても、飲むの? ってこと」
『え、飲まないの? わかんない。でも飲みたい』
なんて自分に正直な人なんだ……
思っていることをそのまま答えてくれる彼女を、このとき少し愛くるしく感じた。
「……じゃあさ、一緒に飲まない?」
『いいねー!』
元気に応えてくれたチハルさんに声をひそめて言う。
「あんまり大きな声出せないから、適当に買うからね。どうしてもほしいのあったら言って」
『オッケー。あ、タコ買って。タコのアヒージョ作ってよ』
「めんどいけどいいね。私も食べたいんだけどほぼ無理じゃない? この時間は値引きないから」
『あー、それは大事ね。りょーかい』
自分がお金を出すわけではないからか、あっさりと引き下がった。
それに、鮮魚コーナーに行く前に野菜コーナーがあるのだから、まずはここからだ。
……さて、なにがあるかなー。
野菜売り場にも値引き品はあるんだけどねー、そればっかり気にしていると、「生産者さんの名前がついている」系の良コスパ品を見逃すことになるのよね……
春菊、かぶ(半額)、じゃがいもを順に買い物カゴに入れた。
……こんなもんかな。一人用の冷蔵庫じゃ入る量も知れてるし。
『よーし、そんじゃ次はお魚コーナー行こう! タコ半額だったら買ってね』
「3割引でも買うわ」
『ありがとー!』
返事をして10秒後についた鮮魚コーナーを見回ること3分。目ぼしいものを見つけられなかった。
『ま、こんなもんよね。土曜の昼間なんて。刺身を定価で買うなんて真似できないしね』
まったくの同感だった。とは言え私もチハルさんも、決して落ち込んではいない。
『まあいいじゃん。やっぱり休日の昼飲みは肉よ! 肉!』
「そうね。晴れてると特に」




