第82話 行商と冒険者の街、エンドラ
長すぎたため、読者の方々が読みやすいように2話、3話の「二度死んだら三度ある?」と「辺境の村マカロ」をpart1、part2のように分割しました。
今見ると拙い文章だったので(今も…?)1章前半のお話は加筆、修正する予定です。
――――ティーレを出発して七日目の昼過ぎ、俺たちはエンドラへと辿り着いた。
エブンズダールに比べれば中規模といった街だが、外壁などはなく、建物が建ち並んでいる街の外には農地が広がり家屋が点在している。
俺たちから見て右手の方角、地図上では南側の数キロ先には広大な森が広がっており、その奥には山々が連なっている。
ザミルバルタへ行くならあの森と山を越える必要がありそうだ。休憩を取る中継地点としてはこの街はちょうどいい。
よく見ると、農地を警護をしているのか冒険者らしき者たちの姿が見える。冒険者パーティを引き連れて街を出入りしている馬車もチラホラ。
情勢が悪化しているとはいえ、物流もまあまあ盛んなようだ。
一つ気になるのは、一つの馬車に対しての護衛の人数が多いことだ。
冒険者は三人か四人でパーティを組むのが一般的だ。報酬の取り分だったり、いろいろな事情があってその体制になっているんだろう。
しかしここでは七、八人ほどの護衛が付いている馬車を多く見かける。まあ、少し気になっただけだ。
街へ入ると、今まで見てきたオルディアの街とは違い活気がある。人々の幸福度は意外と高そうだ。
子供たちだけで遊んでいる姿も見受けられる。治安も悪くないという証拠だ。
「なかなかいい街だな」
「そうでしょう? エンドラは冒険者の数が国内で一番ですからね。だから野盗なんかも寄り付きにくいんですよ。ギルドの力が強いんで政治の影響なんかも受けにくいんです」
ライドは自慢げな顔で故郷を語っている。誇る気持ちもわかる、いい街だ。
「あ、そうそう。向うのウェルキン市場には行商人が集まって屋台がたくさん並んでますよ、色んな地方の味が楽しめますぜ」
市場か。それは是非行ってみたいな。
屋台という言葉に、エリオとセフィリアが強い反応を示した。
「リント様!私屋台に行ってみたい!」
「俺も行きたい!メチャクチャ腹ペコだし」
そういえばもう昼過ぎだもんな。その前にギルドを少し見てみたかったが……
まあ、この街なら二人だけでも大丈夫だろう。セフィリアの魔法はなかなかのものだし、エリオもその辺のゴロツキには後れを取らない程度に成長してきている。
「じゃあ、俺たちはギルドに行くから二人で行ってきていいぞ。食べ過ぎちゃダメだからな」
「はい!」
「うん!」
俺は二人に銀貨を一枚ずつ手渡した。フードファイターでも食べきれないほどの食べ物を買える額だが、食べ物以外にもなにか必要な小物も売っているかもしれないと思って多めに渡した。
「行ってきます!リント様」
「よーし!めっちゃ食うぞ!!」
「酒酒~、色んな地方の酒飲むニャ~」
「……おいリンネ、ちょっと待て」
「なにかニャ?」
「お前お金持ってるのか?」
「お金? 持ってるわけねーニャ」
「はぁ…… あれはセフィリアとエリオに渡した金だ。お前の酒代じゃないぞ」
「まあまあ、そんな硬いこと言わニャいで~ボス~」
こいつに酒を飲ますギリはないんだが……
なんか調子を狂わされる。こいつの見た目が悪い! ハリウッド顔負けの超クオリティの高い猫人間のコスプレをしているこの見た目が!
態度は絶妙にイラつくこともあるがなぜか憎めない。ついつい甘くなってしまう。
「まったく…… ほら、飲み過ぎるなよ? 二人を見ててくれ」
「銀貨ニャ! さすがボス、懐がリゼ渓谷より深いニャ」
「なんだリゼ渓谷って」
ああやって能天気に振舞ってはいるが、リンネは強い。手を掴んだ時に流れ込んできたマナでおおよそはわかる。
獣人族というものがそもそも強いのかリンネが特別強いのかはわからないが、冒険者で言えば限りなくSランクに近い、いや、もしかしたらそれ以上の実力を秘めている。
そんな素振りは微塵も見せないけどね。
能ある猫は爪を隠すとでも言うべきか。
「じゃあライド、冒険者ギルドに案内してくれるか?」
「ヘイ、じゃあ行きやしょう兄さん。ご案内します」
軽い世間話をしながら歩いていると、向こうから一組のパーティが歩いてくる。
ものすごく視線を感じるが、俺はあえて目を合わせないように通り過ぎようとした。
しかし、先頭にいた高価そうな鎧を着込んだ男が前に立ちはだかり、俺たちは足を止めざるを得なかった。何か用なのか?
「ようライド。今度はそいつと組んで依頼でも受けるのか? この間の護衛はどうした?」
ライドの知り合いか? それにしてはライドの顔は不機嫌そうだ。
「ディック、おめーにゃ関係ねーだろ。急いでるんだ、通せよ」
「そんな連携も取れねえ即席パーティばかり組んでたらそのうち死んじまうぞ? まだあの事を気にしてんのか?」
「……いちいちうるさいんだよ、母ちゃんじゃあるまいし。じゃあな」
ライドは前を向き、足早に歩き始めた。
連れの奴らはライドのことを見下したように嘲笑しているが、男はやれやれと言った表情でライドを見ている。そんなに悪いやつには見えないが。
「すいやせん、兄さんの前でみっともない姿を……」
「――――あの男は?」
「あいつはディックって言いまして、歳は俺と同じで、同じ日に冒険者登録をした同期の男です」
「腕が立ちそうなやつだったな」
「やっぱわかりやすか? またの名を炎剣のディック。魔法と剣技を融合させた魔法剣の使い手で、この国ではそう多くないSランクの冒険者です」
――――魔法剣。
「じゃあ一緒にいた奴らも?」
「いいえぇ。くっついてた腰巾着どもはAランクが一人とBランクが二人。だからSランクパーティ推奨の依頼は受けられないんですよ。もっと上に行ける奴だとは思うんですがね、まああいつも気の毒な奴なんですよ。いけ好かないやつですけどね」
BやAランクは個の実力でなれないこともないが、Sランク以上となると昇格には同レベルの者がパーティを組み、国からの依頼やSランクパーティ推奨の高難易度の依頼をこなして実績を積まないといけない。
各々がSランクになれるほどの我の強い者たちが四人も手を組むことや、一緒に冒険を始めた者たちが揃ってSランクになれることは稀であり、S+パーティともなればどこの国でも手元に置いておきたいほどの存在確率になる。
まあ、オーラを巧みに扱えれば、そんなしがらみなんて全てをすっ飛ばして称号持ちとしての称号を得られるが、それはそれでごく一部の存在のみ。
そう考えると、エブンズダールで会ったスナッシュたちSランクパーティは激レアなパーティなのだ。
「早く酒買ってこいって言ってんだウスノロッ!!」
「あうッ!!」
怒声が響いた瞬間、一人の若い男性が俺の足元に吹き飛んできた。
お読みいただき、ありがとうございました!
下にスクロールして頂くと☆☆☆☆☆という評価ボタンがありますので、ちょっとでも「面白かった」「感動した」「続きが気になる」など思って頂けましたら是非、応援や反応をよろしくお願いします!更新の励みにさせて頂きます。
感想などもお待ちしております。




