第66話 西方の勇者 其の2 ”レベルと特性”
初めての命をかけた戦闘、そして勝利。さらには自分たちの変化。
一行は興奮冷めやらぬといった感じで盛り上がっていた。
「ねえちょっとなにあれ!!レオが消えたと思ったらあの化け物が真っ二つ!!」
「俺も力が溢れている、この体の変化はなんなんだ? この世界では俺たちはスーパーヒーローなのか?」
「ああ、女神様にも言われた通り、俺たちはこの世界を救うために召喚されたヒーローだ。何か特別な力を授かってるに違いない」
「なんだかワクワクしてきた。――――それより、あの化け物から何かが出てきてその剣に吸い込まれてたけど、あれは何?」
「この剣はソウルイーター、魂を喰らう剣だ。斬った者の魂とマナとかいうものを喰らって俺とこの剣を強くするらしい」
「らしいって、誰から聞いたのよ」
「それは――――」
レオは話そうか迷った。話してもまたおかしな奴だと思われて終わるかもしれない。でも、レオの実直な性格は隠し事をするのに抵抗があった。特に仲の良いこの二人には。
信用してもらえないかもしれないけど、事実は事実としてやはりちゃんと伝えておくべきだとレオは決めた。
「さっきも言ったけど、俺にはこの剣の声が聞こえるんだ」
「え、またその話し?」
「ああ。さっきあの化け物を倒した時も、剣の声に従った結果なんだよ」
「ちょ、ちょっとレオ、冗談は――――」
「いや、レオは嘘をついていない」
ジェイデンが二人の間に割って入った。
「俺はレオとキンダーガーテンの時から一緒だからな。こいつが嘘をついてる時はすぐにわかるのさ」
「ジェイデン…… って、俺ってそんな分かりやすい?」
「ああ、お前が嘘をつくときは必ず目をそらして髪をいじるからな」
「ええ!?そんな癖あったっけ」
「お前が気づいてないだけだよ」
「お仲がよろしいことで。どうせ私はミドルスクールからの付き合いですよー!」
森の中に三人の笑い声がこだましていた。
この三人はいつも一緒に行動をしていてとても仲がいい。学校も一緒でバイト先も一緒。家も近く、とにかく暇があれば四六時中つるんでいる大の親友だ。
「嘘じゃないならさ、今なんか聞いてみてよ」
「今?」
レオはスリに言われた通り、やれやれと言った感じで剣を抜いた。
「なあ、聞えてるか?」
《なに? 主。聞こえてるよ》
「この疑りぶかーい女の人が、俺と君が本当に話せるのか知りたいんだってさ」
「疑り深いは余計!」
《――――じゃあ、二人に剣のガードの部分に触るように言って。なんの適性を持ってるのか教えてあげる》
「わかった」
「ねえ、何て言ってるの?」
「この部分に触れてくれってさ。なんの適性があるか教えてくれるって言ってる」
「適性?」
「とりあえず触ってみなよ。さ、ジェイデンも」
「ああ、ゲームで言うジョブみたいなやつか。まあ俺は戦士系だろうけどな。俺には戦闘部族だった先祖の血が流れている」
二人が手を触れると、剣が薄く黄色い色に発光し始めた。
「あ、色が変わったわ」
《――――ふんふん。さすが主の仲間たちだね、二人ともすごい才能を秘めてるよ》
「二人ともすごい才能を秘めてるってさ」
「ええ!なにかしら。楽しみぃ!」
「フフ、そうだろうな。アフリカの先祖の血は偉大なんだ」
《まずはそこの女の子。彼女はウィザードの適性がすごく強いね。アビリティは神通力》
「まずはスリ。スリはウィザードの適性がすごいってさ」
「ウィザードって……魔法使い!?それ本当?」
「ああ、剣が言ってる」
「ヤバイ!ハリー・プッターみたいじゃない。早く使って見たーい!」
「ああ、あとアビリティは神通力?だってさ」
「神通力?なにそれ」
《神通力はね、わかりやすく言うと超能力みたいな人知を超えた力のこと》
「超能力みたいなもんだってさ」
「ちょっと待って……魔法使いでサイキッカーって……私かっこよすぎない?マジヤバい」
「ああ。すごいと思う、世界を救うのに心強いな」
《じゃあ、次はもう一人の男の人。――――この人の適性はヒーラーだね。すごいよ、彼の持つ癒しのマナは、きっと多くの人を救うと思う。アビリティはタンクだね。彼はこのパーティの守護の要だよ》
「じゃあ次はジェイデン」
「ああ。聞かなくてもわかってるがな」
ジェイデンはフィジークのサイドポーズを取りながら余裕の笑みを浮かべた。
「ジェイデンはヒーラーとしてものすごく優秀みたいだ」
「フフ、そうだろう?俺にはヒーラーとしての血が………… ヒーラー!?お、おいレオ、何かの間違いじゃないのか!?」
「プッ!!」
スリはお腹を抱えて笑った。
「アハハハハハハッ!! ひ、ヒーラーって、アハ、アハハハ!!こんなムッキムキのヒーラーとか超いやなんだけど」
「お、おいスリ、笑い過ぎだ…… レオ、本当なのか?」
「本当さ、ジェイデンの力は多くの人を救うだろうって言ってるよ。それに、アビリティはタンクだ」
「タンクか。まあそっちはこの屈強な肉体に相応しい役割だな」
「ああ。タンクとして味方を護り、ヒーラーとしても支える。やさしいジェイデンにぴったりだと俺は思うよ」
「――――そうか。ありがとうレオ」
涙をぬぐいながら、平静を取り戻したスリが口を開いた。
「でもさ、ウィザードって言っても、わたし魔法なんか知らないしどうしたらいいのかしら」
「確かに。俺も回復魔法なんてどうやったらいいのか」
《大丈夫。君たちは肉体や魂を消滅させて次元移動する転生と違って、そのままの姿での転移、召喚という極めて珍しい形でここにいる。それは、ストレイアの力があまり残されていなかったからなんだけど転生よりも良い面もあるんだ。
敵から奪ったマナや魂は、彼らにも分け与えることができる。それを元に魂階……えーと、君たちがわかりやすく言うと、レベルを上げていけば色々な能力や魔法を習得することができるよ》
「ふんふん。で、良い面っていうのは?」
《転生の場合は、人間ではない新たな生命に生まれ変わらせることができるんだけど、それに大半の力を使っちゃうのと、生まれ変わったばかりの魂は脱皮したての甲殻類のように脆い。だから能力の付与まではできないんだ。でも転移の場合は、個々の魂に適性のある力を付与することができる。例えば魔法とかスキルとかね。
だから、レベルを上げてその能力に身体が耐えられるようになった時に、一つ一つ鍵が開くように能力を思い出していけるよ。眠っていた記憶が戻っていく感じでね》
レオは思った。
ゲームみたいで面白いじゃないか。
レオは、RPGをプレイするとき、ボスに行く前に過剰なまでにレベルを上げて挑む派のプレイヤーだった。
レベル上げに膨大な時間を費やし、苦戦することなく敵を打ち倒す。そこに快感を感じていた。
剣から伝えられたことを、レオは二人にも共有した。
「なるほどな。じゃあ今の最優先はレベル上げってところか」
「いや、まずは森を抜けて人のいる場所を探そう。レベル上げはそれからのほうが良いと思う」
「私もレオに賛成。不思議と身体は疲れないけどお腹ペコペコだし、ここで生きるならお金も必要だしね」
「――――へえ。食べられそうな野草や果物は教えてくれるみたいだ」
「なにその便利アイテム。すごく助かるんだけど」
「剣が言うには、あのブリザードベアも食べられるみたいだけど……誰か狩りとかで解体の経験とか……あるわけないよな」
「解体はちょっとな……」
「アフリカの部族の血が流れてるんでしょ?解体くらいできないの?」
「それは……ちょっとな。内臓系は苦手なんだ、考えただけで吐き気がする……」
「まああちこちに食べられる野草とかがあるみたいだから、それを食べながらまずは森を抜けよう」
先の戦闘で手ごたえを感じた三人は、足取り軽く森の中を歩き始めた。
後に西方の勇者と呼ばれる三人の若者の物語は動き始めた。
お読みいただき、ありがとうございました!
♦筆者イットより♦
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