第9章 予定説のパラドックス
ウィリアムは突然の吐き気に襲われて目を覚ました。よろめきながら前へ進み、身体が今起きたことに適応しようとする中、すぐに身をかがめて吐いた。頭がぐるぐると回り、数秒間、自分がどこにいるのか、どうやってここへ来たのかさえ理解できなかった。
口元を拭い、ゆっくりと顔を上げる。
視界が少しずつ鮮明になっていく。
そして、目の前に広がった光景に、ウィリアムは完全に言葉を失った。
巨大な超高層ビルが通りを見下ろしていた。そのガラス張りの壁が、頭上から降り注ぐ太陽の光を反射している。道路を走る奇妙で、信じられないほど高度な乗り物は、ウィリアムがこれまで見たどんなものとも違っていた。スポーツカーがほとんど音も立てずに通り過ぎ、その周囲には、彼が想像したこともないほど高くそびえ立つ巨大な建物が並んでいる。
どこを見ても、ウィリアムがまるで別世界へ突然足を踏み入れたように感じるほどの、驚異的な技術の進歩があった。
ウィリアムは、最も人通りの多い大都市の通りの一つに立っていた。
周囲には何千人もの人々がいた。
誰もが何か目的を持って動いているようだった。しかし、周囲で何が起きているのかに注意を払っている者はほとんどいなかった。
ほとんどの人が歩きながら手に持った小さな物体を見つめ、その画面に表示されているものに完全に夢中になっていた。
ウィリアムは、困惑と驚きを入り混じらせながら彼らを見つめた。
文明は、彼が想像していた以上に遥か遠くまで進歩していた。
ウィリアムは通りすがりの人を呼び止め、今日の日付を尋ねた。
相手が答えると、ウィリアムはすぐに年も尋ねた。
通行人から答えを聞くと、ウィリアムはしばらく無言で立ち尽くした。
日付も年も、ブリーフケースに入力したものと完全に一致していた。
彼の心臓が激しく鼓動し始めた。
もう疑う余地はなかった。
あのブリーフケースは、ただの奇妙な機械ではなかった。
タイムマシンだった。
ウィリアムは、本当に時間を越えて移動したのだ。
彼はもう一度周囲を見渡した。
今度は、まったく違う感情を抱きながら。
そびえ立つ建物、乗り物、人々、そして周囲に広がるテクノロジー。
それらはもはや、見知らぬ世界に存在する奇妙なものではなかった。
彼が自分の時代に閉じ込められている間も、人類が進化を続けてきたという証拠だった。
しかし、もう一つ理解したいことがあった。
ウィリアムは通行人が手にしている物体を指差し、それが何なのか尋ねた。
通行人は、それがスマートフォンだと答えた。
ウィリアムは、その小さな端末を魅了されたように見つめた。
こんなに小さな物体が、彼の時代なら部屋いっぱいの機械を必要としたようなことを、簡単にこなしてしまうらしい。
彼は、この新しい世界にあるすべてを見てみたかった。
人類がどこまで進歩したのか。
自分が失ってしまった年月の間に、人々が何を成し遂げたのか。
それをすべて理解したかった。
ウィリアムは周囲の人々と、見慣れない世界を見渡した。
何もかもが、彼がやって来た時代とは違っていた。
しかし、そこに留まって眺めているわけにはいかなかった。
彼が時間を越えて旅をしたのには理由がある。
そして、過去には彼を待っている、もっと重要なものがあった。
父親だ。
何年もの間、ウィリアムはその喪失の記憶を抱えて生きてきた。
父がいつ亡くなったのかは正確に分かっていた。
だが、それについて何かをする力は、彼にはなかった。
今、ついにタイムマシンを手にしたことで、彼は決して可能だとは思っていなかった機会を与えられた。
過去へ戻り、父親を救わなければならない。
ウィリアムは見覚えのある通りを急いで進み、港を探した。
父がその日にそこにいることを知っていた。
そして、時間を無駄にするわけにはいかなかった。
この奇妙な未来に気を取られている時間が長くなればなるほど、自分がこの場所まで旅してきた目的の瞬間を逃してしまう可能性が高くなる。
ウィリアムは父親の命を奪った出来事が起こる前にたどり着こうと、必死になって街を走り抜け、港へ向かった。
ようやく到着した頃には、ほとんどの船がすでに出港し始めていた。
ウィリアムは、自分が間に合わなかったのではないかと恐れた。
そして、もう諦めかけたそのときだった。
誰かの手が、彼の肩に置かれた。
「どうしたんだ? そんなに焦って。」
ウィリアムは振り返った。
何年もの間、必死に記憶に留めようとしてきた顔――どれだけ強く思い出そうとしても、ぼやけ、少しずつ消えていった顔が、突然、あり得ないほど鮮明に目の前にあった。
父親だった。
何年もの間、ウィリアムが覚えていた父の姿は、断片的なものだけだった。
声。
顔の形。
子供だった頃、父の隣に立っていたときの感覚。
時間は少しずつその記憶を奪い続け、年月が過ぎるたびに、残された断片さえ思い出すことが難しくなっていた。
しかし今、父親は彼の目の前に立っていた。
生きている。
本物だった。
「父さん――」
ウィリアムはそう言いかけた。
だが、その言葉は喉の奥で詰まった。
父親は目を細め、彼を見つめた。
「どこかで会ったことがあるような気がするな。私たち、どこかで会ったか?」
ウィリアムが答えるより先に、涙が頬を伝い始めていた。
この瞬間を、彼は何度も何度も想像してきた。
いつか父親の前に立つことができたら、何を言うのか。
何を伝えるのか。
すべてを想像していた。
しかし、いざその瞬間が訪れると、言葉が見つからなかった。
彼には、説明する時間すら与えられなかった。
ウィリアムが父親に話しかけ始めた、その瞬間――
二人の背後にある群衆のどこかで、銃声が鳴り響いた。
父親の身体が揺れた。
そして、そのまま地面へ倒れ込んだ。




