第2章―タイムトラベルは実在する
カイが目を覚ますと、両目は真っ黒に腫れ上がり、取り調べ室のような部屋の中で、テーブルに鎖で手錠をかけられていた。テーブルの向かい側には、険しい表情をしたオメガが座っている。
カイはオメガに向かって叫んだ。まさかまた殴られるなんて信じられない、しかも今度は両目とも黒く腫れている、と。だがオメガは、彼の顔よりももっと大きな問題があると答えた。
オメガは説明した。彼らは「パラドックス」と呼ばれる謎の組織であり、時間軸を安全に保ち、人類が絶滅するのを防いでいるのだと。
カイは、なぜ「謎の組織」と呼ばれているのかと尋ねた。オメガはため息をつき、「それは、我々が謎めいた方法で活動しているからだ」と答え、それから説明を続けた。その組織はタイムトラベルを利用し、さまざまな時代で活動しながら人類の発展を安定させ、人類に害を及ぼすあらゆる問題を排除しているのだという。
オメガはテーブルの上にブリーフケースを置き、それがタイムマシンであり、時間軸の安定を維持するために使っているものだとカイに告げた。
時間を自由に移動できる力を持っていたとしても、パラドックスは運命から完全に逃れることはできなかった。メンバーは次々と死んでいき、そして、そのような力を託しても信頼できる人間を新たに採用することは難しかった。なぜなら、人は十分な力を手にした瞬間、その力によって変わってしまう傾向があったからだ。そこで組織は、別のものを作り出した。それが「記憶移植技術」だった。メンバーが倒れたとき、その人物の記憶を新しい肉体――「器」へ移すことができる。そうすることで、その人物はある意味では生き続けることができ、同時に組織も、それまでに蓄積してきた知識を失わずに済んだ。
「我々は、器となる可能性のある人物を探した」とオメガは言った。「そして、我々のアルゴリズムがお前を選び出した。だが、移植を始める前に分かったんだ。お前はすでに器だった。すべての器には、首の後ろに番号のタトゥーが刻まれる。お前の番号は『1』だ。」オメガは身を乗り出した。「だから教えてくれ――お前は、本当は何者なんだ?」
「俺は何者か、だって?」カイは繰り返した。「正直に言うと、過去の記憶はかなり曖昧なんだ。でも、一つだけはっきり覚えていることがある。もう少し近づいてくれれば、教えてやるよ。」
オメガは、これまで生き延びてきた本能のすべてに逆らうように、身を乗り出した。
オメガがカイに近づいた瞬間、カイは自分にかけられていた手錠をオメガへとそくざにかけた。
「感心したよ」とカイは笑いながら言い、身を引いた。「本当にね。照明も、セットの小道具も、全部だ――危うく本気で信じるところだった。いいイタズラだったよ。ところで、誰が撮影してるんだ? カメラはどこ?」
カイはブリーフケースを手に取り、ガレージセールで珍しい品物でも調べるような様子で眺めた。「これがタイムマシンってわけか。どうやって使うんだ?」
カイがブリーフケースに手を置いた瞬間、オメガの疲れ切った表情が一変した。そして、ブリーフケースに触れるなとカイに強く言い放った。
だがしかし、それにりカイはますますブリーフケースに興味を持ち調べ始めた。ブリーフケースにはいくつかの数字が表示されていた。カイはそれを回しながら「80年代がいい時代だって聞いたことがある。よし、1980年に設定しよう。それで、どうやって起動するんだ?」と言い、ブリーフケースを開けようとした。
カイが留め金を開いた瞬間、彼はブリーフケースとともに姿を消した。




