【35】防寒具を求めて
魔獣、騎獣専門の防寒具ショップに立ち寄った僕らは、ひたすら店の奥へ奥へ……分かりやすく言うと、どんどんサイズがデカい方へデカい方へと歩を進めていた。
ガッシャガッシャといくつかのハンガーを手に取ったり戻したりしながら、それを買う原因に思考をはせる。
「万年雪……万年雪って確か、えーと」
「雪女郎から取れる。雪山への入山が必須だ」
「1日で踏破は無理ですね。数日分の蓄えは必須かと」
自分用の防寒具をしれっと購入しながら、二人が僕の疑問に答える。
店内をぐーるぐーる、と巡回してから、僕はふと顔を上げて問うた。
「で、ありますかね防寒具」
「無いですね」
「デスヨネー!!」
店員さんが弾けんばかりの笑顔で即答する。
ペェちゃんの体のサイズを示したメモが容赦なく手元で握りしめられていた。
規格外サイズなのは重々承知だったが、専門店ならばあるいはと考えていた。甘かった。専門店の最大サイズでも足一本入るか怪しいサイズである。
「「何故!?」」
「何故?じゃないんですよ天然親子め。大きさ見なさい大きさ。ここにある魔獣用ウェアが入るわけないでしょうが」
「最大サイズがこれですよ」、と言いながら一番奥にあった絶妙な臙脂色の防寒具を突き出せば、天然親子の動きがピタリと止まる。
しばらく顔を見つめ合って何某か考えたらしい彼らは、ぽんと一つ手を打って流れるようにこう言った。
「じゃあオーダーメイドでお願いします」
「特急料金もつける。最速で頼む」
「お値段は気にしなくて大丈夫ですので」
「思い出したように成金ムーブをッ!?」
怪力と親バカで忘れそうになるが、彼らは普通に良いところの出身である。
冒険をする都合上、酒池肉林のような不要な贅沢はしないものの、こういう時にお金を出し惜しむことはしない。
怪訝な顔をしていたお店の人であったが、ローザドーロさんがサラサラっと契約書にサインした瞬間に顔が切り替わった。
『ベルツォーネ』。最初の頃にさらりと名乗られたその名前の影響力をこうしてありありと見せつけられると、僕はどうしてここにいるのか時折わからなくなる。
そしてあっさりと防寒具入手の方法は確立されてしまった。
現金の暴力という、一番わかり易い方法で。
◇
「まだ出来るまでは時間があるな」
「オプション山盛りすぎて店員さんが困惑してたんですが」
「明日には出来るそうで!待ちましょう!!」
「はっやぁい」
さすが専門店、特急料金さえ払ってしまえば家が乗るレベルの巨体用すら明日にはできてしまうというのだから恐ろしい。
その間にすることは一つ。食材の買い出しである。
「アーネリカ。葉物野菜はあまり買わないからね」
「何故に……?」
「日持ちしないからだな。根菜メインで冷蔵する」
「それならば芋を」
「芽が出てるお勤め品を持ってくるんじゃありません」
キャベツ、そしてジャガイモ。トテトテと持ってくるアーネリカだが、尽くなにか欠陥があった。
まあ純然なる知識不足なのである。
「家事できないものねぇ」
「不服ッ」
ほのぼのとした買い物の、その途中。
ふと視界が遮られて、そのまま意識が暗転した。




