【33】武器を求めて
街の武器屋に連行された僕は、現在進行系で武器を吟味されていた。
なお、武器屋のおじさんは数歩下がった所で売り子みたいであろう武器を手におろおろしている。
それもそのはず、僕の眼の前で股下2メートルはあるであろう褐色美男が店員真っ青の速度で次から次へと武器をあてがっては首を傾げていた。
「貴様、使い慣れた武器は」
「無いです。強いて言うなら包丁」
「武道の心得は」
「あるように見えますか?」
「全く一切皆目検討もつかんが」
「辛辣ぅ」
ガッチャンガッチャンと音を立てながら武器を持ち替えていくローザドーロお父さん。
両手剣、片手剣、細剣……とだんだん重量、ついでに僕への期待値が下がっていく。
「なら細剣か短剣か……ああ、投擲に自身は」
「全く!!」
投げナイフを持っていたローザドーロさんがため息交じりにそのナイフをぶん投げる。
それはきれいに試し投げ用の的に全弾命中する。引き抜こうとした親父さんがそのままぶら下がってしまった。どんだけ深く切り込んだんだろう。人に向かって投げたらまず致命傷だ。
「元気に言うな。あとアーネリカ、そこにあるクレイモアはお前が思っているより軽いからな」
「エッ」
視界の端で重量級武器の樽をガッチャガッチャと漁っていたアーネリカが、クレイモアを持ち上げて勢い余ってつんのめっていた。
ギリギリで踏みとどまったのはさすがの一言である。
「フム……貴様さえ良ければだが、スキル欄を見せる気はないか」
「あー手っ取り早い……デス……ネ?」
「急に歯切れが悪くなったが」
「いーーーーやぁ、ちょっと諸事情ございまして」
さて皆々様忘れているかもしれないが、僕のスキル欄には拷問だの何だのと結構物騒なものが並んでいる。
人様に見せたらドン引き待ったなしである。ただでさえ娘に近寄る排除対象と見られている現状、ちょっと見せるのは憚られる。
「スキル欄か」
「……ハイ」
「なら先に見せておく。見ろ」
「拒否権無しッ!?」
言うが早いか、ガッシリと顔を鷲掴みにしてスキル欄を見せつけられる。
一応目を閉じてみたものの、目を開けるまで絶対にホールドを解除しないという確固たる意思を感じる。なので素直に目を開き、眼の前に表示されたステータスを目で追った。
「えー、あのー」
「どうした」
目が泳いでいる僕の顔からは未だに手が離れない。
この人なんでこんなに頑なに視界を制限してくるのだろう。
「房中術って見えるんですけど」
「文字通りだが」
「ワーオ」
「妻のために諸々頑張った名残だな」
「納得の愛妻家」
「スキルなんてただの資格。それで人を判断することはない」
「なら」
久しぶりにスキル欄を表示する。
【精神苦痛耐性 レベル8】
【肉体苦痛耐性 レベル8】
【毒耐性 レベル8】
【毒保有 レベル2】
【拷問術 レベル6】
お、毒保有のレベルが上がっている。
まああれだけ毒あるものを食べてれば上がるのも当然か。逆にそれしか上がっていなくて少しがっかりもしている自分がいる。
「……転移前は日本だったな?」
「ですね」
「戦時中でもなかったな?」
「少なくとも僕の周りは」
「そうか、そう……」
しばらく何かを考え込む仕草をしたローザドーロさんが、ようやく僕から手を離す。
そして再びなにか武器を見繕いに戻っていった。
「ん、失礼したな。はてさて拷問術か。なら」
なにか一つ武器を持って戻ってきたローザドーロさんが、僕の手の中にその武器を落とす。
「これはどうだ」
それはなんとも立派で、黒黒としていて、手に馴染む……本当に何故か手に馴染む、一本鞭だった。




