【27】取り巻きが邪魔なので
「ああもう、なんでキノコもゴーレムも簡単に倒させてくれないんですか!!」
アーネリカが悲鳴に近い声を上げながら洞窟の中を疾走する。
ハルバードは背中に背負われた状態であり、敵に向かって刃先を向けられる気配はなかった。
それもそのはず、このマグマゴーレム、あろうことか自分に向けられた刃をスライムのようなマグマ部分でキャッチしてしまうのである。
そして溶かす。当たり前ではあるが、触ればぷにぷにしそうではあるもののしっかりマグマ、高温である。鉄であろうと容赦なく溶かす。
「幻覚に高温に……ことごとく力押しが封じられてるね」
「殴れれば殺せるのに!!」
アーネリカお得意の薙ぐ、斬る、殴る。取り敢えずあれやこれや物理に訴えかける対処法が軒並み通じないのである。
「アーネリカ、殺意。殺意抑えて」
フラストレーションがマックスなのであろうアーネリカには、こちらの声が届いていない。
逃げつつもときおりマグマゴーレムに攻撃を仕掛けている。
しかし忘れてはいけない、マグマゴーレムはひとりでここにいるわけではない。よくわからない取り巻きが一緒である。
そしてその取り巻きはビーム砲のようなものでアーネリカを延々狙い撃ちしていた。
「グネグネしますし!!」
「取り巻き邪魔ですし!!」
マグマゴーレムも取り巻きも、僕とペェちゃんなぞ眼中にないといった感じで、ひたすらにアーネリカを攻撃している。
戦力……というか脅威になりうるのは彼女だけだと判断しているのだろう。実際それは正しい。
「アーネリカ、避け……ッ」
取り巻きのビームの集中砲火がアーネリカに迫る。
思わず手を伸ばしつつ悲鳴を上げた僕だったが、次の瞬間に目に入ったのは、アーネリカがビームに刺し貫かれる惨状……なんかではなかった。
「……なにかしました?」
響く硬質な音……と、煙を上げるアーネリカの握りこぶし。
それが何かを弾き飛ばすと同時に、彼女に向けて放たれたビームが90度ひん曲がって地面に叩きつけられたのを、僕は見た。
「ビームって素手で弾けるんだぁ」
僕の心の中の小学生男児がスタンディングオベーションするようなことをしれっとやってのける。
少年漫画で見るかっこいい描写トップテンに入るのでは無かろうか。なお原理は不明である。ロマンに言及するだけ無作法というもの。
「私さっきから思ってたんですよ」
多分相当お冠状態であろうアーネリカが、ぶっ叩いてビームの起動を変えたばかりの手をそのままに、ゆらりと標的を変える。
狙いをマグマゴーレムから、その後ろに庇われるようにしてビームを打ち続けている取り巻きへと。
「まるでマグマゴーレムの背後は安全圏であるかのように振る舞っていますが」
アーネリカが筋肉に力を込め始める。
それを察してか、マグマゴーレムがスライムのようなマグマ部分を大きく広げた。
そしてそれを、上へと展開する。どうやら跳躍による裏取りを警戒しているらしい。
僕もそう思っていた。しかし彼女は、その場の誰の予想とも違う行動を取る。
「撃っているということは、撃たれる覚悟があるということですね?」
いうが早いか、地面から流れるように拳大の礫を拾い上げてそのままぶん投げる。
見事なピッチングフォーム。野球選手を彷彿とさせるそれから放たれた豪速球は、必死に取り巻きを守らんとしていたマグマゴーレムの触手網をキレイにすり抜け、背後に隠れていた取り巻き2体をあろうことか“貫通”した。
「……狙撃完了、です」
「いいえそれは投擲といいます」
「狙撃に見えませんでした?」
「どうあがいても超剛腕によるオーバースロー投擲にしか見えなかったけど」
やりきった、とでも言いたげなアーネリカに思わずツッコミをいれる。
むうと唇を尖らせた彼女は、何度かさらに素早く投擲の仕草をしてこちらを見つめてくる。
評価を求められているようなので首を横に振れば、肩を落とされてしまった。
「うむむ難しい」
「何を目指してるの君は……」
「母は予備動作なしで狙撃に見える速度で投げていた記憶がありまして……」
「きっと気の所為だよ」
「いえ明確にあるので気の所為ではないです」
「目指すところが高みすぎる」
君のお母様が諸々規格外すぎるんだよ、とは流石に言えなかった。
そっと口をつぐみつつ、明らかなことが一つ。
とりあえず、面倒な取り巻きは撃破である。




