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ソウルダッシュ  作者: 転醒 廻実
スタートダッシュ リ 両手に花
55/80

第55話 史上最悪の事態

 クソッ!

 また環奈がおかしくなった!


 しかも今度は、俺の事を邪神呼ばわりだ?

 ショックだぜ環奈、俺はその邪神を知ってるがソイツ自身じゃねぇぞ。


「おい待て環奈!? 環奈どうした!? 今度は何が起こったんだ!?」

「ダメだ、環奈様の精神状態が読み込めない。オクマの石でも限界があったか」

「ジェイク!」

『既にスキャンしている。何者かによる精神操作だ。情報操作ではない、精神に特化した能力のようだな。何処から能力を発揮しているか掴めない』

「チッ、狩猟者プレデターだ。見えないのを良い事にコッチでやりやがった!」


 俺の環奈に手ぇ出しやがって!

 ゼッテェ赦さねェ!!


「神鵺さん!」


 今度は何だリトラ!


「足立さん姉妹が急に暴れだしたんですけど!?」

「ほぁ!?」

「サリーとケインさんが止めてるけど、二人とも気が狂ったみたいに叫んでて、優さんを生け贄に何か召喚しようと」

「んだそりゃ!?」

「場所は外、夜に行うとした所から冒涜的な神話の狩人だと見れる。奴等にその召喚方法を知るすべは無かったはずだが」

「ミキ、お前何時の間にそんな知識を」

「書物が面白かったのでつい、な。ともかく、これは明らかに外部の仕業だ」

「だろうな」

「……あの、神鵺さん、眉間に皺が…………怒ってます?」

「激おこだ、まだ落ち付ける……すぅ~…………はぁ~……」


 相手は、恐らく俺と同じSランク相当の実力を持った狩猟者プレデターだ。

 何処から、どうやって、どのようにして此方を補足しているか。

 そして、目的は何か。

 それを阻止する方法は。


 これ以上環奈に何が起こるか分からない今、配下を使って調べる暇は無い。


 それらの障害を撤廃し、すぐさま解決するためには……。


「……リトラ、信に伝言頼む」

「え?」

「本当にすまない、って」

「……神鵺さん、何をする気ですか」

「最終兵器を使う」

「それで何故サリーに謝らなければいけないんですか」

「……神条 神鵺……貴様、まさかそれを……!?」


 クロウは知ってたな。


「頼むクロウ、黙っててくれ」

「しかし! 環奈様のためとは言え、貴様それは軽率過ぎるぞ!」

「環奈を失いたくねぇんだ、お前だってそうだろ」

「ッ……本気か貴様……」

「……ああ」


 本気も本気だ。

 何があっても、環奈だけは。

 そして、環奈の事を汚したあげく、俺の家族にまで手を出した奴だけは。


 "禁忌"を冒してでも。


「止めろぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

「グッ!?」

熾天使セラフ!?」


 信!?

 足立姉妹はどうした!?


「それだけは止めろと言ったはずだ! それを望むな!」


 そうかよ。

 そりゃお前はリトラが大事だからな。

 だがな、俺も環奈が大事なんだよ!


「事態は一刻を争うんだ! 時間が惜しい!」

「テメェそれが敵の策かも知れねぇ事ぐらい分からねぇのか!」

「俺の本質はそんな策も無駄に出来る! 頼むやらせてくれ!」

「ちょっ、ちょっと待って下さい!」


 リトラは知らないんだよな。

 こんな反応するのもわけないか。


「何なんですか、その最終兵器とか本質とか。貴方達一体何を知ってるんですか!?」

「リトラは知らなくて良い!」

「ねぇサリー教えて。何が起こってるの?」

「リトラッ!!」

「ッ……何なの……私の知らない所で勝手に話が進んでるんだけど……」


 おいおいおいどんどん嫌な方向に事が進んでるぞ。


「サリー、私怖いよ……」

「……ッ!?」

「そんな……そんな顔のサリー、初めて見た……」

「……リトラ……?」

「……ッ!」


 ヤベェ、リトラが逃げた。

 どんどん敵の思う壺に嵌まっちまってる。


「リ、リトラ! 違うんだ自分は! ……ぁ……ぁぁ……」


 嘘だろマジかよ我が神よ。

 たった今、俺は星辰の揃う時を切に願ってしまったぞ。

 海から大いなる宇宙人が起き上がる瞬間を、幻視してしまったぞ。

 信がショックを受けてるだと。


 いかん、これでは濡羽一族クリミナルクラスタが崩壊する。

 体勢を立て直すぞ。


「……信、俺の言う事を聞いてくれ」

「……んだよ……テメェは!!」


 いてっ。

 顔殴るのは良いが、眼鏡は後で弁償しろよ。

 しかしまぁ、壁にベタ付く程度まで加減してくれたのはサンキュ。

 カートゥーン顔負けに間抜けな格好してるぜ俺。


「テメェが余計な事考えなけりゃ、リトラは怖がらずに済んだんだぞ!」

「良いから落ち付け、熾天使セラフ

「落ち付いてられるか!!!」

「ぐべっ……このままじゃ敵の思う壺だ。指輪の解放は止める。俺ら一族とクロウで全員助けるんだ」

「ッ……わぁったよ」

「良いなクロウ。協定だ」

「言われずとも。しかしこちらは環奈様の救出を最優先にさせてもらう」

「構わん。全てが同じく優先順位最高のミッションだ」


 頭を使え。

 心を掌握しろ。

 疑わせるな。

 疑わせろ。

 全ては俺の手の内にある。


 この世界で、いや、存在する全ての中で俺だけにしか許されない立場ってもんがある。


 正解を見詰める者。

 回答者アンサラー

 絶対の報復機関。

 復習の刃(フラガラッハ)

 狂犬の飼い主。


 目を覚ませ、”俺”。

 ”お前”こそが、この指輪の更に外でほくそ笑む本物の”俺”だ。

 俺はお前だ。


 さぁ文字を送れ。

 俺に思考させろ。

 そうだそれで良い。


「ふぅ……信、お前はリトラを追え」

「えっ」

「アイツにとっちゃお前が一番の親友だ。良いか、アイツはお前の知らない一面を見て怖がっちまったんだ。もう隠し切れん。お前の正直な気持ちを伝えるんだ」

「……」

「……リトラの事、大好きなんだろ」

「……~~……ッ。言われなくても……」


 何泣きそうな顔してんだ。

 さっさと行け。


「カッコ付けてんじゃねぇよクズの癖して! リトラァ!!」

「……それで良い。サブミッション一つ達成っと」

「……急に気配が変わった……いや、好都合か。して、次はどうする。私は環奈様を追いたいが」

「ああ。クロウは環奈の傍にいて、支えてやってくれ。親にしか出来ない事だ」

「……親、か……貴様にだけは、娘をやりたくないなッ!」


 あら、早速親馬鹿。

 やぁねぇもう。


「私はどうすれば良い?」

「そうだな、白紙の本を二つ持ってきてくれ」

「白紙の本? 何故……ああ、そう言う事か。お前も人が悪いな。遂にここを黒く染めるのか」

「もうちょっと隠せよゾンビ女。笑いが漏れてるぞ?」

「何をそんな馬鹿な……それじゃぁ丁度この前見繕った、人皮で作られた表紙の本を持って来るとしよう」


 ミキ姉、アンタこう言うの大好きだろ。

 自分が思ってる以上に強烈な笑みだったぞ。


「……さてと、次のサブミッションだ。足立姉妹を狂信者に変えるぞ」

『うわぁサイッテー』

『……非道』

「じゃかぁしぃ」

『足立姉妹は森の中にいる。吸血鬼が取り押さえているが、手刀を入れる隙が無い』

「カタナがダメならバレットがある。陰陽だ。弾は質量無しの思念弾。我が神への信仰を注ぎ入れる」


 上空への移動完了。

 P-001陰陽、弾は思考を放射したと言う無理矢理な言葉遊びの代物だ。

 怪我無し。命の保証1000%。副作用がある為、用法容量を御守り下さい。

 サーモグラフスコープで標準を合わせ、馬鹿姉妹二人のドタマにぶち込むんだ。


『標的沈黙。作戦目標クリア』

「ケイン、ソイツらは従順な教徒となった。連れて来い」

『ヒュー。やっぱり黒金剛石ブラックダイアモンド、結局やる事は狂人のそれだ。だからこそ我は、ユーザーに惚れた』

『……”ユーザー”』

『”ユーザー”』

『”パイロット”よ』

『『『次の指令オーダーを』』』


「……殺せ。俺の敵全てを殺せ。名を挙げろ。今この時、悪も善も死んだ。生き返るまでの間、俺達は絶頂でいられる。タイムリミットは明朝、天のまなこが開くまでだ」


『フフッ。鳥は西へ』

『……鼠は東へ』

『南に人を』

「神こそ北に」


 機は熟した。

 この場において、家族だ何だと言う建前は必要無しだ。

 俺の望む結果を今ここに。

 天宮 環奈を俺の手に。

 両手に花束を、血濡れの真っ黒な薔薇を。

 鴉の羽を摘み取って編み込んだ、生きた造花を。


 俺の名は神条 神鵺。

 魔王を喰らい、神を喰らい、世界を喰らった男。


濡羽一族クリミナルクラスタの名を、今此処に」

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