第49話 過去を知る時
「……はぁ……いい加減にしろ、ってぇえーノッ!!!!」
はい重打。
当然環奈の拳とど真ん中衝突だ。
衝撃で周りの人間が吹き飛んじまった。
まぁ死にはしねぇだろ、今の内にどっかトンズラしときな。
そんで攻防拮抗、もう何回この流れ繰り返せば良いんだよ。衝撃波で周りの家屋がドンドン壊れていってる事にもうちと気を回せねぇのかコイツは。いやまぁ俺もそんなの関係無しとばかりに応戦してるけども。
「私とバトれよ神鵺! 何だってそう避けるんだよ!」
「今回の目標は探すのが困難な上に強力な個体の鵺なんだ。取り合うより協力した方が賢い選択だってのに、何でお前は幼稚な考えしか出来ねぇん、ダッ!!!!!」
「グゥッ!?」
よっし腹に蹴り一発当たった。
普段は25口径のウルネラとアルバロには50口径へ変わって貰って、殺す気満々のマグナム弾を更に腹へ手動連射だ。勿論弾丸はエネルギー弾、怒りを込めたアッツアツだぜ。
「大体お前は何だバトルバトルって、戦闘狂でもここまで非合理的な真似はしないぞ」
ようやっと倒れてくれた。まぁ、これまでの経験上、これしきで死ぬ事は無いと知ってるので遠慮無く撃てたんだが。倒れ姿がエロかったんで余分に撃っちまったが、そろそろ止めるか。
「ふぅ、少しは頭冷えたか?」
「……カフッ……そんなんじゃ、頭冷えねぇよ……何で扱いが冷たいんだよ神鵺……」
「分からないか。邪魔するなっつってんのに人の話を無視してバトルだ何だとせがんで来るからだ。せめてやるなら堂々取り合え。俺らの目的は、魂奪取任務だ。明日も学校あるし、さっさと終わらせたい」
「何でだよ!!! 魂奪取の方が大事だってのかよ!!!」
「……」
「戦えよ神条 神鵺!! 私と、ッ!」
ヤクザってこんな感じで人脅すのかね。
乗り掛かるようにしゃがみこんで、額に銃口を押し当ててやる。
「それ以上言うと今度は眉間に3発だ」
「……何で……」
「確かに子供の心は大事だ。素直でいる事は精神衛生上大事とされる。だが。今のお前は、駄々をこねる醜いガキだ。俺を苛つかせる憎き小童だ。俺はお前の事を良き友と思っているが、今俺達がやっている事は”仕事”だ”仕事”。殺しも立派な商売だ。時と場合を弁えろって言ってるんだよ。遊んでるんじゃねぇんだこのガキ」
「……何だよ……ガキだの何だの、お前だってまだ未成年の癖に……」
「俺は18、お前は16、たった2年の違いだが習う事が違う。大人と子供の差は、ここで急激に開くんだ」
「――ッ!!」
「我儘こくなって言いたいんじゃねぇ、お前の為にならないから、ッ!?」
胸から槍!? しかも何本も!?
そうだコイツ影女だった! 身体ん中に幾つも武器持ってるんだった忘れた!?
「環奈!?」
「五月蠅い!! 五月蠅い五月蠅い五月蠅い黙れ!!!!」
ちょ、何度も突いてくんな危ねぇ!?
仕方ねぇ、後退だ。
何だか知らんが殺意が増して来やがった、地雷でも踏んだか。
おいおいおい何だその格好、身体が全部武器になってるじゃねぇかよ。
元の可愛い姿は何処に消えたんだお前。
「お前も私をガキだなんだって言うのか。歳が上だからって、大人ぶってんのか神条 神鵺」
不味い、明らかにキレさせた。
ここで一つ、環奈の事が分かった。
コイツ、大の大人嫌いだ!?
「殺す……ッ!!!!」
ヤッベ槍50本乱舞来た!?
回避はダメ、反撃もダメ、受け流すしかねぇじゃんかチクショウ!
「環奈落ち付け! 俺の話を聞けって! おい!?」
「落ち付けるか!! お前までアイツらみたいな事を言って、私を玩具にする気だったのか!! あんな!! カッコ悪い格好をまたさせる気か!!」
何となく察しは付いた。
コイツの黒い部分はコレだ。
って言うか完全に精神セキュリティが無防備だったんで解析一発で分かっちまった。
親からの熾烈な虐待、完全な人格の否定と無遠慮な”愛玩”をされて来たんだ。それがコイツに心の壁を作らせて、そっくりそのまま影にさせた。能力が本人の性質を表すモノだって言うのは大方分かってる、憶測だがこんな成り行きだろ。見た目には明るいコイツが、何だって影なんて言うネガティブなイメージを持った獲物を使うのか気になってたんだよな。三つめの能力は、《起死回生》だった。死の淵に追い込まれる、或いは死んでから全快まで立ち直る能力だ。何度も死ぬ思いをして、憎しみを糧に踏ん張って生き残ってた名残かもな。チクショウ。俺の隣にいるSランク狩猟者が、こんな凄惨な過去を持ってたとはな。クソッタレの天宮両親が。産んだなら産んだで、何でコイツを愛してやらなかった。子供はお前らの玩具じゃねぇんだぞ。そんなんだから、”コイツに喰われる”んだろうが。地獄で永劫の時を悔やみやがれドチクショウ共。
それはともかくだ。
とんでもない事になった。
コイツのトラウマをモロに抉ってしまった。
逃げるか? いや、それはダメだ。余計にコイツを傷付ける事になる。
何よりダチが暴走してるって時に逃げられるかよ。
「環奈……」
これは、俺の責任だ。
環奈を元に戻すぞ。




