第48話 俺の嫌いな妖怪
「どうなってやがる……」
何かおかしい。
この神条 神鵺の知識が異世界で完璧に通じる事は無いとまでは分かるものの、それにしたってこの世界の様子には目を見張る。
この平行世界、江戸時代の癖して皆魂のランクが高いぞ。普通は一般人だとEランク以下ばかりだのに、何だってCランク以上が当たり前のようにそこかしこで見られるんだ。
今回の目標も、少し変わってやがる。
推定ランクS+、鵺だ。
鵺と言えば、平安時代末期に源頼政の手によって退治されたっつう物語が有名な大妖怪じゃねぇか。「何にでもなれるように」って事で俺の名前にも埋め込まれた傍迷惑な存在だ。それな、何時まで立っても何にもなれねぇって事でもあるんだぜ。まぁ俺としちゃそれで良いがよ。遺体は船で流されて、その後海を渡っただとか川の下流に流れ着いて塚に埋められただとか言う話もあるが、何だってそれが今生きた状態で横暴働いてやがんだよ。淀川付近で埋められてるとなりゃ、塚が取り壊されるのは明治時代じゃねぇのか。
『調べてみた所、この世界では源頼政による退治は失敗しているようです。トドメを刺したとされる猪早太が事前に死去していたために、取り逃したと』
「それで今日まで逃げ伸びて、闇の中動き回ってるってのか」
『何にせよ、一度死の淵を乗り切った個体です。より凶暴になっているでしょう』
「おまけに何処ぞの擬人化キャラよろしく、認識を曖昧にする能力まで持ったんだろ? ジェイクに常時スキャンしてもらっても見付からないんじゃ、地道に探すしか無いと来た。おまけに環奈の奴が変に邪魔して来やがるから難易度急上昇、S+なんかじゃねぇこりゃΖだ」
『もしかしたら、戦いたいだけとか』
「仮にそうだとしたらケツ揉みしだいてメスの顔にしてやるわ」
『ユーザー、最低』
『……死ねば良いのに』
「うるせぇ。せめて協力でもしてトドメを競うぐらいなら良いだろうに、戦いたいからって邪魔されちゃ堪ったもんじゃねぇ。親の顔が見てみたいわ」
『神鵺さんの親は、常識人でしたね』
「父ちゃんはな。母ちゃんは割とエキセントリックだが」
『何したんです?』
「突然飲食店なんか始めたと思いきや、何かやらかして倒産から借金のフルコンボ。それはどうにかなったらしいから良いものの、半ばグレて果てに離婚。おかげで今じゃぁ家族皆別居と来た。一人一居、豪華だろ?」
『……それでまた倒産して元気に破綻報告……』
『子が子なら親も親だった』
『不憫……』
「……と、言ってる間に邪魔者が来た」
後方7km、マッハ2の超音速で迫って来る個体がマップに一つ。
到着まで、残り10秒。




