第43話 二人目の襲撃者(瞬殺)
あの後、俺達はちゃんと邸へ帰って来れた。
車は俺が優に同伴して、レンタルしてる店に返してやった。所々に目立つ銃痕や屋根の靴跡に関しては、チップで誤魔化した。30万でもやりゃ満足だろ。店の奴等、涎垂らしてやがったぜ。
「お金に物言わせるセレブ対応……神鵺君本当に遠慮が無い……」
「金があれば使え。それが俺のモットーだ」
「ケインさんの苦悩が窺い知れる……」
「それとだ優、セレブってのは有名な金持ち、強いては単なる有名人の事を指す。俺は狩猟者界じゃ有名だろうが、ここでは本来の意味合いから外れる。日本で使われ続けた末の誤認識をそのまま使うのは如何なものかと思うぞ」
「それ、たった今検索したよね」
「そうだが?」
「ズルいよそんな……ッ!?」
おい、また予知か。
一日に二回も予知なんて来るわけ……。
いや待て。
連続して優の身の回りに事故が起こる事は無い。
そんなの確率学的にあり得ない。
だとしたら、これは。
「神鵺君のお父さんが、三分後に死んじゃう!? しかもその後、神鵺君暴走して……ウソ、消え……ひっ!? ちょ、神鵺君何かオーラが!? 肌がピリピリするんだけど!?」
「……ンンンンンンンンヌ"ゥゥゥゥゥウウウウウウウ……!!!!!!!」
狩猟者共ぉ……。
俺の事が怖いからって、身内にばかり手ぇ上げてんじゃねぇぞ。
俺の心壊そうと躍起になってるようだが、やっぱ人間ってのは目的と手段を取り違える事がままあるようだ。
まぁ? 俺も人の事は言えないけど?
ちょいとさぁ、普通に人としてそれどうなのよクソが。ねぇ。
「……第……三、指定解除」
「え!? ちょっ、とぉ~それは……」
「やれ」
「ヒッ!? あの、何か瘴気出てるんだけど……!? それと何か唸ってない!? ッ……神鵺、君……?」
思わず服掴んじまった。子供か俺は。
虫の良い願いだって事は分かってるがよ。
「……往生は歓迎だが、殺されるなんてのは嫌だろ……」
「……ぁ……」
「頼む……お前の力で、望む未来に固定してくれ……」
「……神鵺君……分かった。報酬はァ"ア"ア"ア"!?」
「ッ!? 優!?」
あ、穴に落ちた!?
ついさっきまでただの地面だったのが、何だって急に穴が開くんだ?
しかもこれただの物理的な穴じゃねぇか。
「だ、大丈夫ー! 痛いけどー!」
「見えてんぞ!」
「馬鹿ぁ!!」
「見えるようにしたんだもの」
後ろから少女の声が聞こえた。
「グッジョブ死ねぇ!!」
振り向き様に月と太陽がお仕置きよ!!
「やぁっだ怖ぁい」
チッ、騎乗士の次は魔術師かよ。
おい待て俺の弾丸を消すなその布何だお前。
手品師か。
「ねぇ貴方、もう少し相手を良く見た方がよろしくてよ?」
「あ?」
「ヒッ!? し、神鵺君!? 何か! 何か銃弾が浮かんでるんだけどぉ!?」
「ッ!?」
強奪能力!?
俺の銃弾を自分の手にしたのか!?
「そこの女を殺されたく無くば、私の言うことに従いなさい? あぁ、銃弾はただ止まってるわけじゃないから。あれも一種の隔離世。距離の概念が無い、宇宙に似た場所へ置いといてるだけに過ぎないわ」
「ソイツが解除されたら、スピードをそのままに全弾向かう、と」
「そう言う事」
中々どうして、狩猟者にはチート能力ばかりあるんだろうな。歪んだ精神の賜物だろうが。まぁ、それも全然可愛い代物だな。狩猟者の真に恐ろしい力と言えば、そう、その石に纏わる、その人物の本質とも言える力だ。狩猟者は皆、この爆弾を抱えてる。ソイツを起動させたらとんでもない事が起こるだろう事は、容易に想像できる。こうして思うと、俺がこの事実を知ってるのは希少な事なのかもな。でなけりゃ、遠慮の無い狂人共だ、皆して解放してるだろ。
……環奈も隔離世生成能力持ってるよな。
もしかして、狩猟者って皆隔離世持ってる?
って事は、俺の思考世界って一種の隔離世なのか?
まぁそれは今気にする事じゃないな。
「で、何を命令する気だ」
「簡単な事です。何もしなくて結構」
「……テメェ」
「あら、良いのかしら。そこの未来視能力を持つ女の他に、貴方のお父さんも人質にしてるのよ? 今は何の事故も起こしてないけど、私の気一つで大事故を起こせるのよ? 先ほど寄越した暴走車は止められてしまったけども」
「アレお前の仕業だったのか。支配能力と強奪能力、そんで特殊領域使い……能力判明」
「能力を見抜いた所で遅いわよ。だって貴方はここで」
「あ、終わった?」
「……? 誰と話してるのよ」
「OK、んじゃ頼んだ」
「ちょぉっと、質問に答えて下さぁ"っ」
奴の後ろに開いた門から、アツアツのマグマがドバァーっと。
俺は負のエネルギー放射で氷を作ってガード。
狩猟者の中にも防御力の低いヤツはいるんだな。
魂出てるし。
「魂奪取」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!!」
「キャッチ」
「キュゥゥ……」
実はリトラに連絡入れて、優を門で転送してもらってた。
落ちてきた所でキャッチして、はい撃破完了。
どうやら狩猟者には能力が三つしか無いみたいだからな。
奴に情報操作が無いなら、俺は遠慮無く情報操作が使えると言うわけだ。
まぁ、情報操作能力を持ってたら使ってる間に妨害喰らってただろうし、情報改竄なんてされてたら堪ったもんじゃないしな。
父ちゃんの様子は、無事みたいだ。
仕事に戻ってる。
ん?
なに、「ありがとう」……父ちゃん、アンタそう言うとこ察し良かったんだな。
「リトラさんy座標ズレてるぅー!!!」
『意図的にですよー。でも今になって急に襲撃者が増えてきましたね?』
「……リトラ、そういや昨日会社行ってたよな。何かお報せは無かったのか」
『お報せ? えぇーっとこの前の会議で決定した事と言えば……あっ』
「……」
『……来月の始まりから、基本事項に他の狩猟者襲撃禁止が追加されるって……』
「……こんの……ドジがぁ!!!!!!」
『ごめんなさぁい!!?』
つまり禁止にされる前に狩猟者同士の戦闘が続出するって事じゃねぇか。何だってそんな大事な事を早く言わないんだ馬鹿。お前らが相手にしてるのは、この世でも特に恐ろしい存在の一つ、人間なんだぞ。安易な考えで決まりを設けるんじゃねぇぞチクショウ。
……いや、もしや悪魔社会の上層はそれを狙ってるのか。
早期に強い狩猟者を見繕っておこうと、そう言うわけなのか。
その為にわざわざ禁止令を来月に設けるって報せを広めたとしたら。
ケッ、狡い奴らだ。
えーと来月は、今日含めてあと一週間か。
一週間も敵の襲撃を危惧しろってのかこれ?
んだそれ、ふざけんじゃねぇぞ?
「って事はまぁーさぁーかぁー」
『まさか?』
「俺の通ってる学校も迷惑被る事になるんじゃ……」
まだ熱さが残るものの、既に秋時期。
北海道の恐ろしい所は、秋と言える秋の空気が全くと言って良い程無い所だな。
しかしこれは、より一層熱くなるぜ。
「連撃週間の到来だな」




