第25話 地獄の魂
「先手必勝オメガキャノォオォォオオオオオン!!!!!」
地獄の魂を獲得した俺達は、いっその事ヘルズそのものを支配してヤツに挑もうと考え付いた。
住人に圧倒的な力を見せ付け、格上な事を分からせて世界の影響を殺して従属させる。
そして情報操作で思考を共有させ、効率の良い働きをさせる事でヘルズの高速移動を可能にした。
内部にある兵器はこれでもかと言う程使う算段だ。
今使った最終鬼畜殲滅砲も、元は違う名称のビーム兵器だし。
N-EⅨにいる例の敵、俺達が『カラス』と呼ぶ事にしたヤツはオメガキャノンを受けて尚ピンピンしている。俺の知識通りなら、アイツの周りに展開している粒子が衝撃を吸収しているな。だったらありったけの火力をぶつけて、そのアーマーをこそぎ落としてやる。これで足りなかったとしても、俺はもう一つ方法を知っているんだ。
「ミサイルよぉおおおうい!!!」
「ミサイル準備中! 完了しました!」
「放てぇ!!」
単純な火力としては恐らく最強と思われるミサイル、それをめいっぱい叩き込む。高速機動で逃げても無駄無駄、数発は当たるんだよマヌケが。素直に撃ち落とせば良いものを。
「よし、後はミキが指揮を執る! 俺達はカラスがヘルズに近づかないようにしておくぞ!」
「用意は済んでる、乗ってくれ」
「環奈ってやっぱ《影使い》だったんだな」
「言っちまえば不定形化だな。内蔵した武器を模して自由自在に出せるんだぜ」
「ああ、その能力が要だ。本体は操縦席に来て、残りの体積で隙間をギッチリ埋める。これで粒子を少しでもシャットアウトするって寸法だ」
初め見た時から、コイツの能力は柔よりの能力だと思っていた。
自由自在に動く影、環奈はコイツを操る以外にも、自分自身が影と同化する事も出来るらしい。理想的だ。今回の作戦のような支援にピッタリじゃねぇか。オールラウンダー環奈、万歳だぜ!
「でも操縦なんて出来るのか?」
「俺を誰だと思ってる? 《情報操作》能力を持つ天才狩猟者、神条 神鵺だぜ!」
《解析》!!
ピッキーン! 操縦法が、頭の中に……入ってくるッ!!
「よし、OK!」
「補強確認、良し。何時でも良いぞ!」
「狩猟者、シンヤ!」
「狩猟者、カンナ!」
「「ソウルヘルズ! 出撃だァ!!!」」
Go Fight!!!
ブースト蒸かして急接近! 射撃を誘発して、高速機動でこれを躱す!
加速Gがすっごい!! 普段生身で飛んでる時は《放射》での自動緩和で多少和らいでるけど、これ操縦席が狭いからそれもままならない!
「ぐんぬぅぅぅううううはよ突撃して来いや!!」
「突撃して来ると攻撃チャンスが生まれるのか?」
「ああ、ヤツの攻撃方法は射撃だけじゃねぇ!」
おっ、来た来た急接近!
そうだ、お前の持つ武器は銃器だけじゃねぇ。
その粒子暴走させてみろよ!
「ほれ緊急回避!!」
急げ急げ後ろに向かってブースト!
身体に悪そうな粒子が広がって爆発しやがった。
ヒャー!!!!
「おぉっ!? 粒子が晴れた!!」
「今じゃブレイクゥウゥゥウ!」
六つ刃のチェーンソー染みた武器をキリキリ回転させてぇーブッ刺すべし! ブッ刺すべし! ブッ刺すべぇーし!!!!
そして距離を取る!
「良いぞ! ダメージ入ってる!」
「ああ、ここらで、集中力上げるぞ!」
互いに高速機動で動きながら、カラスは射撃を、俺達とソウルヘルズはそれを避ける事に専念する。
そして、痺れを切らしたのかまた粒子爆発せんとカラスが迫って来た。
「前進!」
「何故ぇ!?」
「俺がカラスだったら、逃げようと後方回避する所を追っていく」
「その裏を取ったのか」
予想通り、ヤツはさっきよりも前進した位置で粒子爆発を起こした。
すぐさま旋回、もっかいブレイクアタックを仕掛ける!!
「機体損傷大! これじゃぁマトモに動けやしないだろうな、私達の勝ちだ神鵺!」
「ッ? 補強解除しろ環奈、脱出する!」
「うぇ?」
「早く!」
「お、おう!?」
何だ今のは、今、確かに『逃げろ』って聞こえた。
まさか、ソウルヘルズ? お前なのか?
「急げ環奈!」
「よしOK! 脱出!!」
「うぉらっしゃい!!!」
とりあえずヘルズへ緊急避難だ。
「何があったシンヤ、何故急に飛び出した」
「声が聞こえた、『逃げろ』って」
「まさか、ヘルズか?」
「魂の声を聴いたと言うのか?」
「恐らくは」
「だったら逃げるか」
「何だか知らんがとにかく逃げろ!」
そんなわけで配下共と一緒に中層へ移動したんだが。
その直後、大きい揺れと共にヘルズが崩れ始めた。
「ッ!?」
「おい、どうなってる!? ヘルズが逃げろって言ったんじゃねぇのかよ!?」
「……逃げろって言うのは、もしやカラスの声では……?」
「……」
「……」
しまったぁぁああああぁぁああ!!!?!?
「んじゃ、私影ん中入っとくから」
「貴様ぁ!」
「シンヤ!」
「ぬぉっ!?」
ミキに突き飛ばされた。
何事かと思えば、なるほど鉄骨が落ちて来てたか。
現代アートみたいな事になってるんじゃないよゾンビ。
「カフッ……雁字搦めだな。置いていけ」
「なぁーに馬鹿言ってんの。ちょい痛いが我慢しろ」
「何を?」
ぶっ刺さってる鉄骨ごと持ち上げて、翼式加速飛行でヘルズから脱出する。住人には悪いが、これが限界だ。
「まぁサンキュ、下手したら重傷だった」
「……なに、私に出来るのはこれしきだ」
「よー、無事かお前ら」
「おう、見ての通りな」
環奈め、影の中を自在に移動出来るとは何て羨ましい。
その厨二能力俺も欲しいぞ。
「何て言うか、もっと酷い奴が現れたな」
「だなー……」
「アレが、ヘルズの本当の姿……いや、次の姿か……」
俺達の視線の先にいるのは、彼のエベレストとも背比べ出来るのではないかと思える程の超巨大ロボ……のような人型のモノ。ガラクタばかりの継ぎ接ぎで、バチバチ音を鳴らして周りのモノを吸収しながら動く様はとても異様だ。まず雲を突き抜けてるため胸から下しか見えない。
「最早一つの世界を内包した者だな」
「神鵺、それって」
「支配者だ」
「やっぱりか」
「支配者? この世界の中に、もう一つ世界が出来たと?」
「世界なんてのは一定義にしか過ぎないからな。あの地獄だって、広義で言えば一つの世界だ」
「なるほど」
進化を果たした地獄の権化、さしずめヘルズガルドと言ったところか。
このバトリスの呪縛から解き放たれた今、奴はここを地獄へ書き変えようとしている。これを名付けるなら、《世界征服》だな。
やられた。クロウの奴が狙っていた、俺へ寄越す強大な敵はコイツの事だったか。バトリスの核とやらが攻撃されて、ヘルズガルドに乗っ取りチャンスが巡ってしまったんだ。俺と環奈が機械を探す事を決めた時、既に作戦状態だったわけだな。いずれにしろ、このままじゃ俺達も奴に呑み込まれちまう。
「おい神鵺どうすんだよ! 何か攻略法あるんだろ!」
「今考えてる。バトリスに核とやらがあったなら、ヘルズガルドにも核と呼べる部分があるかも知れない」
「だが、それを攻撃するには中へ侵入する他無いのでは?」
「そこなんだよなぁ……」
情報操作で内部を調べてみたが、外殻だけしか分からねぇ。冷却機関だろうか、絶対零度に近い温度だとだけ解析出来る。ニブルヘイムのつもりか? どちらにせよ、生身の身体じゃぁ狩猟者の身体能力でも耐えきれねぇ。さっきカラスと戦った時みたいに、何か身体を防護するモンに入らねぇと……いや、それだけじゃダメだ。それでいてあの世界内を縦横無尽に動ける程の機動力、圧倒的な火力、それを扱える程の技量……俺に足りるのか、それが。こうなったのも元は俺のせい(と言うか俺んとこの悪魔のせい)だし、環奈に行かせるわけにはいかない。ミキだって、ただゾンビなだけで大破してしまったら行動不能のまま囚われちまう。
「……ん?」
「何か気付いたか!」
そうだ。
そもそもクロウが何故俺に極限の戦いをさせようとしていたのかって言う問題をすっかり忘れてた。
うちの悪魔が言ってた事を思い出そう。
『黒金剛石が俺を呑み込む』だったか。
それって、今ヘルズガルドがやってるような《世界征服》と同じ事なんじゃ?
一つの知的生命体が認識している世界とは別に、一種の精神世界とも呼べる領域がその個体にそれぞれあると仮定すれば、なるほど確かに、石に呑み込まれるって言うのも納得出来る表現だ。
少し飛んだ思考だが、つまりは俺の事を心配してたってわけだな悪魔。
なぁんだ関係あるじゃぁん。もう、素直じゃねぇな。
お前の言わんとしてる事は分かってるって。俺は自身の能力を六割程度しか割いた事が無い。死力を尽くした事も無い。それは何故か、周りの全てを利用しているからだ。俺は自分が、頭の良い卑怯な人間だと自負している。苦労を知らず、苦労する事から逃げる事ばかり考える生き物だ。それが効率の良いことだからな。だがな悪魔、お前が俺に怒る様に、俺も一度は自分を極限まで追い込んで、それこそ周りが見えなくなるほどの全力を出したいと願ってんだよ。死ぬ間際の本能を呼び覚ましたいんだよ、俺は。
おっ、そう考えてたら突破口が見えてきた。
まだ機体残ってたんだなカラス。
「アーマー……アーマード!」
「え、何、アーマード?」
もし悪魔の言うように、この石が”呑み込む”性質を持ってるんなら。
つまり、俺が今までやって来た魂奪取と言う行為そのものが、そう言うものだったとしたなら。
魂を奪う度に俺自身が強くなっていたと言う認識が、実は違っていたなら!
あるいは!
「そうだお前だ! お前がいたぁあ!」
「おいシンヤ何処へ行く!? ソッチはあの粒子が充満してるぞ!?」
お前の力を貸せ! カラス!
俺とお前で、世界を壊すぞ!
「起きろ! 俺と一緒に世界を壊そう、やれるな!」
『……――――』
「それで構わん。俺がお前になって、お前が俺になる。どちらが消えるでもないんだからな」
『――――』
「気前良いな。流石、闘争を求めるだけはあるぜッ!」
指輪を嵌めてる右手を握り、黒い機体の胸元を殴る!
瞬間、指輪が光輝いた。
「――俺とお前は一つの世界だ」
『――貴様は、私と一つだった』
「『思い出した――』」




