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ソウルダッシュ  作者: 転醒 廻実
スタートダッシュ ニ 煮え湯を飲まされる
24/80

第24話 N-EⅨ

 予想外に早い環奈の到着で、決着の時が早まってしまった。


 とりあえず、朝キッチリと起きて体操し、しっかり朝飯のブトゥルヤフ(野菜スープみたいなヤツと高野豆腐みたいな主食のセット)を喰って、EⅨ(エンドナイン)って所の在処を調べておいた。


 かつて世界を破壊せんとした力に、修正者と呼ばれる者が立ち向かい共に倒れた地らしい。この世界の現状を作り出したのが件の破壊者で、凡そ400年前にやって来たんだと。それらは今でも、そこの地中に眠っているとか。


「いちいちどっかで見たようなシチュエーションなんだよなぁ~……」


 まぁ、異世界は無限ともいえる数あるし。

 そう言うもんなんだろうな。


「おっし着いた」


 調査が済んだ後はミキに別れを告げて、翼式加速飛行ウィングブーストに乗って彼の地へやってきた。

 何やら歪な建物が見える場所で、そこかしこに瓦礫が埋もれておる。

 んで、その真っただ中に馬鹿正直にも腕組んで仁王立ちしているバカが一人。

 あそこまで馬鹿正直に佇んでいられたら流石に奇襲する事も出来ない、って言うか開けてる場所だから奇襲も何もあったもんじゃない。


「来たな、黒金剛石ブラックダイアモンド

「お望み通りだ、金緑変石アレキサンドライト

「昨日はお楽しみだったようで大変良かったな」

「お肌もつるつるよん」


 キュティーン。


 あっ、今イラっとしたコイツ。


「……本当に、お前は……」

「……そうだな、ここらでふざけるのは止めにしようか」

「ッ、ようやく真面目になってくれたようだな。今日が最後だ神条 神鵺、全力で来い」


「悪いがそれは出来ん」


「……ぇ……?」

「聞こえなかったか、出来ないと言ったんだ」

「……お前……まだ私の事からかって」

「元々お前を殺す事には抵抗があった」

「だったら、昨日のあの容赦無い銃撃は何だったんだよ!」

「ありゃお前、お前だって見られたくないとこ見られたら遂やっちゃうだろ」

「そ、そりゃそうだが……いや私は別に何もやましい事なんてしないからそんな事無いんだが、そうじゃなくてだ!」

「お前はどうなんだ環奈」

「えぅ……」

「初めに言ってたよな。不本意だ、って」

「……そりゃ、こんな急な形で突然殺せなんて言われて戸惑ったがよ……」

「俺だってな、全ての悪(アンラマユ)とか言われてるが、元々がただの一般人パブリックだ。こんな形でダチを殺したくはねぇ」


 あら、何やら反応が。


「…………神鵺……お前、今……」


 ……あー……そう言う事か。

 本当に俺と同じだったんだな。

 だったら心配無いか。


 俺は……。


「……お前とはもう暫く楽しみたいんだ。俺はな、環奈の事を友だと思ってるんだ」

「――ッ!」

「まぁそれでもやろうってんなら、抵抗ぐらいはするがね」

「……」

「さて、どうする環奈?」

「……神鵺……」

「俺を、殺すか?」

「神鵺! 私、お前の事……」

「決めるのはお前だ」

「ちょっと聞いてくれよ!? 何でちょっと嫌がらせ気味に挟むんだよ!?」

「……すんません」


 聞きたくないからわざと挟んでたんだが。

 まぁ気持ち分からなくは無いので大人しく聞きます。


「あぁ、もう……私昨日、てっきりお前が私の事友だと思ってなかったんだって思って……それで、ついカッとなっちまったっつうか、こう……殺したくないって気持ちが薄れて……でも今お前の話を聞いて、やっぱ友だったんだなって気付いてさ、したら、何だ、その……」

「……」


 あぁ~もうこの、コレ、無理。

 聞いてる俺も恥ずかしいんだけど恥ずかしがってる環奈の姿が可愛くてついニヤけちゃう。眼福ですわぁ~。


「笑うな気持ち悪い!!! もう止めた! 狩猟中止ハンティングリタイア!!」

「そか、良かった」

「うるっせぇ散々からかいやがってバカヤロウ!!!!」

「俺も狩猟中止ハンティングリタイアだ。こんなんやってられねぇってんだよな」


 はぁ~何とかなったっぽいわぁ~。

 と、思いたいんだよね。

 思いたいんだけどね。


 今になってアイツの貌が浮かんできた。


『そぉ~んな事許しませんよぉ~?』


 って言うか指輪からウィンドウで映し出して来やがった。

 やっぱ悪魔だわ、お前。


『しっかり目標ターゲットを殺して頂かなければ、元の世界へ返してあげません。元々私がゲートを自由に開けてるのも、貴方が魂をたくさん狩ってくれるからなんですからね?』

「俺と同じように魂を狩ってる狩猟者プレデターもいるだろうに、それで自由にゲートを開けるのがお前だけなのか」

『…………まぁ、お気づきでしょうけど。幾分か狩猟者プレデターの力をお借りしているのも事実ですよ。えぇ』

「その上空間掌握(ワールドマスター)持ちか、格が違うな」

『……何故こんな事をしたか、分かりますか』

「ぜーんぜん。何かしらクロウと一緒に企んでたんだろうって事は推測出来る」

『……ええ、そうですよ。貴方はまだ、力の100%も使い切れていない。死力を尽くした事が一度も無い。恐らくは今までの人生がそうだったんでしょうね。そんなに頑張らなくても何だか上手く行く体質で、いつも楽な事ばかり考えるんですよね。だからいつまでも成長しないで、周りの有難みにも気付かないで!』

『私情は挟むな、黒金剛石ブラックダイアモンドの契約者』


 あっ、クロウだ。


『貴様には極限の戦いをして貰いたかったのだ。それこそ、死力を尽くした戦いだ』

「それに丁度良い相手が、俺と環奈同士だったってわけだな」

『だがそれも出来ないと来た。ならば、仕方あるまい』

「クロウ……?」

『神条 神鵺、そして環奈様。此度の狩猟は、正式に中止とさせて頂きます』

「……!」

『しかし……模擬戦の途中で飛ばされた故、不完全燃焼でしょう』


 あっ、やっぱり?

 ソッチにシフトしちゃう?


『……そこで、黒金剛石ブラックダイアモンドの契約者たる私考えちゃいました』

「何を?」

「止めろ、どうせ碌な事じゃない」

『ええ碌でもありませんよ……狩猟者プレデター、貴方はこれまで、何度か命の危機を目の当たりにしてきたでしょう。その度に自分がしてきた事を、思い出して下さい』

「……悪魔、止めろ。お前が考えてる以上に悲惨な結末が待ってるだけだ」

『止めませんよ。これで貴方が死んだって、所詮その石に呑まれる程度の人だったって結果だけが残るんですから……!!』


 ……黒金剛石ブラックダイアモンドが、狩猟者プレデターを呑み込む?


「待て悪魔、説明しろ」

『クロウさん!』

「おい!」

『核を攻撃。異端者がいるぞ、バトリス』

「チッ、人の話を……」

「おい神鵺、何か嫌な気配を感じるぞ……!?」


 核って言うのは世界の核か。

 悪魔共が、一体何を目覚めさせようとしてやがる。


『この世界は、異端者の貴様に対し底の無い怒りを向ける。黒金剛石ブラックダイアモンド狩猟者プレデター、神条 神鵺。呑まれる事無くこれに打ち勝つ事が出来るか』

「テメェ環奈まで巻き込むつもりか……」

『環奈様はそこらの狩猟者プレデターと訳が違う。私は環奈様を全面的に肯定する。これしきで環奈様が死ぬなど有り得ん』

「絶対的な信頼だな」

『貴様に、極限の戦いを……』


 離れた場所で、砂塵が上がった。

 目に見える程の電気を迸らせながら、この世界の怒りが現れやがった。

 アレは……人型の、ロボット?


 武装ロボだと?


 これしきが?


「……神鵺油断するな」

「だが、情報を見ても特に驚異的な性能は……ッ!?」


 操縦席コックピットに、人が……いないだと!?

 おいこれ俺知ってるぞ!?


幻想機械ファンタズマ!? んな事あるか!?」

「何か知ってるのか?」


 あのロボゲーの機体じゃねぇかコイツ!?


「……そうか……そう言う事か、異世界にはこう言う事も有り得るのか」

「だから何だよ!」

「ここはゲームと似ている世界だ。特にあの機体は、俺の好きなゲームに出るような〔例外イレギュラー〕、主人公機だ」

「んっだっそりゃ!?」

「攻撃来るぞ!」


 《翼式加速飛行ウィングブースト》! 音速機動へ移行して《瞬間装備クイックイクイップ》! 超高音のエネルギー弾で装甲を溶かす!!


「相手は機械だ! 容赦無く叩き込め環奈!」

「オッケー!!」


 俺の銃撃と、環奈の重たい影攻撃で圧倒する。

 だが、おかしい。

 そんなに攻撃が効いてるような印象が無いのは何故だ?


「粒子アーマーも無いってのに、一体何が……」

「神鵺、これ砂だ!」

「砂ぁ!?」

「一瞬コアが見えた、ソイツと砂がある限りいくらでも再生しやがる!」


 なるほど、そう言う事か。

 コアには気づかんかったわ。隠蔽でもされていたかな。


「超高温だ神鵺! ありったけの熱量で溶かせ!」

「オッケー環奈、全力でここから離れろ!」

「っしゃぁ!」


 ロボの近く、半径1cm程の空間の原子速度を亜光速に書き換える。

 意思無い原子でも多少は抵抗されちまうが、無理矢理情報に従うよう踏ん張れば勝手に引っ張られる。


 俺も演算を終えて逃げ出すと、原子は空気抵抗を無視して突き進み、他の原子と接触する。やがて原子核同士がくっ付き、核融合が始まった。超高温のプラズマと化した原子は膨張し、半径約1km以上の範囲を消し飛ばす。


 俺達は、何とか被害圏から避難する事に成功した。


 火の手が収まった後、現場を確認すると軽いクレーターが出来ていた。


 あのロボは影も形も無し、文字通り消滅したな。


「……これしきで世界の怒りが収まるとも思えん、もっと苛烈になるだろうな」

「これ以上何が来るって言うんだ?」

「……EⅨ(エンドナイン)の次なるステージ……N(ネクスト)-(-)EⅨ(エンドナイン)だ」


 遠方から気配を感じ、その場を避けると爆撃が起こった。

 攻撃元にあるのは、これまた過去の兵器だ。

 全長2kmを超える、長距離砲を供えた超大型移動要塞。


 更に空から幾つもの円形機械が飛んで来た。

 クルクル回って、火の柱を噴くそれは、殺戮を目的とするものだと良く分かる。


 また別方向からは、足だけの生き物みたいな巨大機械がわんさか歩いて来やがる。

 おいおい、その向こうにあるのはまさか武装飛空艇か?


 最終兵器どんだけ積んで来るんだよ世界。

 あるもの全部詰め込みました感がハンパねぇな。


「神鵺ぁー!! この数は無理だろ流石に!!!」

「いや、実は攻略法を知っている。あの巨大要塞まで行くぞ」

「おっしゃぁ!! 勝機があるなら着いてくぜ!!!」

「置いてかれんなよ?」

「ほざけ! 私が速い!!」

「ほなお先」

「あっ、テメェ!?」


 超大型移動要塞、脅威なのはその長距離砲だが、近づいてしまえば所々にある迎撃用の兵器を壊すだけで事足りる。衝撃が内部まで行き渡って、活動限界に追い込まれればすってんコロリンちょっと。


「一丁上がりっ」

「案外脆いんだな!」

「次からは小細工が通用しねぇ。移動を止めずに、ヒットアンドアウェイでノーダメージクリア行くぞ」

「ドッチが多く壊せるか勝負だな!」


 まぁ何と言うか、疲れはするがそれほど苦戦するでもなく全部片づけた。

 やっぱ、所詮は機械。そんなもんだよな。


「ぜぇ……ぜぇ……つ、疲れるな……」

「はぁ~……これ以上何か来たら、ちょっとキツい……」


 とか言ってたら、来ちゃうんだよな。

 爆発と共に、謎の粒子が広がった。


「おい、神鵺がフラグ建てるから……」

「……あぁ~……これは、ヤバいな」


 かつて、世界を破滅へ導いた力。

 黒い機体に、漂う粒子。

 人の乗らないそれは、三度この世へ姿を現した。


「生身でアレと戦えって、毒沼に身体突っ込むようなもんだぞバカか」

「あの粒子、何か生理的に嫌なんだけど」

「離れろ、アレは俺らで太刀打ち出来るもんじゃねぇ」

「本気で殺す気だな、異世界ってのはそんなモンだが」


 とりあえず、逃げる。

 スピードは俺らの方が勝ってるようで、撒く事自体は難なく出来た。


「どうする、悪魔共はアレも壊さねぇと帰してくれそうに無いぞ」

「せめて粒子を少しでも軽減出来れば……あのゲームみたいに機械にでも乗って……」

「……そうか、それがあった」

「ん? 出来んのか?」

「最初に戦ったアレみたいな奴があれば良いんだろ? 探せばあるんじゃね?」

「……」


 こってり忘れちってたぜ。

 そりゃそうだ。あんな機械共がめいっぱいあるんだったら、人が乗れるヤツもあるだろ多分。


 情報操作で世界中探してみたら、何とヘルズの下層部に一機眠っているじゃーありませんか。


「よし、ヘルズに飛ぶか」

「だな!」

「んじゃ失礼」

「え? ひゃっ!?」


 コイツにはある役割を持ってもらうつもりだからな。

 少しでも疲れを減らす為に、お姫様抱っこで運ぶ。


「しししししし神鵺お前!? お前何!? 何やってんだ!?」

「何ってお姫様抱っこだが? された事無いんか」

「当たり前だろボケェ!? お前、神鵺お前、気取ってんじゃねぇよ!!? キザですら無いからナ!!! 私はまだ身体まで許したつもりは無いからな!!!」

「お子さんにゃぁせいぜいキスぐらいが妥当だろうな」

「じゃかぁしゃあ!!!」

「まぁ、頼りにしてんだぜ。お前が要なんだからな」

「……?」


 さてと、ヘルズへご到着だ。


「件の機械は下層だ、早いとこ……行けそうにねぇなぁこりゃ」

「何だお前ら? 邪魔するつもりなら殲滅するぞ?」


 ヘルズの住人共まで俺達への拒否反応を示すか。

 所詮は世界細胞の一つと言うわけだな、幻滅だぜ。


「……いや、行こうか」

「神鵺? 良いのかコイツら殺さないで」

「殺す価値もねぇよ。結局の所は世界に考えを操られてるだけの人形なんぞに、手を出す事もねぇ」


 生存本能は働くのか、取り囲みはしても襲い掛かろうとはしない。

 ハハッ、狭間で動けず立ち往生するか。勇敢な阿呆の一人でもいないのか?


 阿呆はいなかった。難なく下層へ辿り着いたぜ。

 ヘルズの尻とでも言うべき場所に、俺達の欲するブツがある。

 流石に下層まで来ると抵抗してくる輩もいたが、所詮は雑魚だ。

 《情報操作》で《支配ジャック》の上書きをし、殺し合いさせておく。

 そしてようやく目的地へ到着っと。


 げっ、今は会いたくない奴とエンカウントしてしまった。


「あれ!? 生きてる!?」

「ミキ……」


 屍戦士ゾンビアーミーミクラエル=ゲンフォード。

 ありとあらゆる武器を手足のように使い、どれだけ傷を負おうが動く事を止めない、死せる兵。


「シンヤ……お前は、何故このソウルを欲する」


 そう、件のブツとは、とあるロボの事だ。

 この世界にある数少ない人型兵器で、その原動力はこのヘルズを動かすための燃料にもなっている。言ってしまえば、強大な魂だ。動力部なんてのは半分嘘っぱち、補助動力と言う意味では事実動力部だが、本命はこれを隠すためのフェイクだったようだな。


「かつて、世界を破滅に導いた力。それを俺達で壊す」

「その為に、このヘルズの魂を奪うと言うのか?」

「そうだ。俺達は狩猟者プレデター、魂の略奪者だ」

「ならば、私を退けてから奪え。私は強くないが、負けはしないぞ」

「フンッ……待ってろ環奈。ゾンビ殺ししてくる」

「い、良いのか神鵺!? ソ、ソイツはお前と、その、な、仲良かったんじゃ……」


 ……考えてみれば、普通に人間としてやるべき事をやってないな。

 生き物と言うわけではあるが、それでも種としてのルールはあるわけだ。


「……うん、ちょっとノリで戦おうとしたけど普通にコッチのが良いわな」

「うん?」

「お願いします!」

「「えっ!?」」


 誠心誠意込めてお願いするのが当たり前だよな。


「俺達元の世界帰りたいんで! ヘルズの魂借りてもらって良いスか!」

「テメェふざけんなコラァアア!!?!?!? 何土下座してやがんだこのヘタレェ!!!!?」

「お願いします!! 終わったら利子付けて返すんで!! 貸して下さい!!」

「みっともねぇ真似してんじゃねぇ!!?」

「……」

「オッメーも真面目に考えんなよ!!? 揺らぐなよそれで!?」

「いや、私もノリでヘルズを守ろうとしてたが、よくよく考えたら別に故郷でもないしな、と思って」

「ぬがぁぁぁああああああああああぁぁああああああ!!!?!?!?」

「世界を破滅に導いた力と言えば、400年も前に現れたという未知の兵器じゃないか。寧ろ協力した方が面白そうだな」

「おーそうだな。ゾンビならあの粒子も効きづらそうだし、良いじゃん一緒に行こうぜ」

「では、是非」

「バカだろ!! 大バカだろお前ら!!!!!」

「「ああ、馬鹿だ」」


 さぁ、地獄の魂(ソウルヘルズ)N-EⅨ(終わりの先)へ連れて行こうじゃねぇか。


 俺達こそが、新たな破壊イレギュラーとなるんだ。

今日は特別大サービス!

続きがあるZE!!

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