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ソウルダッシュ  作者: 転醒 廻実
スタートダッシュ ニ 煮え湯を飲まされる
20/80

第20話 悪魔、裏切る?


 マギアからの召喚の日から三週間ほど経ったある日の事。


 悪魔が忽然と姿を消した。

 ご丁寧に過去記録ログの改竄までしていやがる。


「絶対何か起こる。俺の勘が告げている」

「奴の行きそうなとこなら大体検討付くが、まぁほっときゃ帰ってくるだろ」

「ほっといたら何か起こりそうで怖えぇんだよ!? 教えてくれ信!?」

「めんどくせー……あ、金積まれても無理だから」

「ぬぐぅ、この裏切り者……」


 一体全体どうしたと言うんだ。

 邸の皆も悪魔の事なんざ知らないの一点張りだし事実何も知らないみたいだし。信には情報操作で何知ってるか探ろうとしても抵抗レジストされてしまうし。


 俺何かしたか。

 それとも会社で大事な会議でもあんのか。


 何か落ち着かない。

 資格試験も近いってのに調子狂わせやがってアイツ。


「……オクマさんに聞いてみるか」


 連絡してみると、マギアでの一件以来悪魔は見ていないらしい。

 他の悪魔も言うに、マジで何処かに消えてしまったようで。


『もしかしたら、他の狩猟者プレデターに捕まっちゃったのかしらねぇ』

「自分で痕跡を消しながら? その線は無いでしょう」

『そうだ、あの子に聞いてみたら? アレキサンドライトの』

「環奈? そういやまだ聞いてなかったわ」

『ふふっ、あの子、貴方の事気になってるみたいよ? モテモテね』

「嬉しくねーっス。んじゃ、あざっした」

『今度うちの子達持ってきてね。そろそろメンテナンスしたいから』

「うぃーっす。さて、何か知ってるかなーっと」


 連絡してみたら、環奈んとこに行ってる事が分かった。

 何故よりによって環奈の近くなんだ。


「暫くコッチにいたいーってんでな」

「それで入れたんか……何て言うかうちの悪魔が迷惑掛けました」

「良いって良いって! 他ならないお前の悪魔だからな!」

「あざっす。直ぐ迎えに行きますんで」

「おーう、コッチからも伝え――ちょっ!?」

「……切れた」


 悪魔の奴、一体何をしてやがるんだ。



=== 緊急訪問アージャント・ゴー ===


「オラ帰るぞ!」

「いやぁーだぁー!!」

「迷惑掛けんなガキかオメーは! とっとと離れろその柱から!」

「いぃーやぁーだぁー!!!」


 環奈の家へお邪魔すると、悪魔が隠れていた。

 必死のかくれんぼの末、何とか捕まえる事が出来たんだが……柱に引っ掴んでそのまま膠着状態だ。


 羽でももいでやろうと思ったが、流石に自重した。


「大体何で急に家出なんてした。何か嫌な事でもあったのか」

狩猟者プレデターには関係の無い事ですぅ! 良いから離して下さい!」

「離すのはソッチだ柱壊したら弁償もんだろ!」

「良いじゃないですかほんの30万ぐらい!」

「額の問題じゃねぇんだっつぅーのこのガキ!!」


 あぁくそダメだ。いくら言ってもまるで聞きやしねぇ。

 何だってんだよまったく。


「その辺で良いんじゃねぇか神鵺? この悪魔、何か隠してやってるそうだし」

「ちょっ! カンナさん、それは言わない約束!」

「ほう」

「な、何よ……」

「俺の嫌な予感の正体はソイツか、何かやろうとしてまたドジると見た」

「ッ……!」


 あれ、何か地雷踏んだ?


「何なんですかドジドジドジって! 貴方には関係の無い事なんですからほっといて下さい! 狩猟者プレデターのばぁーか!!!」

「バカってお前……ぬぉっ!?」


 首根っこ掴まれちまった。


 見上げれば、スーツ姿の男が立っていた。

 漆黒を映した鴉のような男。


 なるほど、コイツが環奈の悪魔か。


「悪いが我慢の限界だ。女の行方を探り、その気を知りもしないで連れ戻そうなど言語道断。く去るが良い」

「……チッ、わぁーったよ」


 悪魔の癖して常識人かよ。

 本当悪魔って謎だな。


「スッキリしてねぇな、バトるか神鵺」

「なじぇばとぅる?」

「バトルは良い、余計な事を考えずに済む」

「なるほど、一理ある」


 たまにゃぁそれも良いか。

 一回環奈と戦ってみたかったし。


「つーわけで行って来るわ」

「ハッ。くれぐれも、お気を付けて」

「うん?」


 案内されるまま地下へ行くと、高速エレベーターでどっかへ飛んで行った。


 その先は、何とめちゃくちゃ広い修練場。

 Sドームの何百倍あるんだこれ。

 って言うかこの不自然な広さ、これ、隔離世じゃねぇか。


「互いに命までは取らない、軽い模擬戦だ」

「レギュレーションは?」

「特に無し! 殺さない程度でスポーツマンシップに則らず楽しもう!」


 コイツもコイツで、知らない事の方が多いんだよな。

 ここらで環奈の事、せめて何を武器にしたのかぐらいは知りたい。


「おうけぃ」

「バトル開始まで」

「五秒前」



    ≫ 3 ≪

   ≫ 2 ≪

  ≫ 1 ≪


≫ Go!! ≪




 開始と共に両者接敵、互いに打撃ラッシュで攻防拮抗クロスファイトへ。


 衝撃で床がボコボコへこみやがる。


「速いじゃねぇか! 私の速さに追い付いて来れたのは、お前が初めてだ!」

「伊達に世界滅ぼしてないぜ! 俺の魂獲得数は100億を超えた、塵も積もれば山と成るってなぁ!」


 重い一撃を三発ぶつけ合い、高速機動戦へ。

 俺が《翼式加速飛行ウィングブースト》で飛んでるのに対し、環奈は単純に脚で追い付いて来てやがる。流石、先輩!


「ゥワンッ! トゥ! スリィ!」

「フォウ! ファイ! スィックス!」

「「セブァン!」」


 《瞬間装備クイックイクイップ》!


 ウルネラとアルバロに負のエネルギーを送り込んで、フルオートでブッ放す!


「ははっ! 当たらねぇよ!」

「それは、どうかね?」


 負って言うのは、熱的負(マイナス温度)って事だぜ!


「んなっ!?」


 環奈を取り囲む様に氷の柱が立ち並び、行く手を阻む。


 袋小路へ追い詰めた所で、足にHit!

 凍り付いて動きを止める事に成功!


「ぐぅ、テメェ!」


 取った!

 連続キックキックキックキックキックキィック!


 素直に受ければ、寒い思いせずに済むぜ!


「真っ正面からの潰し合いだけがバトルじゃねぇ! スマートな戦いこそがカッコいいんだぜ!」

「それでも! 私は真正面が好きだ!」


 うおっ、自力で凍結フリーズを解除しやがった!?


 クッ、フフ、ンンヌ゛ゥハハハハハハハハ!!

 やっぱお前は最高だ環奈!!


「ならやって見せろォ!!」

「うぉおおぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 広大なフィールドが、瞬く間にボロボロになっていく。

 物理法則を無視し、音速を超えて尚も衝撃波に体を引き裂かれる事無くぶつかり合う二つの影。


 やがて被害は全域へ渡り、遂にフィールドが壊れ、深い闇の見える隔離世全体へと戦闘区域が広がった。


「ヌ゛ハハハハハハハハハハ!!!」

「アッハハ!! 楽しいなぁ神鵺!!」

「軽い模擬戦でこれだけの力! じゃれ合いで施設が壊れるとはな、やっぱ楽しいぜ狩猟者プレデター!!!」





 俺は、調子に乗っていたんだろうな。


 強大な力を手にしたと再確認し、喜び興奮していた。油断してしまった、悪魔の罠に嵌まっちまったんだ。


 アイツの持つ”あの能力”は、本当に上位の能力だったんだ。

 俺は、お前を侮っていたようだな。


「はぇ?」

「んぁ?」


 突然(ゲート)が開いた。

 いや、ゲートと言うよりは、俺らを囲む様に展開された世界の歪みだ。


「「うぉぉぉぉぁぁぁあああああああああああ!!?!?!?!?」」


 お約束の様に、吸い込まれちまった。




…………

………

……






「……馬鹿……本当に馬鹿」


 二人の様子を《情報操作》による映像で見ていた悪魔が、苦い顔でそう呟いた。

 その隣にいるのは、環奈の契約者クロウ。


「だが、あの石の力は本物だ」

「……出来るんですか……?」

「環奈様は金緑変石アレキサンドライトだ。であれば、あの男とも渡り合える。私は環奈様を全面的に肯定する。その環奈様が認めるに値するならば、あの男に信用程度は抱く所存」

「……良いなぁ、クロウさん。名前まで付けてもらって」

「フンッ……計画は始動した」


 映像は俯瞰図へ変わり、ある二点を指し示す。


「神条 神鵺に、極限の戦いを」

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