第18話 超越脳力 覚醒
優が空いている手でフェイの手を取ると、二人の姿が輝いて、やがて一つになった。
残ったのは、優。
二つの存在が一つにまとまった事で、より強固な存在となった。
《情報操作》で見てみると、コイツにも能力が備わったようだ。
《超越脳力》、洒落のつもりかこれ?
「どうだ優、視えるか?」
「うん、視える! 神鵺君、”神様”は殺しちゃダメ!」
「おぉっと詰み宣言!?」
「違う、これからブレイクを発動する」
「ブレイク?」
一体何する気だ。
「希望する未来、せめて誰か一人でも、本当の幸せを見出せる未来を、演算で導き出す!」
「ッ!? 優止めろ! お前のそれは脳処理が追いつかない技だ、今すぐ中止しろ! 熱中症で死ぬぞ! 優!」
「ぐぅぅぅ……出力完了! 言ったでしょ、”貴方と一緒に元の世界へ帰る”って!」
「……優……鼻血出てるし充血酷いじゃねぇか。無茶しやがってこの馬鹿」
「神鵺君、今すぐフェルミーの元へ!」
「なるほど、お前はソイツを選んだか」
おっと、人形が追い付いて来ちまったか。
「んじゃ、掴まってろ!」
「うん!」
《翼式加速飛行》!
=== 世界の滅ぶ時 ===
ライドシューティングも真っ青な空中銃撃戦を繰り広げながら、優の作戦を聞いた。至極単純、一瞬の内にマギアを木っ端微塵にしてしまう事が最善の滅亡方法らしい。で、その為の機材は用意出来るんだと。何だ、圧倒的な火力で焼き払うなんて事出来たのか。
「それで、どうやってフェルミーに幸せになってもらうんだ?」
「彼は今の絶望に囚われて、愛を忘れてる! だから思い出させるの! 家族の愛を!」
「どうやって」
「言葉で伝えれば良い!」
「なるほど簡単な事だ」
そうこう言ってるうちに、フェルミーの元へ辿り着いた。
「一体何をしているんだ君達は! 世界の滅亡はまだか!」
「あと半日程持ち堪えるんだ、そうすりゃ最高の滅亡が見られるぜ!」
「一緒に来て下さい、マスター!」
「はぁ? 世界を殺す方法が確立したなら、って、おい!? 何を!? うわぁぁぁああああぁぁああああ!!?!?!?」
俺がフェルミーに抱き着き、3人仲良く飛び回る。
いや、フェイを含めた4人だな。
《翼式加速飛行》の翼を拡大し、機動力を高める。
2人にウルネラとアルバロを持たせて、敵の迎撃に集中してもらう。そして俺は、二人を持って飛び回る。
そうこうして、2回ほど休憩を挟みながらの逃亡を続けていると。
ようやくオペレーターから連絡だ。
『こちら悪魔。狩猟者、腕は無事ですか?』
「こちら狩猟者! 五体満足どころか優が覚醒した!」
『えっ、2時間で何があったの』
「こっちじゃ40時間だド阿呆! オクマさんに連絡して、とにかく威力の高い爆弾をありったけ買って来い! 星一つ壊せる程の大火力だ! 今すぐ!」
『30兆は飛びますよそれ!?』
「構わん! 派手にやってやろうぜ!」
『まぁ星一つ壊せばSランクは確定だし、10兆は帰って来るか。りょうかーい』
おっと、フェルミーの奴驚いてる。
「何だってそんな大がかりな、神を殺すんじゃなかったのか!?」
「神はこの世界の住人ほとんどが宿してる。ソイツの正体は、超高速で伝達する強力なミーム汚染。『幸せ』って言う名の巨大な情報生命体、ウィルスだ」
「そ、そんな事があるのか? まさか、あの塔にあるのは……」
「僅かに科学文明の残滓を感じた。あの塔にあるのは、多分隠蔽された科学文明の産物だよ。壊してしまえば、ウィルスが一斉拡散されて5分後暴走、突然変異を起こして皆理性の無い化物になっちゃう」
「……そうか……一気に全て吹き飛ばしてしまう事が、最善手だったのか」
「そう言うこった」
さてと、準備が整ったようだな。
『世界を滅ぼした後は、世界そのものを文字通り壊す、ですか。本当に、貴方の考える事は恐ろしいですねぇ』
「これを考え付いたのは優だぜ」
『やだ人間怖い』
「ああ、いつだって人間は怖いものだ」
『まぁ良いです。今そっちでオクマさんが爆弾の設置してますから、起爆カウントダウンが始まったら直ぐ門でこちらへ』
「いいや悪魔、ギリギリまで世界の破壊を見せたいヤツがいるんだ」
『その青年ですか? ……あー、はいはい』
「出来るか?」
『今オクマさんに繋げますね?』
『ハァーイ。スウィートデヴィルをご利用頂いてありがとうシンヤ。デッカい花火を見せたい男がいるって? アナタも好きね。そう言う事なら調整しておくわ。3分くらいで終わっちゃうけど、最高のショーをお見せして あ げ る 』
ゾクゥ。
「……一体何でそこまでして……」
「お前の絶望がいかにちっちぇーモンか分からせてやりたかったんだ」
「何?」
「言葉ではこう言ってるけど、貴方に思い出して欲しいんです。家族の愛を。絶望にも負けない、貴方の幸せを」
「幸せだと? 僕にはもう家族なんていないし、どうやったって戻って来る事も無い。これ以上僕の心に傷を付けてどうしようって言うんだ」
「直ぐに分かる」
起爆カウントダウンが始まった。
残り10秒。
「さぁさお待たせしましたマギアの皆様!! 世界の終わりを、とくと楽しんでっていきやがれボケェエ!!! 着火ぁ!!!」
世界が終わりを迎え始めた。
街中で大爆発が起こり、瓦礫や車、人々の破片が飛び散っていった。
連鎖的に爆発は広まり、魔力と混ざり合って綺麗な火花を散らせる。
やがてそれは五条へ広がり、星中に広がって行く。
「……マギアが……壊れていく……」
「ウッヒョォ~綺麗だなぁ」
「……何だか儚いね……」
飛び上がったビル4棟が、ロケット式に爆発して花火になった。
鼠花火のような煙が渦巻き、色とりどりの花を咲かせる。
塔が下から順に爆発し、轟々と音を立てて崩れて往く。
「……僕は……僕は、ただ、本当に家族が好きだった。大好きだった」
おっ、懺悔の時間だな。
「誰に殺されたでもない、ただの不幸な事故で死んで、悲しい事に誰も気づいてくれなくて……直ぐ他の幸せがどうって……僕は、僕はただ……」
「……幸せだったんだな。他では埋められないほど」
「あぁ……ああ……!! 僕は、この世界で一番の……幸せ者だった……!!! それだけで十分!! 幸せだったんだぁぁあああああああ!!!!!!!!」
あら、自分から飛び込んだか。
「皆ぁぁああああああああああ!!!! 僕は今でも!!! 皆の事が!!! 大好きだぁぁぁああああああああああああ!!!!!」
……嗚呼、そうだ。
世界への叛逆なんて考えても仕方無いんだ。
お前は、ただ大好きだった家族の事を、忘れないでやれてるだけで十分だったんだよ。
そして最後には、まん丸い純粋なエネルギーの固まりが広がり、そして縮む。
『マギア、崩壊爆発まで残り1分! 隔離世の用意OK、門開通! って、青年は!?』
「一緒に殺すって契約だったからな」
「……フェルミー……」
『と、ともかく早くこちらへ!』
「おう」
あばよ、フェルムエール。
お前が召喚してくれたお陰で、俺ちょっと成長したわ。
俺達が隔離世へ避難した後。
等間隔で設置された超規格水素爆弾も一斉に起爆され、100メガトンを余裕で越える破壊力の衝撃が星を覆った。そして内核に投下された(謎技術の)核融合爆弾が作動し、衝撃が星全体へ行き渡る。核融合は止まらず、物質同士がぶつかり合う事でドンドン反応は超大になっていく。やがて星は、火へと変わった。
しかし所詮は地球と同じ程度の大きさ。質量は太陽に劣る。エネルギーに変換されるだけの物質を使い果たす前に、核融合反応は止まる。これからは、長い、そう、本当に長い年月を掛けて冷え固まっていくんだ。これを、星の死と言う。
「お休みなさい」




