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ソウルダッシュ  作者: 転醒 廻実
スタートダッシュ ハ 掃き溜めに鶴
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第15話 トラブラー


 優の貞操を守り、その後は足立姉妹と合流してゲーセンの各種対戦ゲームでボロクソに負かしてやる事で仕置きを済ませた。奴ら腕に自信はあるが、故に負けるとすっごく落ち込むんだ。無断欠勤なんぞしよるからそうなるんだ馬鹿共め。


 姉妹が立ち直った後は擬似楽器ゲー、ガンシューティング、レーシングにクレーンやらで和気藹々と楽しんだ。さきほどはデートの方が大事だったが、割り切って遊ぶとやっぱコッチの方が良いらしい。優の奴、自分じゃ気付いてないが、笑顔の質が5ランクアップしてる。


 彼女の機嫌取りって大変だが、慣れると楽しいもんだな。


 ……いや、何か違う。男女の関係って初めはもっとこう互いに恥じらうような初々しいモノだったはず。って事は、何てこった。俺は間違った男女交際上の接し方をしてしまったのか。正解ばかり見詰める脳はこう言う時偶にキズなんだよなぁ悔しいっ。まぁ優は楽しそうにしてたから良いか。


 さて、そうこうしてたら日が暮れてきた。


「っはぁ~楽しかったぁ~!」

「はふっ、っぬぁぁぁ……ッあぁー久し振りに外で遊んだわぁ」

「ご主人、感想がオヤジ」「いつもは椅子に座ってパソコンカタカタしてるからね!」

「うるせー。そろそろ飯だが、何処で喰おうか」

「お寿司を」「焼肉ッ!!」「近場が良いかな」

「だったら良い場所を知ってる。食べ放題レストランだ」

「「「た……食べ放題……!」」」


 肉に野菜、魚介に穀物。寿司に拉麺にカレーにその他諸々いっぺんに喰えると言えば食べ放題レストラン!


 好きなモン喰わせて飲ませて! 俺もたらふく喰って飲んで!


 料金6520円! やっすぅい!!

 環奈に奢った時を思うと最早100円感覚!

 世の大人ってこんな感じで外食喰ってんのか! フッフゥー!!


「喰ったぁ~」

「お腹いっぱい食べちゃいましたね」

「従業員に充実した休暇を与える。今日だけならば良い雇い主です」

「これが全ての悪(アンラマユ)なんて、知らない人が聞いても絶対信じないよね! 余計性質悪い!」

「おめーらだけバス乗らせねーぞコラ」

「「すいませんでした」」

「よろしい」


 そんなわけで、良い時間なのでそろそろ帰る事にした。

 ゲートは使わず、バスでゆったりとだ。まぁた何て言うか、疲れたんだろうな、皆寝ちまった。所定のバス停で起こして降り、徒歩で街を外れ、木々の立ち並ぶ道を辿って邸へ帰って来た。


 信への仕置きは明日やる事にして、まだ彼氏でいられる今は優とゆっくりしよう。何と自室へ来て欲しいと言い出したのだ。しかもコイツ、何か……何か用意してるし。え、酒? お前酒飲むの? マジ? 未成年いる前でそれ取り出すってちょっと注意散漫過ぎない?


「大丈夫、ジュースも用意してるよ」


 あぁ、そう。

 今更だが口調も完全に素が出てるなこれ。別に構わんが。


「紛れ込ませて飲ませるとか止めてくんさいね流石にコッチじゃ法律に逆らいたくないんで」

「分かってる。ガラナ飲料が好きなんだよね、はい」

「そうそこれこのカフェイン量と不思議な味がたまらなく好きなんだぁ俺北海道に産まれて良かったわぁ」

「ふふっ……明日の午前0時まで、あと1時間弱。一緒に飲もう」


 色々と話し込んで、ジュース飲んで……人と接するのってこんな楽しい事だったのか。優の事を知って、俺の隠してる所も少しだけ知ってもらって。なるほどこれは、心地良いものだな。


「あぁ、あと3分か……」

「うぇぇぇ……もうそんな時間……?」


 酒で上機嫌になっていた優も、タイムリミットを知るとちょっと嫌な顔する。


「一昨日もカウントダウンが起こってたな。爺との決着」

「ぅー……」

「……ん?」


 眠たげな目線で此方を睨め付ける優。

 その姿勢は、獲物を前にした山猫のようでもあった。


「んにゅんっ!」

「ッ!」


 一瞬悟るのが遅れてしまった。押し倒された。

 あぁあぁジュース零れてんじゃねぇか掃除するのお前なんだぞ?


「神鵺君……お願いして良い……?」

「何だ」

「……その……最後に、キス……良い……かな」

「……」


 なぁ~んちゅうはぁずかしい事聞いてくれちゃってんの優お姉ちゃん。

 俺ちょっと顔紅くなっちゃったんだけど。ねぇ。

 この方女性経験なんて無いのでドキンとしちゃったんだけど?


「したいんか、キス?」

「……折角なら、したい……」

「だったらどうすれば良い?」

「……」


 ゆっくりと顔が近づいて来る。

 そこそこ整った顔立ちには、日本人女性特有の可憐さを感じる。改めて見てみると、告る男子の気持ちも分からなく無い。


 荒めの息が顔に掛かる、酒臭い。


 目を瞑って、少し口を尖らせた。

 初めてのキスを待って。








《強制召喚システム、起動》


「んっ!?」

「? 神鵺君……?」


 頭の中にアナウンスが響いた。


《目標地点、異世界。魔法文明確立世界マギア。直ちに実行可能状態へ移ります》


 情報操作も用いずに聞こえてくる声は、感情の無いシステムメッセージ。それがこんな事を言ってるとすれば……俺は、このあと。


 異世界に飛ばされる!?


「すまん!」

「やっ!?」


 優を突き飛ばした。その直後、予想通り、俺のいる床に光る模様が浮かび上がって回り始めた。強制召喚の準備が始まったんだ。


「悪魔ぁ聞こえるかぁ! 強制召喚される! 俺を見逃すな!」

『ご心配無くー! 指輪がGPSみたいなものなので、二時間あれば居場所を特定出来ますよー!』

「だったらオーケー!」

「し、神鵺君……ッ!?」


 優は頭を打ったりしてないようだ。良かった。

 これで一緒に召喚されるなんて事は無いだろう。


「ま、待って! 私も!」

「おい!?」


 ちょ、お前入って来んな!?

 何のために突き飛ばしたと思ってんだド阿呆!?


「声が聞こえたの! 女の子の声が!」

「酒のせいだと思わないのか、そして本物だとして少しは疑え、んな呼び声! 向こうで何が起こるか……」


《実行可能状態に入りました。開始10秒前》


「あぁもうめんどせぇな!」

「ひゃうんっ!?」


 仕方無ぇ、別々の場所に行かないようガッシリ抱き付いておくか。体格差の関係上顔に胸が当たるが、我慢して貰おう。


「ぜってぇ離れんなよ優! 良いな!」

「ぅ、うん!」


《 3 2 1 》

「《召喚開始》!」


 午前0時。


 光に包まれて、俺達は部屋から消えた。


 後に残ったのは、数本の空き缶と零れたジュースだけだった。

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