表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色と虹  作者: あやね
第一章 赤い鳥の目覚め

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

04 特別授業

 爽やかな朝!とまではいかないどんよりした空模様。

 雨は…降りそうにないかな。

 そんな天候に相応しい、不穏な空気が教室内には漂っていた。

 分かりやすく言うと視線が痛い。

 なんでかなー?なんでそんな睨まれてるのかなー?心当たりしかないけども?


 そう。この後待ち受けている運命を想えば、この程度の視線攻撃など痛くも痒くもない。

 とりあえず堂々としとこう。

 え?何?なーんにもしてないし、知らないけど?という態度をとる。

 ハッタリかますのも大事だ。

 こうしてると本当に、「あ、あれ?アイツ悪くないんじゃない?」と錯覚する奴も現れるから面白い。


 さてさて…


「レイ…なんでお前はそんなに平然としてられるんだ?」


 元気のないアルドル。落ち込んだり怒ったり、また落ち込んだりと感情の波がせわしない奴だ。

 まぁそんなとこがコイツの良いところでもあるんだが。


「今更どうしようが変わらないしな?」


「そ、そうだよな…」


 そんなやりとりをしていると、リゼ先生が入室してきた。

 朝礼が始まる。

 淡々と連絡事項を告げられる。

 本日のタスクは講義と模擬訓練のみだ。

 今日もきっといつもとそう変わらない日常か。

 そんなことを考えていると、教官の話は終わったようだ。


「では朝礼は以上です。それと分かっていると思いますが、レイとアルドルは今から訓練室へ来るように。」


「え…?今から模擬訓練の授業ですよ?」


 アルドルが問う。

 そうだそうだ!授業を公式にサボってもいいってのか?

 とアルドルに加勢しようとしたら、先生は笑顔で答えた。

 整った容姿の女性のその笑顔に一瞬ドキッとするが、よくよく見ると凍りつきそうな笑顔だ。

 なぜそんな表情が出来るのだろう。

 教室の温度が10℃程下がったような気がした。


「だから、今から、私が君達を直々に教育するのです。特別授業です。ただで済むと思わないように。それとも何か反論でも?」


「「いえ!!ありません!特別授業お願いします!」」


 よし。悪あがきはやめよう。

 さっさと済ませるか。


 ___________________________


 特別訓練室にて。

 そこには多種多様の武器が並べられている。

 最初に扱い方を学ぶ警杖の他に、殺傷能力はない模造の刀やナイフ、拳銃などがある。

 実際の任務では相手がどのような武器を所持していても対応できるよう訓練を行う。

 また地形や障害物を利用した戦闘方法も学ぶ。

 制圧術と言っても、流派や型が決まっているわけではない。

 武器や武術、体術を自身の最適なスタイルで組み合わせ構築する。

 警護団員には武器を一切使わず、己の肉体のみで制圧術を極めた者もいるとか…。


「好きな武器をとり、力を合わせて私を制圧しなさい。」


 いくら何でも侮りすぎだろうと思ったが、すぐにその実力差に俺達は打ちのめされることになった。


 リゼ先生の手数は異常な程に多い。

 短警杖、模造銃、模造刀、体術を組み合わせ猛攻を仕掛けてくる。


 速すぎる…。

 あのレイでもってしても対応しきれずにいる。

 俺も軌道や地形を意識し、相手の動きを計算しているが、リゼ先生のそれはなんというか別次元だ。

 言ってみればこちらが1ターン行動を取るのに対して、3ターン行動されているような感覚だ。

 それに先読みした遅効性の攻撃もあり、もう本当に何をされているのか分からない。


 一方的な蹂躙。

 それでもなんとか食らいついたつもりだったが、ふと先生が懐にいることに気付いた時には遅かった。

 右顎に衝撃が走り、脳が揺れる。

 俺は脚に力が入らなくなりダウンした。


 _________________


 末恐ろしい。

 リゼはそう思った。

 どの武器の扱いも体術も一流。

 アカデミー時代は彼女に敵うものなどいなかった。

 “美しい怪物”などと不本意な異名もつけられたが、そんなことはどうでもいいと彼女の関心は強さを追い求めることだけだった。

 今期のアカデミー生の教官を務める話が降りかかったのが不満だった理由は、退屈だと思ったからだ。

 まだまだ強さを磨きたいのに、何故その逆のことをしなければならないのか。

 問題児の制圧などワケもない。

 そう考えていたリゼだが、今は…。


 リゼは左手に短警杖で防御と攻撃、右手は刀や銃で中距離攻撃という基本スタイル。

 銃を撃ち、相手の回避方向へ先回りし警杖や刀で攻撃。

 また隙があれば体術攻撃を加える。

 場合によっては武器を手放すフェイント。

 警杖や刀も投げつける事で、回避や防御行動などの選択肢を奪いつつヒットを狙う。

 多様な攻撃性と命中精度の高さ、また彼女の小柄な体型は素早く移動することで姿をくらませやすく、相手の不覚をとることにも有利だ。


 レイとアルドルの二人を相手取っても瞬殺出来るとリゼは考えていた。

 実際にアカデミー時代も多対一の戦闘において、ダメージを食らわず制圧したこともある。

 いくら問題児だろうと取るに足らないと考えた。


 本来この特別授業の目的は、完膚無きまでに打ちのめすとこで圧倒的な実力差を体に理解させることなのである。

 しかし二人は食らいついてきた。


 まずはアルドル。

 大きな体躯から放たれる攻撃はその一つ一つが強烈だ。攻撃の軌道も悪くない。

 そして何より並の人間であればダウンするはずの攻撃をものともしない耐久力だ。


 実はアルドルの入学時の模擬戦の様子を見ていたリゼ。

 その時のただ力任せの単調な攻撃でもって相手を制圧していた。

 また彼は怒りの権化のような、”信じられる者は自分だけ”とでも言うような雰囲気だったが…。

 今の彼は大分成長したものだとリゼは感心した。


 そしてレイ。

 この子の反応速度は異常だ。

 何者も追う事が敵わない自身の動きを完全に捉えている。

 また器用さもある。

 二人ともまだ警杖の使い方がワンパターンだが、レイに至っては自身の技能を吸収して戦闘開始時より格段に動きが向上している。

 何より戦闘中に軽口を叩いてくる、その余裕さ(ハッタリだろうが)にも驚いた。


 おそらくアルドルの成長にはレイが関与しているのだろう。

 そう思うと先日の出来事に対する怒りも薄れてくる。


 面白くなってきた。

 リゼは退屈だと決めつけていた日常へ光が差し込んできたような感覚になった。

 そしてレイに最大数の銃弾攻撃と刀と警杖を多方向から投擲後、隠し置いておいた長警杖を拾うと最大限の速度でレイの足元へなぎ払いを放つ。

 バランスを崩したレイはリゼに顎を小突かれダウンした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ