↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色と虹  作者: あやね
第一章 赤い鳥の目覚め

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/20

04 特別授業

 爽やかな朝!とまではいかない、どんよりした空模様。雨は…降りそうにないかな?そんな天候に相応しい、不穏な空気が教室内には漂っていた(オレ視点)。分かりやすく言うとオレに向けられる視線が痛い。


 なんでかな?なんでそんな睨まれてるんでしょうかね?まぁ心当たりしかないんだけど。


 そう。この後待ち受けている運命を想えば、この程度の視線攻撃など痛くも痒くもない。とりあえず堂々としとこう。


 何もしてないし、何も知らないけど?という態度で、深く椅子に座る。ハッタリかますのだって大事だ。

 こうしてると本当に、「あ、あれ?アイツ、実は悪くないんじゃない?」と錯覚する奴も現れるから面白い。


 でもそんなオレの演技を邪魔するように大男が乱入する。


「レイ…なんでお前はそんなに平然としてられるんだ?」


 昨日同様元気のないアルドルがヌッと現れる。落ち込んだり怒ったり、また落ち込んだりと感情の波がせわしない奴だ。まぁそんなところがアルドルの持ち味でもある。


「逆にアルドルはなんでそんなヘコんでんの?」


「昨日寮に帰ったらよ。寮母さんがブチ切れてて…。1時間くらい説教されたんだよ。んで最後には『お前、明日やべぇからな!』って言われて…。」


 寮母さんはおそらく先生から色々注意を受けたのだろう。そりゃ寮母さんは全く悪くないから怒るのも当然だ。アルドル君、反省しなさい。


「まぁ今更何やったって変わらないしさ。とりあえずそのやべぇ時が来たら、そん時に考えればいいんじゃねぇの?」


「そ、そうだよな!さすが、レイは頼りになるぜ!」


 そんなやりとりをしていると、リゼ先生が入室してきた。皆急いで自分の席へ戻る。そして先生は教壇に立ち朝礼が始まる。淡々と本日のタスク内容や連絡事項を告げられる。タスクは講義と模擬訓練のみだ。今日もきっといつもとそう変わらない日常かな。そんなことを考えているうちに、朝礼は終わったようだ。


「朝礼は以上です。それと…分かっていると思いますが、レイとアルドルは今から訓練室へ来るように。」


「え…?今から模擬訓練の授業ですよ?」


 オレも意味が分からないが、先にアルドルが先生へ質問した。

 大切なオレ達の訓練を先生の都合で奪ってもいいってのか?そんなの横暴ダ!

 とアルドルに加勢しようとオレは立ち上がった。そして有無を言わさない笑顔で先生は答える。リゼ先生は色白の美人だけど、普段表情を動かすことはあまりない。そんな先生の笑顔に一瞬ドキッとして見惚れてしまうが、その笑顔に温かみはない。むしろ凍りつきそうな殺気を放っている。なぜそんな表情が出来るのだろう。教室の温度が10℃程下がったような気がした。


「だから、今から、私があなた達を直々に教育するのです。良いですか?これは特別授業です。ただで済むと思わないように。二度と生意気な態度がとれないようにしてあげますので。まだ何か質問がありますか?」


「「いえ!!ありません!特別授業お願いします!」」


 よし。悪あがきはやめて、特別授業とやらをさっさと済ませるか。要はリゼ先生に勝てば良い話だ。


 ________________


 特別訓練室内のフィールド上でオレとアルドル、先生はそれぞれ数mの間合いをとった。


 特別訓練室はアカデミー上級生や団員が訓練のため使用する本格的な模擬訓練場となっている。つまりオレ達みたいな”ひよっこ”が立ち入ることはない場所だ。

 ここには多種多様の武器が配備されている。オレ達が使用している長警杖の他に短めの警杖、殺傷能力はない模造刀や剣、ナイフ、拳銃などがある。実際の任務では相手がどのような武器を所持している場合、また地形や障害物を利用した戦闘方法も想定し、沼地や砂地、森林を模したフィールドなど、高度な戦闘能力向上訓練が可能なんだと先生は説明してくれた。

 制圧術には流派や型は特にない。武器や武術、体術を自身の最適なスタイルで組み合わせ構築する。このような訓練を経て、自身の戦闘スキルを磨いている。警護団員には武器を一切使わず、己の肉体のみで制圧術を極めた者もいるらしい。


 今回のおしおきのため、先生はこの訓練室を終日貸し切りとしたらしい。職権乱用すぎる。きっとオレ達をとことん分からせるためなんだろうが、この訓練場のフィールドに立ち、何故かワクワクしてしまう自分もいる。

 先生は凛とした口調で命令する。


「好きな武器をとってください。二人同時で構いません。力を合わせて私を制圧してみなさい。」


 いやいや、いくら何でもナメすぎだろ、と思ったが、すぐにその実力差に俺達は打ちのめされることになった。


 オレとアルドルが警杖を構えたのを、確認した先生はふぅ…と呼吸を整える、と思ったら姿を消した。

 は…全っ然みえねぇ…!

 と身体が硬直している間に、隣にいたはずのアルドルが吹っ飛ばされて、代わりに先生が立っていた。それを視界の端っこで捉えた時には、先生は身体を回転させて回し蹴りをオレに放ってきた。

 間一髪警杖で蹴りを受け止めたが、あまりに強烈な攻撃に後ろへ吹き飛ばされる。なんとかオレもアルドルも無様に床に転げずに、体勢は維持できている。

 だけど…だけど、こりゃ思った以上にヤバい。そこらへんの奴には負けることはないってタカをくくってた自分が恥ずかしくなる。これがフェニックス団員の実力か…。


 リゼ先生は戦闘スタイルは短警杖、模造銃、模造刀、体術を組み合わせ猛攻を仕掛けてくる。


 短警杖は大体50cmくらいで、相手の攻撃を受け止めたり、いなす目的で使われることが多いためメイン武器としては機能しない。というのが教えられたセオリーだった。というか先生がそう教えてたよね?

 それなのに模造刀との二刀流みたいな感じで、猛攻を繰り出してくる。回避、回避しきれない攻撃は警杖で受ける、がそれでも間に合わずに攻撃を食らってしまう。異常な手数の多さだが、その分一発の威力は致命傷になるほどではない。

 速ぇ…が、なんとか身体は攻撃を察知してくれる。一応ダメージは最小限に留められてる感じだな。

 でも数発食らっていればダメージも蓄積していく。


 距離をとれば模造銃で攻撃してくるし、休む暇がない。


 アルドルも軌道や地形を意識し、相手の動きを計算しているが、リゼ先生のそれはなんというか別次元だ。

 言ってみればこちらが1ターン行動を取るのに対して、3ターン行動されているような感覚だ。

 一番意味が分からないのは、普通は直線攻撃のはずの銃弾が、まるでオレ達を追尾してくる様に動いていることだ。その回避行動で大きな隙が生まれてしまう。たぶんオレ達の意識がついていかなくてそう見えているんだろうが、それが分かってても対処できないのがつらすぎる。



 なんとか攻撃をかいくぐりつつ、アルドルと接近。非常に短い時間で作戦をたてた。

 そんなに上等な作戦など思いつくはずもなく。アルドルはタフネスを活かして壁役になり、オレが攻撃をするというものだ。


 早速オレ達に迫る先生の攻撃を一手に受けるアルドル。

 わかったことは距離を取らない方がまだマシだということ。そして携帯している武器をいくつか削げば、勝機は見えるかも?とりあえずそんな直感で、アルドルへ打ち込まれる寸前の短警杖を弾きとばす。ガギッ!という音がして宙にクルクルと警杖が舞う。


「武器を手離しちゃうなんて、先生もまだまだですねぇ!」


 オレはなるべく不敵な笑みを浮かべて煽ると、先生は素早く後ろに飛び退くと同時にオレ目掛け銃撃を放つ動作をする。しかしアルドルはすかさず先生へ詰め寄り警杖を振り下ろし、攻撃を阻止。先生はアルドルの攻撃を避けつつ、模造刀をしまい、徒手空拳の構えをとる。そして素早くアルドルの懐に入り込むと右顎を殴る。

 アルドルはなんとか倒れまいと踏ん張るが、その努力も虚しく仰向けに倒れ込んでしまった。


 マジかよ。

 しかしまだ特別授業は終わらない。オレは単独で先生と戦わなければ…。

 さっき軽く煽ったせいか先生がオレを見る目は恐ろしい程冷たかった。


 __________________


 リゼは幼少期より武器の扱いや体術等を父親から叩き込まれていた。アカデミー時代は、そんな厳しい環境で育ってきた彼女に戦闘で敵うものなどいなかった。“美しい怪物”などと不本意な異名もつけられたが、そんなことはどうでもいいと、彼女の関心は強さを追い求めることだけ。

 今期のアカデミー生の教官を務める話が降りかかったのが不満だった理由は、退屈だと思ったからだ。外の世界を見て更なる強さを磨けると思っていたのに、何故またアカデミーに籠るようなことをしなければならないのか。

 しかも問題児二人の担当を押し付けられ、その二人に手を焼く日々。もはや普通の指導で意味がないのなら、手荒な方法を取るしかない、問題児といえまだ若い二人を制圧することなどワケもない。

 そう考えていたリゼだが、その予想は大きく外れた。


 リゼは左手に短警杖で防御と攻撃、右手は刀を持ち短距離攻撃、銃は中距離攻撃という基本スタイル。と見せかけてトリッキーに武器を持ち替えながら、攻撃を織り重ねる。

 銃を撃ち、相手の回避方向へ先回りし警杖や刀で攻撃。また隙があれば体術攻撃を加える。場合によっては武器を手放すフェイント。 警杖や刀も投げつける事で、回避や防御行動などの選択肢を奪いつつヒットを狙う。


 まぁそこまで本気を出さなくても、レイとアルドルの二人同時に瞬殺は出来るとリゼは考えていた。

 実際にアカデミー時代も多対一の戦闘において、ダメージを食らわず制圧したこともある。

 リゼの素早い動きは、その小柄な体型も相まって姿をくらませやすいのだ。戦闘開始し、リゼの姿が確認出来ないまま地に伏すことになった者も数知れず。


 本来この特別授業の目的は、完膚無きまでに打ちのめすことで圧倒的な実力差を体に理解させることなのである。しかし二人は食らいついてきた。


 まずはアルドル。

 大きな体躯から放たれる攻撃はその一つ一つが強烈だ。攻撃の軌道も悪くない。そして何より並の人間であればダウンするはずの攻撃をものともしない耐久力だ。


 実はアルドルの入学時の模擬戦の様子を見ていたリゼ。その時のただ力任せの単調な攻撃でもって相手を制圧していた。

 また彼は怒りの権化のような、”信じられる者は自分だけ”とでも言うような雰囲気だったが…。今の彼は大分成長したものだとリゼは感心した。


 そしてレイ。

 この子の反応速度は異常だ。何者も追う事ができない自身の動きを完全に捉えている。また器用さもある。二人ともまだ警杖の使い方がワンパターンだが、レイに至っては自身の技能を吸収して戦闘開始時より格段に動きが向上している。

 何より戦闘中に軽口を叩いてくる、その余裕さ(ハッタリだろうが)、武器を弾かれたことに驚いた。


 おそらくアルドルの成長にはレイが関与しているのだろう。そう思うと先日の出来事に対する怒りも薄れてくる。


 面白くなってきた、とリゼの口角が少しだけつり上がる。退屈だと決めつけていた日常へ光が差し込んできたような感覚になった。


  アルドルはダウンし、残るレイに最大限の速さで逃げ場を失くすように銃弾を放つ。さらには刀と警杖を多方向から投擲した。

 雨のように逃げ場のない攻撃に一瞬怯むレイだが、逃げる方向線上の攻撃のみ弾き回避する。リゼはその逃げ先に先回りするように走る。途中でアルドルの長警杖を拾う。そしてなんとか攻撃の雨から帰還したレイの足元へなぎ払いを放つ。

 バランスを崩したレイ、リゼはその顎へ手加減した右フックをいれると、レイはそのままダウンしてしまうのだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。