15 シノビの里③
正直あの厄介なシノビが出て来なくて良かった…とシアナは安堵していた。
本拠地に乗り込むということはシノビ達との熾烈な戦闘は免れないからだ。 それに対応出来るのはリゼとレイ、ノラクトくらいだろう。私とエリは戦闘特化ではなく全体把握や指揮、サポートをする役回り。
だけど先のミサとの戦闘においては完全に役立たずだった。相手がその気なら瞬殺されていたに違いない。
その事実に身震いと悔しさで身体が震える。
不可解なことが連続して起こると、少し前に起きた異常は日常だったかのように錯覚する。
私は後悔した。それは里へ来たことについてではなく、他の皆より覚悟が足りていなかったことについて。一連の異常現象を起こしたであろう元凶を前に、身体は硬直してしまった。自身の周囲の空気がまるで固体のように感じる。何も出来ない無力感で思考が暗く落ちていく。
急に重力から解放されるように先程までの重苦しい空気が元に戻った。もうワケが分からない。
エリも頭を抱えて混乱している。
リゼとレイだけは冷静に少女の方を見据え、ノラクトは剣を握りしめ臨戦態勢をとっている。
「◼◼◼◼◼◼◼◼」
少女は何かを言うと、目の前からフッと消えた。
そして次の瞬間ノラクトがいた場所には少女がいて、ノラクトは後方へ吹き飛ばされていた。なんとか受け身をとったようで、大きなダメージではなさそうだが…。
少女はその場から動かない。その瞳には何も映っていないかのように空虚だ。
「みんな、攻撃するなよ。というか攻撃しようとするな。敵意を出さなければ問題なさそうだ。いまのところは。そんな感じのことをさっき言ってた。」
レイは皆を制止する。
「さっきの…って、あの子が何か言ってたのは分かるけど、レイにはあの言葉が分かるの?」
「なんとなくな。聞き取れないけど、不思議と意味ならわかる。」
少女は首だけグルリと回転させ、レイの方を向く。まばたきもせず見つめている。
「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼」
また少女が言葉なのかよく分からない音?を発する。
「あ、ごめん。やっぱり普通にみんな殺されそう。」
「はぁ!?ちょっとレイ君!意味わかんないって!!」
レイがあっさりし過ぎていて、エリのツッコミが入る。 状況は緊迫してるのに気が抜ける。
「シアナさん、エリちゃんにお願いがある。アイツと本気で戦うから集中したい。だから邪魔が入らないようにしてほしい。」
「エリちゃんて!レイ君って私のことナメてない!?」
「エリはちょっと黙っててね。…レイ、分かったわ。私達に任せて!」
さっきまで暗くドロドロしていた私の心にはいつの間にか光が差し込んできているように顔に温度が戻ってきたのを感じる。
レイ…不思議な子。会ってからまだ少しの時間なのに皆が彼に引き寄せられていく。
きっと…必ずレイなら…!
まだ状況が何も良くなったわけではないけれど、皆の目は朝日を迎えたように希望を取り戻していた。
「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼」
「知らないね。お前の相手はオレだ。それ以外はオレの仲間がなんとかする。小細工しねーでかかってこい。」
相変わらず意味が分からない音だが、レイは会話している。一体何の話なのだろう…?
そんな疑問もふと差し込まれた寒気によりかき消される。先程まで力なく倒れていたディアンが急に動き出していた。何か分からないが不気味な感覚に鳥肌が立つ。
でもここで怖気付いてるわけにはいかない。レイからの命令だ。私達でディアンを止める…!!




