14 シノビの里②
私とってはとうに愛着などは残ってないと思っていた。だが実際に里が焼き尽くされている光景を見た時は心が乱れ、呼吸が浅くなった。
そうか。何処かで父との思い出があるこの森や里が存在していることが、心の支えになっていたのだろう。
通常では有り得ない事象。
風もなく消火剤が撒かれたわけでもなく、故郷を焼く炎が消えた。
私は走り出し、皆もそれに続く。また炎が上がるかもしれない、全く先の読めない危険な状況に皆を巻き込んでしまった。
リゼは里が無事なのか確認したい焦り、皆を無責任に巻き込んだ後悔で下唇を噛む。
「ちょーっと!先生ストップ!!」
レイの声が不思議と落ち着きを取り戻させ、私の足が止まった。
「先生速すぎるから!みんなついてこれないって!今はぐれたらヤバいだろ?」
全くもってレイの言う通りだ。私は自分の不甲斐なさに頭を抱えた。
「すみません。取り乱してしまいました。だけどもう大丈夫。
まだここなら森林の入口までは近いから間に合うわ。レイと他の皆は引き返しなさい。ここからは私一人で行きます。」
あの時の父と同じ事を言ってしまった自分が少し可笑しくなった。皆の顔は強ばっている。ノラクトは何かを言いかけ口を閉じた。
「オレは方向音痴だし戻るの無理だから先生についてくよ。」
よくもまあそんな分かりやすい嘘を…。
ノラクトはふっと笑った。
「まぁそうだな!俺達みんな方向音痴だから戻り方がわからん。だから一緒に行こうぜ!それによ、仲間だろ?頼らなくても良いから信じろよ。」
「そうだよ!みんなで受けた任務なんだから!それに私はリゼのことを大事な友達だと思ってるよ。だから一人で行かせるなんて事は絶対にさせない!」
「まぁまぁ。エリ落ち着いて。でもリゼ、こういうことよ。リゼの過去に何があったかとかは聞かないわ。でもそんな寂しそうな目をした仲間を放っておけない。」
……俺の死は足枷ではない。糧にして生きろ……
だったっけ?父の最期の言葉を思い出し、今なんとなく理解できたような気がする。
「ありがとう。では皆、一緒に行きましょう。くれぐれも道中気をつけてください。」
私は父がしてきたように”仲間”を信用する。
だけど歩む道や辿り着く先にある光はきっと違うのだろう。
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それから里に向かう道中でシノビと出くわすことはなかった。先程まで火の手があがっていたのだからそれ自体は不思議だと感じなかったが、漠然と不気味な予感だけが残っていた。
里に到着し、そこに広がる光景には目を疑った。
家屋、屋敷などは残っている。しかし人の気配が全くない。また先程まで炎が上がっていたとは思えない程に里はキレイなままであった。周りの森だけが燃えていた…?
皆も混乱した表情を浮かべている。
普段は周りの木々が里に入る日差しを防いでいるのだが、今は遮るものはなく里は明るい。その明るさと対照的な人気のない静けさが不気味すぎて鳥肌が立つ。
とりあえず警戒しながら誰かいないか建物内を調査する。
どこももぬけの殻だった。
一通り調査が終了し、里の中央にある開けた場所へ移動する。
そこには待ち伏せしていたかのようにディアンと少女が立っていた。
「まさかオレ達が来るのをずっと待ってたのか?ずいぶんと凝った演出だな。」
レイは煽り、反応を探っているが無反応。
「ディアン…!お前…。」
ノラクトは言葉に詰まっている。
無理もない。感情の整理がつかないのだろう。怒りとも悲しみとも言えない表情を浮かべている。
そして周囲を取り巻く空気に異変が生じる。
目に映る景色は変わらないのだが、壁一枚隔てて見ているような…。
空気が生物のように鼓動しているように脈動を感じる。
なんだ…これは…?
その異質な感覚は少女を中心として発せられている。
人形のような生気のない目をした少女がこちらを向くのと同時に、ディアンは糸が切れたように倒れる。
私達は察した。これまでの異常をもたらしているのはこの少女なのだと。そして無意識に選択肢から外していた追加任務の条件を思い出す。
少女の奪還。ただし、”生死は問わない”。




