12 追加任務
いってぇ…身体が動かねー…。
少し意識が戻ってきた。頭には柔らかい感触がある。そして少しずつはっきりする。
これ、膝枕だ!リゼ先生の膝枕だ!イエーイ!ノラクト君みてるー!?
とか煽ろうと思ったが、ここは先生の太ももをもう少し堪能しとくか…。
寝てるフリを続けたが、何故かバレて頭に手刀を落とされる。
「ごフッ!ちょ…リゼ先生…なんでぇ?」
オレの目覚めでさぞ和やかな雰囲気になってることだろうと、身体は動かないので視線だけで皆の様子を伺った。
みんなすごく暗い。特にノラクトの落ち込みようが尋常じゃない。
そんなに膝枕が羨ましかったのか…?
今度オレから頼んでみるから元気だせよ!なんて冗談を言える空気じゃない。
「何かあったんですか?」
すると僅かに眉を寄せ、気まずそうに先生が口を開いた。
「端的に言えば、任務は失敗です。」
「…は?」
どういう事だ?というかミサはどうなったんだ?まさかオレが逃がしたせいで…?
あの妖しく笑う目が脳裏を横切り、まだ痛む体を無理やり起こす。
そうだ、オレは毒で身体が動かなくなって…。胸がざわざわした。
「レイ、貴方の成果は大きい。敵幹部を退けたのだから。だが今回の件は根本からして失敗が約束されていました…。」
先生は告げる。どうやったのかはハッキリ覚えてないが、ミサの撃退には成功したようだ。その点では安心した。
ノラクトが重い口を開いた。その拳は震えていた。
「俺だ…。リゼの指示通りに動いていれば…。アイツを信用していた俺がバカだった…っ。でもよぉ…!!」
なるほどな。その感じと、今この場にいない奴がいる時点で大体は分かった。
「んで、結局どうなったんだ?」
「軍の方と護衛対象の男性は無事よ。眠らされただけ。でもあの女の子の行方が分からないの。」
シアナが口を開いた。そして沈黙と重い空気が流れる。というかここはどこだ?見慣れない部屋には高そうな壺とか装飾品が置いてある。
「ここは中央政府の施設です。ここ待機室にて事の顛末を報告するまで休憩しているところよ。」
リゼ先生が説明してくれた直後、政府の役人っぽい人がドアをノックして入ってきた。比較的若い中肉中背の男だ。如何にもお堅い人って感じだな。
そいつは部屋に入ってくるなり、オレ達に深くお辞儀した。そして機械のように淡々と話す。
「この度の任務はご苦労様でした。疲労も十分に癒えない状況で申し訳ないのですが、任務の追加をご依頼させていただいても宜しいでしょうか?」
「奴らを追うんだよな?やる!!やらせて下さい!!」
ノラクトは身を乗り出し、被せ気味で答える。
えぇ…オレ疲れてるんだけど…。あ、でもオレはそこまで参加するって聞いてないし…。もう帰れるのかな?
なんて甘い考えが通るわけがなかった。
「ちょっとノラクト!レイ君のことも考えて!」
とエリは言うが、ちょっと待て。あのさぁ。オレ学生ってこと忘れてない?なんで当然のように参加する頭でいるのかな?
結果的に言うと追加任務は受けることになった。 オレももちろん(強制)参加です。
「これは大きなヤマ場になるわ。これで得られる経験値はきっと計り知れない。何よりシノビ達との戦闘にはレイの力が必要です。」
などとリゼちゃんが言い切っちゃったので、もう何も言えなかった。まぁ先生は絶対後で叱られるんだろうな。でもオレまで怒られることはないですよね?それだけが怖い。
追加任務の内容は”少女の奪還”である。
おそらくディアンは本拠地に向かっている、もしくは既に戻っているだろうとのこと。本拠地とは、アナトレー区にあるシノビ達の隠れ里。場所はリゼ先生が知っているらしい。
ミサとの戦いでその身のこなしが先生のそれと似ていたため、なんとなく気付いていたから驚きはしない。
オレはどうやってミサを撃退したのか。その疑問に答えるように骨の軋むような痛みが走った。
とりあえず目的地まで身体を休めよう。休息の為の体勢をとると、痛みと意識は遠のいていった。




