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灰色と虹  作者: あやね
第一章 赤い鳥の目覚め

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10/18

10 ムーンシード

 さっさと任務を終えて帰るはずだった。

 しかし急襲は失敗に終わる。

 何故?どうしてアレを防げるのかしら?


 この得体のしれない子がいる限り任務遂行は難しいわね…。

 まずはこの子を第一に排除しなければ。


 ミサは標的をレイに絞る。

 他の団員はすぐに殺せる。すぐ背後にいるのに気付けないのが良い証拠だ。

 だが今は殺さない。隠れみのとして利用価値がある。


 “月”はシノビ達で構成された暗躍機関。

 シノビは幼い頃から技術を磨き、様々な術を体得する。

 存在自体を薄くし隠れる術、魅了術、暗器や毒の扱いなど…

 これらの技術は暗殺術と呼ばれる。

 “月”はただの殺戮集団ではない。警護団と同じく任務を受け遂行する機関。

 今回の依頼先は中央政府。

 警護団も中央からの依頼なのだろうが…。つまり政府も一枚岩ではないということだ。


 ゆっくりとレイを観察し、襲撃のタイミングを伺う。

 私を感知できていないようだ。

 仕掛けるか?いや、先程みたいに防がれる可能性もある。

 しかし急に雰囲気が変わったような気がした瞬間、正確にこちらへ攻撃をしかけてきた。

 本当に面白い。

 そしてそこに現れた女性…先生と呼ばれている女の横顔がチラリと見えた。その瞬間に悟った。


「なるほどぉ。そういうことね。」


 面白い。最高にゾクゾクしてきたわ。

 久しぶりに本気で戦ってみようかしら。


 今回の任務遂行において、レイとリゼが大きな障壁になる。

 特にレイという少年の底知れないポテンシャルを加味すれば、分断が任務遂行の成功率を上げるカギになる。

 そして何よりこのレイという少年にとても興味が湧いていた。


 分断されても動揺することなく、こちらを見据える目はとても魅力的だ。

 そして始まった息つく間のない激しい攻防も素晴らしい。

 しかし勝利は確定している。

 戦闘では事前準備を怠った者は敗北する。

 揮発性のある神経毒。

 いくら鼻と口を塞いでるとはいえ、使用者も多少はそれを吸うことになる。

 一応毒耐性はあるので自滅することはないが、リスク回避のため相手の体の自由を奪うことは出来る程度の毒性。


 レイも耐性があるのか、なかなか効いてくる様子がなく戦い続けている。

 本当に凄い。

 だがその時はきた。

 あぁ、この屈服させる瞬間が一番ゾクゾクする。

 レイの目にはまだ闘志の光が宿っている。

 なんて魅力的な子なの…。

 殺してしまうのが惜しいわね。

 でもだけど、この目の光を奪うのも最高に魅力的なのよねぇ。


 ミサは勝利が確定したと思い、余裕の笑みを浮かべレイを見下ろしていた。

 だが急にゾクッと寒気を感じ、身体が一瞬震える。

 レイの身体から火花のようなものが発せられている。

 そしてスクッと立ち上がる。


 有り得ない…。

 なんだ?さっきと雰囲気が違う。


 ミサはレイに斬りかかる。

 が、すり抜けるように攻撃が避けられる。

 連撃を放つもそのどれもがすり抜けているように、ただ空を切る音だけが響く。

 まるで予知されているように全てが読まれている感覚。

 そうして決して当たることのない攻撃を繰り返すが、腹部に強烈な衝撃が走り攻撃の手が止む。

 すぐに後ろへ跳躍し距離をとるが、レイもその行動が分かっているかのようにピッタリついてきて警杖を叩き込む。

 防御するために刀を構えたが無惨に砕けた。

 先程とは比較にならない程のパワー。

 ミサはそのまま地面に叩きつけられる。

 その衝撃に視界は揺らいだ。

 ベギッ!!という脛骨を折られる音と感覚がし、足に力が入らず回避が不可能となった。

 一連の激しい蹂躙に声も出ない。

 先程とは形勢逆転し、レイに見下ろされる。

 その目は先程とは違い機械的な冷たさがある。

 ミサは初めて恐怖を感じ息が詰まった。

 殺される…と思ったが、レイは力尽きたのか倒れ込んでしまった。



 これは…チャンスだ。

 この危険人物はここで殺さなくては…。

 霞む視界と意識の中で懐に忍ばせていた短刀をとる。

 思うように力が入らない。

 這うようにレイへ近づくと、そこには一人の女が立っていた。

 コイツはさっきの…リゼといったか。

 女は冷たい目で私を見下ろし言い放った。


「同郷のよしみだ。殺さずにおいてやる。」


 そしてリゼはレイを担いで去っていった。










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