612/615
葵の体温
シャッターの音が落ちる。
「確認しようか」
並んで画面を覗き込むと、
虹は綺麗に入っているのに、
二人の距離だけが妙に遠い。
「もう一枚、ちゃんと撮ろうか。構図、考えて」
葵が「はい」と答える声が、
どこか弾んで聞こえる。
もう一度並ぶ。
けれど、どうしても距離がある。
「まだ遠いな…はみ出ちゃうよ」
そう言うと、
葵が自然に寄ってきた。
自分も静かに近づく。
肩が触れるくらいの距離。
でも、その近さが、葵の体温が、
驚くほど心地よかった。
(……やっぱり、隣にいてほしいのは及川さんだな)
そう思った瞬間、
確かにトクンと胸が高鳴った。




