同じ場所で重なる視線
展望台の入口の横で、
葵は白い息をふっと吐きながら立っていた。
約束の時間にはまだ早い。
それでも、じっとしていられなかった。
足音が近づく気配がして、
観光客だろうと思って何気なくそちらを向いた瞬間、
胸が一瞬で熱くなる。
(……店長)
少し驚いたように目を見開いて、
でもすぐに柔らかく笑う。
その表情を見た瞬間、
胸の奥で何かが静かに弾けた。
(……早いの、私だけじゃなかったんだ)
冷えていた指先が、
ふっと温かくなる。
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大和は、展望台へ向かう坂道を歩きながら
何度も時計を見ていた。
まだ早い。
分かっているのに、足が止まらなかった。
入口が見えてきたとき、
ふと人影が目に入る。
白い息を吐きながら、
入口の横で立っている女性。
上着の襟をそっと押さえて、
寒さに肩をすくめている。
(……及川さん)
足が止まる。
驚きと嬉しさが同時に胸に広がる。
その瞬間、葵が顔を上げた。
視線が重なる。
ほんの数秒なのに、
その間に伝わるものが多すぎて、
胸が静かに震えた。
葵は、
(……店長)
と胸の奥で呟き、
大和は、
(……早いの、俺だけじゃなかったんだな)
と口元を緩める。
風が少し強く吹いて、
木々が揺れる音だけが響く。
言葉より先に、
気持ちがそっと触れ合った。
約束よりずっと早い時間。
でも二人は、
同じ時間に、
同じ気持ちでそこにいた。




