見せたい景色
思っていたより早く目が覚めた。
静かな部屋の中で、
胸の奥だけがそっと弾んでいる。
(……今日、会うんだ)
その一言が、
眠気より先に意識をはっきりさせた。
身支度をしながら、
気づけばいつもより丁寧に手が動いていた。
メイクも、ほんの少しだけ時間をかけてしまう。
クローゼットを開けて、
上着を手に取ったところでふと昨夜のメッセージを思い出す。
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11時に、展望台の入口でどうかな。
見せたい景色があるんだ。
俺も気に入ってる場所で。
高台だから、少し寒いかもしれない。
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(……寒いかも、か)
その一言が、
胸の奥をふわっと温かくした。
自分のことを気遣ってくれたのが嬉しくて、
上着をもう一枚手に取って鏡の前に立つ。
お気に入りのコロンを軽くつけて、
前髪を整えて、
「変じゃないかな」と小さく息をつく。
バッグにスマホを入れながら、
もう一度メッセージを読み返す。
(……展望台)
店長が“見せたい”と言ってくれた景色。
その場所に自分が行くんだと思うと、
自然と足取りが軽くなる。
時計を見ると、まだ早い。
でも、部屋にじっとしていられなかった。
(……行こう)
小さく息を吸って、
ホテルのドアをそっと閉めた。




