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急に我に返る
ホテルの部屋に戻り、
ドアを閉めた瞬間、
静けさが一気に押し寄せてきた。
胸の奥に残っている温度は、
星空でも、夜風でもなく──
店長の声の余韻だった。
バッグを置き、
コートを脱ぎながら、
ふと現実的なことが頭をよぎる。
(……明日、どこに行けばいいんだろう)
誘われた瞬間は、
ただ嬉しくて、
胸がいっぱいで、
場所も時間も聞く余裕なんてなかった。
ひとりになって落ち着いた今、
ようやくそのことに気づく。
変に期待してると思われたくない。
でも、ちゃんとしたい。
迷惑はかけたくない。
スマホを手に取って、
DMの画面を開く。
打っては消して、
また打っては消して。
慎重になりすぎて、
でも聞かないわけにもいかなくて。
何度目かの入力で、
ようやく指が止まった。
「明日、何時にどちらへ伺えばいいですか?」
送信ボタンに触れる直前、
胸が小さく跳ねる。
(……どうしよう……緊張してきた)
深呼吸をひとつして、
そっと送信した。
画面に表示された「送信済み」の文字が、
静かな部屋の中でやけに大きく見えた。




