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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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感極まる葵

葵はそっとグラスに触れた。

店長の指が触れていた場所が、まだ温かい。


(……“待ち焦がれた再会”)


意味を知っている。

あの夜、店長が灯-tokyo-で最初に出してくれた一杯。

言葉にはしなかったけれど、

あれは確かに“店長の気持ち”だった。


そして今日、

自分はその意味を胸にしまって、

「覚えてますか」とだけ言った。


言葉にしない返事。

でも、確かにそこにある思い。


胸がふっと熱くなる。


(店長が作った店で……

店長が誘ってくれて……

店長が、私のために作ってくれて……

その意味も私は知っていて……

その店長が、目の前にいる)


それだけで、

息が少し震えそうになる。


葵は静かにグラスを傾けた。


最初の香りがふわりと広がる。

舌に触れた瞬間、

あの夜の空気がよみがえる。


「……っ」


声にならない小さな息が漏れた。

頬が自然にゆるんで、

目元がほんの少しだけ潤む。


照明がその涙の気配を拾って、

きらりと光った。


泣いているわけじゃない。

ただ、幸せが溢れてしまっただけ。


抑えられなかった。

その一瞬の表情が、

灯-OTARU-の柔らかい光に照らされて、

驚くほど綺麗に見えた。

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