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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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再会の一杯に惑わされて

及川さんの指先が触れた“オリンピック”の文字を見た瞬間、

胸の奥が、思っていた以上に強く揺れた。


「……これ、覚えてますか」


その言い方が、ずるい。

懐かしさだけなのか、意味を知っているのか、

どちらにも取れる絶妙な距離感。


(なんで……これなんだ)


灯-tokyo-で、

自分が“再会”の意味を込めて差し出した一杯。

言葉にできなかった気持ちを、

カクテルに託した夜。


及川さんはあの時、

ただ静かに笑って飲んでくれた。

意味を知っていたのかどうか、

確かめる勇気なんてなかった。


(懐かしいだけ……?

いや、でも……)


昼の再会が胸に残っている。

及川さんの照れた声も、

メニューを閉じる指先の震えも。


全部が“大和の期待”を刺激してくる。


(……これ、ダメだろ。

こんなの、期待するなってほうが無理だ)


気持ちを抑えようとしても、

胸の奥が勝手に熱くなる。


「……覚えてるよ」


声が柔らかくなったのが自分でも分かった。

隠すつもりだったのに、

隠しきれない。


及川さんが少しだけ安心したように笑う。

その表情が、また胸に刺さる。


(意味を知って頼んだのか……

それとも、ただの偶然か……

どっちなんだよ)


考えれば考えるほど、

答えは遠ざかる。


大和は一度だけ深く息を吸って、

カウンターへ戻った。


手元を整えようとしても、

指先がわずかに熱い。


(……翻弄されてるな、完全に)


そう思いながら、

大和は“再会”の一杯を作り始めた。

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