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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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待ち焦がれた再会

葵が席に腰を下ろすと、

夜の灯-OTARU-の静かな空気がふわりと身体を包んだ。

昼とは違う落ち着いた照明。

他の客の声は遠く、

ページをめくる音さえやさしく響く。


(……来てよかった)


胸の奥が、じんわりと温かくなる。


少しして、

大和がカウンターからゆっくりと歩いてきた。


「お待たせしました。

最初の一杯、どうしますか」


昼より少しだけ柔らかい声。

その温度に、葵の指先がわずかに震える。


メニューを閉じて、

そっと視線を上げる。


「……これ、覚えてますか」


指先が触れたのは

“オリンピック”の文字。


言った瞬間、

胸がふっと熱くなる。

少しだけ照れくさい。

でも、どうしても伝えたかった。


大和は一瞬だけ目を瞬かせて、

すぐに柔らかく笑った。


「……覚えてるよ」


声は静かで、

でもどこか懐かしさを含んでいた。


その一言が、

葵の胸の奥に静かに落ちていく。


「じゃあ、同じものを。

今日の“最初の一杯”に」


大和は軽くうなずき、

カウンターへ戻っていく。

その背中を見送りながら、

葵はそっと息を吐いた。


(また……再会、なんだ)


夜の灯の空気が、

昼の余韻と重なっていく。

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