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待ち焦がれた再会
葵が席に腰を下ろすと、
夜の灯-OTARU-の静かな空気がふわりと身体を包んだ。
昼とは違う落ち着いた照明。
他の客の声は遠く、
ページをめくる音さえやさしく響く。
(……来てよかった)
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
少しして、
大和がカウンターからゆっくりと歩いてきた。
「お待たせしました。
最初の一杯、どうしますか」
昼より少しだけ柔らかい声。
その温度に、葵の指先がわずかに震える。
メニューを閉じて、
そっと視線を上げる。
「……これ、覚えてますか」
指先が触れたのは
“オリンピック”の文字。
言った瞬間、
胸がふっと熱くなる。
少しだけ照れくさい。
でも、どうしても伝えたかった。
大和は一瞬だけ目を瞬かせて、
すぐに柔らかく笑った。
「……覚えてるよ」
声は静かで、
でもどこか懐かしさを含んでいた。
その一言が、
葵の胸の奥に静かに落ちていく。
「じゃあ、同じものを。
今日の“最初の一杯”に」
大和は軽くうなずき、
カウンターへ戻っていく。
その背中を見送りながら、
葵はそっと息を吐いた。
(また……再会、なんだ)
夜の灯の空気が、
昼の余韻と重なっていく。




