愛おしさで溢れる午後
スイーツを運んだあと、
大和はカウンターに戻った。
仕事に集中しようとする。
注文票を確認して、
スタッフに指示を出して、
コーヒーを淹れて。
でも、
視線がどうしても勝手に動く。
(……楽しそうに食べてるな)
クリームソーダを見て小さく笑って、
プリンアラモードを嬉しそうに眺めて、
パンケーキを頬張って幸せそうにしている。
(……俺が考えたメニューを、あんな顔で)
試作を繰り返して、
何度も味を調整して、
盛り付けを整えて。
自分の“好き”を詰め込んだスイーツたち。
その前で、
葵があんなふうに笑っている。
胸の奥がじんわり温かくなる。
(……全部、愛おしいな)
気づけば、
また視線がそっちへ向かっていた。
葵は気づかない。
写真を撮ったり、
スプーンを口に運んだり、
メニューを眺めたりしている。
その姿が、
どうしようもなく愛おしい。
さっき、
目が合ったとき胸が跳ねた。
あれ以上は無理だ。
会話を続けたら、
仕事に戻れなくなる。
だから、
葵がこちらを見ないタイミングだけ、
そっと目で追う。
ワンピースの淡い色が、
昼の光にふわっと馴染んでいた。
(来てくれて……よかった)
“嬉しいです”
と笑ってくれた笑顔が、
かつての及川さんとふっと重なって、
胸の奥に静かに溶け込んでいった。




