目が合ったとき
昼の灯-OTARU-は観光客で賑わっていた。
注文票を確認しながら、
(そろそろ来る頃か)
と胸の奥が静かにざわつく。
入口のベルが鳴いた瞬間、
顔を上げる。
(……来た)
及川さんが立っていた。
ワンピースの裾が柔らかく揺れている。
その姿を見た瞬間、胸の奥がふっと熱くなった。
(似合ってるな)
言葉にはしない。
ただ、目が一瞬だけ止まった。
自分でも気づくほどに。
“本当に来てくれた”
その実感が、静かに胸に落ちていく。
注文票を見ると、
クリームソーダ、プリンアラモード、二色のパンケーキ。
昼の人気メニューが3つも並んでいた。
(……こういう頼み方、及川さんらしいな)
思わず小さく笑ってしまう。
トレイを持ち上げる手が、
ほんの少しだけ緊張しているのがわかる。
席に近づくと、
及川さんがスイーツの写真を撮っていた。
その横顔が、前より少し大人っぽく見えた。
でも、笑ったときの目元は昔のまま。
トレイを置くと、葵が顔を上げた。
目が合う。
その一瞬で、胸の奥がふっとほどける。
「……来てくれたんだ」
予定していた言葉じゃない。
でも、それ以外が出てこなかった。
及川さんが少し驚いたように笑う。
その笑顔に、胸がまた揺れる。
「お待たせ。
夜の予約、入れてあるよ。
21時から23時まで。
22時から……プラネタリウムになるよ」
言いながら、
声が少しだけゆっくりになる。
ひとつひとつ、確かめるみたいに。
及川さんが
「嬉しいです」
と素直に言った瞬間、
胸の奥がじんわり熱くなる。
(……そんな顔、するんだ)
気づかれないように、
ほんの少しだけ目を細めて笑った。
「よかった」
その一言に、
全部が詰まっていた。




