自分のための時間
灯-OTARU-のテーブルに並んだスイーツを見て、
葵は思わず息をのんだ。
クリームソーダの淡い色が光に透けて、
プリンアラモードのフルーツが鮮やかで、
二色のパンケーキはフォークを入れるたびにふわっと香る。
(……かわいい)
スマホを取り出して、
ひとつひとつ写真におさめる。
角度を変えて、光を拾って、
まるで宝物みたいに。
ひと口食べるたびに、
胸の奥がじんわり温かくなる。
(前回はコーヒーだけだったのに……
今日は全部、ちゃんと味わえる)
甘さに浸りながら、
ふと視線の先に大和が見えた。
カウンターの奥で、
注文を確認して、
スタッフに短く声をかけて、
また次の作業に移る。
無駄のない動きで、
でもどこか柔らかい空気をまとっていて、
忙しいはずなのに、
一つひとつを丁寧にこなしていた。
(……なんか、かっこよかったな)
働いている姿がまっすぐで、
自然と目が追ってしまう感じ。
胸の奥が、
スイーツの甘さとは違う温度でじんわり広がった。
食べ終えて店を出ると、
昼の光がふわっと頬に触れた。
(夜まで、どうしようかな)
21時の予約までは、まだ時間がある。
でも、落ち着かないほど楽しみで、
どこかそわそわしてしまう。
(運河の方、行ってみよう)
前から気になっていた
オルゴールのお店。
ガラス細工のお店。
観光地らしい賑わいと、
小樽らしい静けさが混ざる場所。
ワンピースの裾を揺らしながら、
葵は運河へ向かって歩き出した。
胸の奥には、
スイーツの甘さと、
働く大和の横顔の余韻と、
夜への期待が静かに重なっていた。




