581/615
近づく気配が愛おしい
胸ポケットのスマホが、
いつもより少しだけ重く感じる。
(……もう札幌は過ぎた頃か)
新千歳から小樽までは、
思っているよりずっと近い。
葵が「着きました」とDMを送ってから、
まだ一時間も経っていない。
コーヒーを淹れながら、
ふと視線が入口のほうへ向いてしまう。
(いや、まだだろ。
でも……もしかしたら)
自分で自分にツッコミを入れながら、
手元の動きだけはいつも通り。
スタッフが声をかける。
「店長、次カフェオレお願いします」
「あ、はい」
返事は落ち着いている。
でも胸の奥は落ち着かない。
(……近づいてきてるんだよな)
その事実だけで、
心がふっと温かくなる。




