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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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胸の鳴る音

到着ロビーへ向かう通路は、

朝の光が差し込んで少し眩しい。


手荷物受け取りのターンテーブル前に着くと、

まだ荷物は流れてきていない。

周りの人たちがスマホを見始めるのにつられて、

葵もバッグからスマホを取り出した。


通知のところに、

“大和”の名前がある。


(……来てる)


胸がきゅっとなる。

深呼吸してから、そっと開いた。


---

おはよう。

こっちは晴れてて、いつもよりは暖かい気がするよ。

とはいっても、まだコートはいるけどね。


今日、店があるから迎えには行けないんだけど、

無事に着いたら一言くれたら安心する。


じゃあ、またあとで。

---


読み終えた瞬間、

葵は思わず小さく笑ってしまった。


(……暖かい? 嘘でしょ。寒いよ……)


北海道の空気は、

ターミナルの中にいてもわかるくらいひんやりしている。


でも、

“いつもより暖かい気がする”という言葉が、

なんだか店長らしくて、

胸の奥がじんわりと温かくなる。


(優しいな……)


ターンテーブルが動き出し、

荷物が流れてくる音が響く。


葵はスマホを持ったまま、

そっと返信を打った。


---

おはようございます。

先ほど新千歳に着きました。

DM、ありがとうございます。

こっちは思っていたより寒いです……!

無事に着いたので安心してください。

これから小樽に向かいますね。

---


送信ボタンを押したあと、

葵は小さく息を吐いた。


(……寒いけど、なんかあったかいな)


空港のざわめきが

トクンと鳴る胸の音をうまく掻き消してくれていた。

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