胸の鳴る音
到着ロビーへ向かう通路は、
朝の光が差し込んで少し眩しい。
手荷物受け取りのターンテーブル前に着くと、
まだ荷物は流れてきていない。
周りの人たちがスマホを見始めるのにつられて、
葵もバッグからスマホを取り出した。
通知のところに、
“大和”の名前がある。
(……来てる)
胸がきゅっとなる。
深呼吸してから、そっと開いた。
---
おはよう。
こっちは晴れてて、いつもよりは暖かい気がするよ。
とはいっても、まだコートはいるけどね。
今日、店があるから迎えには行けないんだけど、
無事に着いたら一言くれたら安心する。
じゃあ、またあとで。
---
読み終えた瞬間、
葵は思わず小さく笑ってしまった。
(……暖かい? 嘘でしょ。寒いよ……)
北海道の空気は、
ターミナルの中にいてもわかるくらいひんやりしている。
でも、
“いつもより暖かい気がする”という言葉が、
なんだか店長らしくて、
胸の奥がじんわりと温かくなる。
(優しいな……)
ターンテーブルが動き出し、
荷物が流れてくる音が響く。
葵はスマホを持ったまま、
そっと返信を打った。
---
おはようございます。
先ほど新千歳に着きました。
DM、ありがとうございます。
こっちは思っていたより寒いです……!
無事に着いたので安心してください。
これから小樽に向かいますね。
---
送信ボタンを押したあと、
葵は小さく息を吐いた。
(……寒いけど、なんかあったかいな)
空港のざわめきが
トクンと鳴る胸の音をうまく掻き消してくれていた。




