会いに行くと決めた指先
仕事から帰って、バッグを置いたままスマホのカレンダーを開いた。
年度末の3月を見て、思わず眉が寄る。
(年度末は……ちょっとなぁ)
どの部署もバタつく時期だ。
自分が抜けるのは気が引けた。
4月に画面をスクロールする。
最初の週に目を止めて、また小さく息を吐く。
(新年度1週目も……さすがに無理だよね)
新しい体制が始まる週に休む勇気は、まだない。
でも、画面をさらに下へ送ると、
4月の2週目──8日、9日、10日、11日。
そのあたりだけ、ぽっかりと“余白”があるように見えた。
(でも……灯-OTARU-は期間限定なんだよね)
その言葉が胸の奥で静かに響いた。
行ける日を逃したら、もう二度と見られないかもしれない。
(このあたり……なのかな)
指先が自然に、4月11日のところで止まった。
胸の奥が、静かに、でも確かに鳴る。
(行きたい)
その気持ちを認めた瞬間、
勤怠アプリを開いていた。
「4月11日(水)〜12日(金)」にチェックを入れる。
申請ボタンの上で、指が一瞬だけ止まった。
(……押したら、本当に行くことになる)
でも、心は決まっていた。
そっと申請ボタンを押す。
画面が切り替わる音が、胸の奥に響く。
次に、航空券の予約サイト。
羽田→新千歳、4月11日の朝の便。
“購入”のボタンを押すと、
またひとつ、胸の奥が鳴った。
そうだ!ホテルも。
海が見える部屋に惹かれて、
少しだけ贅沢な部屋を選んだ。
(どうせなら……)
その選択が、
“会いに行く覚悟”を静かに強めていく。
準備が全部終わったあと、
深呼吸して大和とのDMを開いた。
指が震えるほどじゃない。
でも、胸の奥がじんわり熱い。
ゆっくり文字を打つ。
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4月11日(水)に行きます。
星空の予約、お願いしてもいいですか。
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送信ボタンを押した瞬間、
胸の奥の灯がふっと大きくなった気がした。
(……行くんだ)
その実感が、
静かに、確かに葵の中に落ちていった。




