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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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お気に入りの場所

夜の展望台。

小樽の街の灯りが、

海の向こうまで静かに広がっていた。


仕事帰りにふらっと寄っただけのはずなのに、

今日はなぜか帰りたくなかった。


(ここ、落ち着くんだよなぁ…)


ポケットの中でスマホが震え、

画面に浮かんだ名前を見た瞬間、

自分が打ったDMの内容を思い出して

胸の奥がわずかに跳ねる。


葵からだった。


--

水曜の星空、ずっと気になってました。

仕事の調整をしてみます。

行けそうな日が分かったら、また連絡してもいいですか?

---


街の灯りが滲んで見えた。


(……来てくれるんだ)


その言葉が、

喉の奥までせり上がってきた。


でも次の瞬間、

自分でその感情を押し戻す。


(いや……星空が気になってただけだろ)


(俺に会いに来るわけじゃない)


言い聞かせるように、

ゆっくり息を吐いた。


本当は、

誘って、それに応えてくれるのが

すごく嬉しい。


でも、その嬉しさを認めたら、

境界線を越えてしまう気がした。


(……期待するなよ、俺)


そう思うのに、

胸の奥の()

消えるどころか、

じんわりと広がっていく。


海から吹く風が、頬をかすめていく。


街の灯りが、

遠くで静かに瞬いていた。


スマホの画面に浮かぶ葵の文面を見つめていると、

その光がふっと自分の表情を照らした。


さっきまでより、

少しだけ柔らかい顔をしている気がした。


(来る気で……いるんだな)


その事実だけが、

静かに、確かに胸に落ちていった。

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