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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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覚悟

帰りの電車。

吊り広告の文字がぼやけるくらい、

頭の中は店長のDMでいっぱいだった。


---

水曜の完全予約制の星空、

一度見てほしいんだ。

来られる日が分かったら教えて。

こっちで予約入れておくよ。

---


(……星空を、見てほしい)


その一文だけで、

胸の奥がきゅっと熱くなる。


前に弾丸で行ったときは、

連絡なんてできなかった。


“行きたい”なんて言える立場じゃないと思っていたし、

期待していると思われるのが怖かった。


でも今回は──

店長が「来られる日が分かったら」と言ってくれた。


(……ちゃんと、連絡してから行きたい)


その気持ちが、

自分でも驚くほど自然に胸の中にあった。


水曜に行くなら、泊まりになる。

木曜も休みにして、金曜も有給を取れば、

仕事に迷惑はかからない。


(そこまでして……行く?)


問いかけた瞬間、

胸の奥が静かに答えた。


(行きたい)


スマホを握りしめたまま、

何度も文を打っては消す。


“行きたいです”と書きかけて、

慌てて消す。


“行けたら行きます”は、

なんだか嘘みたいで書けなかった。


深呼吸して、

ようやく指が止まった。


---

水曜の星空、ずっと気になってました。

仕事の調整をしてみます。

行けそうな日が分かったら、また連絡してもいいですか?

---


送信ボタンを押した瞬間、

胸の奥がきゅっと鳴った。


(……送っちゃった)


恥ずかしさと、

少しの怖さと、

それでも消えない“行きたい”が胸の中で混ざり合う。


前みたいに衝動だけで飛び出すんじゃない。

今回は──

ちゃんと連絡してから行く。


自分でも気づいてしまった。


(覚悟が……違うんだ)


電車の窓に映る自分の顔は、

さっきより少しだけ柔らかく見えた。


そのぬくもりが

なんだか心地よく思えてきた。

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