もう一度来てほしい
バックヤードの電気を落とそうとして、
ふと思い出す。
“気持ちを伝える背中を押す一杯”
俺が考えた言葉。
(……俺、こんなこと言ってたんだよな)
言葉が苦手で、
説明するのも得意じゃなくて、
だから“なにかで伝える”って形に逃げてきた。
でも、
及川さんのあの一文が胸に残ったまま離れない。
“教えてくれたら嬉しかったと思います”
(……伝えたら、嬉しいって思ってくれる人がいるんだよな)
その気づきが、
じわじわと胸の奥を押してくる。
なのに俺は、
自分の気持ちの核心だけは
ずっと言えないままにしてる。
(何怖がってんだよ、俺)
自分に言い訳してきた時間が
急に恥ずかしくなった。
(伝えたいことがあるなら……言わなきゃだろ)
スマホの画面に指を置いたまま、
何度も文を打っては消して、
深呼吸して、
ようやく送信ボタンを押した。
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水曜の完全予約制の星空、
一度見てほしいんだ。
来られる日が分かったら教えて。
こっちで予約入れておくよ。
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送信の表示が出た瞬間、
胸の奥がじわっと熱くなる。
(……勢いに任せすぎたか、俺は)
後悔じゃない。
安心でもない。
ただ、
長い間こういう感情とは無縁だった。
誰かに来てほしいとか、
自分のために予定を動かしてほしいとか、
そんなことを思う日がまた来るなんて
考えもしなかった。
(……自分のために、空気を動かしたいなんてな)
久しぶりに胸の奥に生まれた灯が
なんだか心地よく思えてきた。




