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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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もう一度来てほしい

バックヤードの電気を落とそうとして、

ふと思い出す。


“気持ちを伝える背中を押す一杯”

俺が考えた言葉。


(……俺、こんなこと言ってたんだよな)


言葉が苦手で、

説明するのも得意じゃなくて、

だから“なにかで伝える”って形に逃げてきた。


でも、

及川さんのあの一文が胸に残ったまま離れない。


“教えてくれたら嬉しかったと思います”


(……伝えたら、嬉しいって思ってくれる人がいるんだよな)


その気づきが、

じわじわと胸の奥を押してくる。


なのに俺は、

自分の気持ちの核心だけは

ずっと言えないままにしてる。


(何怖がってんだよ、俺)


自分に言い訳してきた時間が

急に恥ずかしくなった。


(伝えたいことがあるなら……言わなきゃだろ)


スマホの画面に指を置いたまま、

何度も文を打っては消して、

深呼吸して、

ようやく送信ボタンを押した。


---

水曜の完全予約制の星空、

一度見てほしいんだ。

来られる日が分かったら教えて。

こっちで予約入れておくよ。

---


送信の表示が出た瞬間、

胸の奥がじわっと熱くなる。


(……勢いに任せすぎたか、俺は)


後悔じゃない。

安心でもない。


ただ、

長い間こういう感情とは無縁だった。


誰かに来てほしいとか、

自分のために予定を動かしてほしいとか、

そんなことを思う日がまた来るなんて

考えもしなかった。


(……自分のために、空気を動かしたいなんてな)


久しぶりに胸の奥に生まれた()

なんだか心地よく思えてきた。

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