表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
567/615

姿は見えるのに、遠い

やっと店内に入れたものの、

言われていた通り、メニューはほとんど終わっていた。


「すみません……今日はもう、ほとんど出てしまっていて……」


スタッフの声が、申し訳なさそうに響く。


結局、

コーヒーだけを頼んで席に座った。


大和は厨房とカウンターを行き来していて、

忙しすぎてこちらを見る余裕もない。


(毎日こんなに忙しいんだ)

(お店も、告知も、取材も……全部やって)

(大変そうだな)


カップの縁に触れた指先が、

少しだけ震えた。


さっき、

行列の最後尾で声をかけてくれたのに。


いまは、

まるで別の世界にいるみたいに遠い。


---


整理券を受け取り、

夜の灯-OTARU-に入った瞬間、

昼とはまったく違う空気が流れていた。


ガラス越しの柔らかい光。

静かな音楽。

カウンターの奥で動く大和の影。


(……綺麗)


でも──

忙しそうで、

話しかけられる雰囲気じゃない。


注文を取りに来た一瞬だけ、

大和は微笑んで言った。


「ありがとうございます」


それだけだった。


(……挨拶もできなかった)


胸が少し痛む。

でも、不思議と後悔はなかった。


気づいてもらえた。

何も言わないで来たのに、

スマートに対応してもらえた。


悔しいけど、

やっぱり店長は大人だ。


そして何より──

店長が作った空間に、

自分が座っていられたこと。


ただそれだけで、

胸の奥がじんわりと温かくなった。


(……来てよかった)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ