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迷いより先に動いた足
小樽駅を出ると、
冷たい空気が頬に触れた。
東京とは違う、少し重たい冬の匂い。
運河へ向かう道は、
観光客の声と、雪を踏む音が混ざっている。
(……来ちゃった)
胸の奥で小さくつぶやく。
言わないで来たことが、
急に現実味を帯びてくる。
(迷惑だったかな)
でも、足を止めることはできなかった。
迷っている時間なんてない。
ここまで来てしまったのだから。
運河の方へ歩いていくと、
すぐに分かった。
昼営業中の灯-OTARU-の前に、
長い行列ができていた。
(……ここだ)
胸がぎゅっとなる。
店長が、
何ヶ月もかけて考えて、
悩んで、
こだわって、
作り上げた空間。
その入口が、
目の前にある。
(店長が……ここにいる)
息が少し震えた。
言わないで来ちゃった。
どうしよう。
でも──
(……並ぼう)
気づいたら列の最後尾に立っていた。
入れるかどうかも分からない。
大和に会えるかどうかも分からない。
でも、
それでもいいと思えた。
何より、
店長が作った空間に入れることが、
ただそれだけで、
胸が熱くなるほど嬉しかった。




