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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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北海道へ発つ葵

休憩室のテレビは、

特集が終わったあとも誰かがつけっぱなしにしたままだった。

葵は紙コップのコーヒーを両手で包みながら、

流れる画面をぼんやりと眺めながら、余韻に浸っていた。


「次の特集は、

 小樽で話題の“(あかり)-OTARU-”さんです」


その一言で、心臓が跳ねた。


映ったのは、見慣れた横顔。

忙しそうに動きながら、

でもどこか静かで、落ち着いた大和の姿。


記者の声が重なる。


「……忙しいのに、

 なんでこんなに綺麗なんですか」


大和は手を止めずに答えていた。


「綺麗に見えるのは……

 僕じゃなくて、

 この店とお客様が作る景色が良いんです。

 僕はただ、その中で動いているだけで」


その言葉が、胸の奥に落ちていく。

静かに、でも確かに。


葵は息をするのを忘れていた。


画面越しの星空。

画面越しの灯り。

画面越しの大和。


(……行きたい)


気づいたら、スマホで航空券を検索していた。

土日の便はほとんど埋まっている。

でも、ひとつだけ空席があった。


(行こう)


理由なんて、もう考えられなかった。

考えたら、きっと行けなくなる。


衝動でもいい。

間違っていてもいい。


ただ、店長に会いたかった。


予約ボタンを押した瞬間、

胸の奥が熱くなる。


(……店長)


名前を心の中で呼んだだけで、

涙がにじんだ。


冬の空気が冷たい週末。

いつものバッグを片手に

葵は羽田へ向かっていた。

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