夜の取材
夜の営業が始まると同時に、
店内は昼とは違う熱気に包まれた。
氷の音、
グラスの触れ合う音、
ノンアルの注文が一気に入る音。
「大和さん、星空の時間の準備お願いします!」
「大和さん、テラス席のライト少し暗めにしたいです!」
呼ばれるたびに、
大和は静かに走り続けた。
そんな中、
昼に来ていた取材班が再び店に入ってきた。
「大和さん、夜も撮影させてください。
星空の時間、ぜひ見たいので」
(……今か)
忙しさの波の中で、
大和は一瞬だけ深呼吸した。
「どうぞ。
夜の灯も、見ていってください」
カメラが回り始めても、
大和は止まらない。
氷を落とし、
グラスを磨き、
ノンアルを注ぎ、
メッセージカードを確認し、
星空投影の角度を微調整する。
「大和さん、次の予約のお客様来ました!」
「大和さん、星空の投影、あと30秒です!」
(……間に合う)
大和は迷いなく動いた。
照明を落とし、
スイッチを押す。
天井に、
壁に、
カウンターに、
星が一気に広がる。
カメラマンが息を呑んだ。
「……忙しいのに、
なんでこんなに綺麗なんですか」
大和は手を止めずに答えた。
「綺麗に見えるのは……
僕じゃなくて、この店とお客様が作る景色が良いんです。
僕はただ、その中で動いているだけで」
照明の落ちた店内で、
星空の光が大和の横顔をかすかに照らした。
記者はしばらく言葉を失っていた。




