変わった大和
仕事を終えて、
いつものようにスマホを開いた。
店長からDMが届いていた。
(……今日も、近況かな)
そう思って開いた瞬間、
指が止まった。
---
今日の夜、投稿するよ。
見てもらえたら嬉しい。
---
一瞬、意味が掴めなかった。
(……教えてくれた)
胸の奥が、
ふっと温かくなる。
灯 -tokyo- の延長営業のときも、
北海道に戻るときも、
店長は何も言わなかった。
言ってほしかった。
知りたかった。
「教えてくれたら嬉しかったと思います」
そう伝えたことがある。
その言葉を、
店長は覚えていないかもしれない。
でも──
今回は、教えてくれた。
それだけで、
胸の奥がじんわり熱くなる。
---
通知が来る前に、
自分からアプリを開いていた。
(……緊張してる? 私)
自分で自分に驚きながら、
タイムラインを更新する。
“灯-Hokkaido-”
その文字が目に入った瞬間、
息が止まった。
リールをタップする。
- 柔らかい光が落ちるカウンター
- テラスの手すりをかすめる風
- グラスの影
- まだ名前のないカクテルの揺れ
- 天井に一瞬だけ流れる星の光
場所は分からない。
でも、
“灯”の空気が確かにそこにあった。
(……店長だ)
言葉にしなくても分かる。
この光、この温度、この静けさ。
全部、店長の仕事の仕方だ。
胸の奥が、
きゅっとなる。
(教えてくれた……)
それが嬉しくて、
少しだけ苦しくて、
でもやっぱり嬉しい。
画面を閉じられないまま、
葵はしばらく、
光の揺れを見つめていた。




